婚約破棄された令嬢は王太子の懐刀になる

香月

文字の大きさ
8 / 8

【小話】 ナチルとヨゼフ

しおりを挟む
※途中で残酷な描写がでてきます。苦手な方は次のお話までお待ち下さい。
また、後半からナチルとヨゼフのキャラが崩れますので、こちらも気になる方は飛ばしてお読みください。







ジルウェルシアがマリーシアとテラスでランチを取っている頃。
ナチルは先ほど使えなかった玄関ポーチの状況を確認しに来ていた。

「ナチル様」

声を掛けてきたのは、「表」の護衛の一人で最近この屋敷に来たものだった。

「状況は?」

「はい。マラノイア子爵令嬢が馬車に乗った直後に3人。それに対応している間に更に2人の襲撃でした」

「被害は?」

「こちらにはありません」

「そうか。対象は・・・マラノイア子爵令嬢か」

「そのようですね。こちらを悪者にしたいのでしょう」

「我々に喧嘩を売ろうなど考えの甘い奴等だな」

ナチルは「表」の護衛と、ポーチに広がる血溜まりとその残骸を見ながら淡々と話す。


「ジルウェルシア様は今どちらに?」

「奥様とランチを取られている。片付ける時間はあまり残されてないぞ」

「いえ、それでしたらご心配いりません。皆掃除は慣れてますから」

「そうか」

話が一区切りついた時だった。ナチルはふと玄関前に植えられている木を見るなり懐からナイフを取り出し、ある一点に向かって投げつけた。するとどさりと木から何かが落ちてきた。

「もっと気配を察知するんだな」

「も、申し訳ありません」

「一人増えたな。報告はヨゼフでいいのか?」

「は、はい」

「悪いが掃除は任せる」

「かしこまりました」

ナチルはそのまま踵を返しテラスへ向かう。すれ違い様に5人ほどの侍女が掃除道具を持って玄関ポーチへと向かっていった。

テラスへ着くと、ジルウェルシアとマリーシアが楽しそうに食事をしていた。しかしよく見るとジルウェルシアの表情はやや硬い。

「ナチル」

「ヨゼフか」

聞こえるか聞こえないかくらいの小声で名前を呼ばれ、振り向かずに答える。

「掃除は終わっていたか?」

「いや、一人増えたのとさっき侍女が向かっていったからまだかかるな」

「少し時間稼ぎが必要そうだな」

「いや、平気そうだ。それよりもお嬢様だな」

「あぁ。お優しい方だから気付いてはいるが言わないでくれているんだろう。お前もっと上手くやれよ」

「俺のせいか?」

「お嬢様付きになった途端、別人になりやがって」

「当たり前だ「表」なんだから。そう言うお前こそ変わりすぎだろ」

「ナチルほど酷くはないな。なんだその腑抜けた顔は。旦那様に切られるぞ」

「俺はまだ死にたくない」


ジルウェルシアとマリーシアのランチの横でナチルとヨゼフの静かな舌戦は暫く続いた。
しおりを挟む
感想 4

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(4件)

瑠奈
2019.04.03 瑠奈

きゃっはうふふじゃなく、きゃっきゃうふふです!

解除
ゆう
2019.03.26 ゆう
ネタバレ含む
解除
伊予二名
2019.03.25 伊予二名
ネタバレ含む
解除

あなたにおすすめの小説

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛人をつくればと夫に言われたので。

まめまめ
恋愛
 "氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。  初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。  仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。  傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。 「君も愛人をつくればいい。」  …ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!  あなたのことなんてちっとも愛しておりません!  横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。 ※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします… ⬜︎小説家になろう様にも掲載しております

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

追放された悪役令嬢は辺境にて隠し子を養育する

3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)
恋愛
 婚約者である王太子からの突然の断罪!  それは自分の婚約者を奪おうとする義妹に嫉妬してイジメをしていたエステルを糾弾するものだった。  しかしこれは義妹に仕組まれた罠であったのだ。  味方のいないエステルは理不尽にも王城の敷地の端にある粗末な離れへと幽閉される。 「あぁ……。私は一生涯ここから出ることは叶わず、この場所で独り朽ち果ててしまうのね」  エステルは絶望の中で高い塀からのぞく狭い空を見上げた。  そこでの生活も数ヵ月が経って落ち着いてきた頃に突然の来訪者が。 「お姉様。ここから出してさし上げましょうか? そのかわり……」  義妹はエステルに悪魔の様な契約を押し付けようとしてくるのであった。

くだらない冤罪で投獄されたので呪うことにしました。

音爽(ネソウ)
恋愛
<良くある話ですが凄くバカで下品な話です。> 婚約者と友人に裏切られた、伯爵令嬢。 冤罪で投獄された恨みを晴らしましょう。 「ごめんなさい?私がかけた呪いはとけませんよ」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。