彼氏に振られたら、異世界にいました

香月

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1章

【幕間】彼女という存在の重さ

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皆様からリクエストを頂いたニートな彼編です。お待たせしました!
少し印象が変わるかもしれませんが、所詮ニートな彼なので大丈夫ですよね、、、?

*************************

彼女と俺は同い年で幼なじみ。


彼女の父親と俺の父親が友人で、家も近所だから小さいときからいつも一緒にいるのは当たり前だった。


中学時代に、親から家庭内別居をする。金は払うが俺の人生には今後関与しないと言われた。もうこの先のことなんて考えられなくなった。
自棄になり始めた時、たまたま席が近かった及川が俺にゲームやラノベを貸してくれた。
自然と及川と仲良くなり、家に遊びに行く頻度も高くなった。そして、及川も俺と同じような境遇だと分かるとより深く付き合うようになっていった。

学校へ行っても俺は舞と及川と及川の友人としか話さなかったせいか、他の同級生がやたらしつこく付きまとうようになった。
特に舞以外の女子から呼び出されては告白されたり、絡み付くように触れられたりしたことだ。
 

俺の事を何も知らないのに好きだとか笑わせるな。


そう思ったら自然と家に引き籠るようになった。舞はそれから毎日家に来ては家事をやってくれるようになった。

最初は何もできなくて「きゃー」とか言ってたから、二人でワイワイ言いながらやってた。
俺の買ったラノベを読んでは感想を言ってくれたりして、もう舞さえいればいいと思った。



ある日舞から「就職が決まった」と言われ、ひどく焦った。

あれから何年経ったんだろう。
俺が自分の殻に閉じ籠ってた間、舞はちゃんと人生を歩んでいた。

「大手の会社なんだけど、私の部署は土日休みだし、一応定時で帰れるんだって。たまに出張もあるみたいだけど、やっぱり給料面もいいし、定時で帰れれば翔のとこ来れるでしょ?」

舞はこれから忙しくなるのに、それでも俺の側に居てくれる。
それだけで心が満たされた。
俺も変わらないといけない。いつまでも舞に頼りきりはよくないと心に誓った。

それから少しずつ変わるために外出をするようになった。

「今度は私とも出掛けてみない?」

舞と出掛けられるレベルではないので、そのうちな、としか言えなかった。

それから数年が経って、相変わらず亀並みにしか進歩してない俺に事件が起きた。
舞の仕事が忙しくなり、しばらく出張することになったから何とか自分でやって欲しいと。

久しぶりに自分で家事をやることになったが、恐ろしいくらいに何もできなかった。

物の場所がわからない。
洗剤の量がわからない。
いつのまにか掃除機がコードレスになっていた。

疲れ果てた俺に、及川からゲームのオフ会をやろうという連絡が来た。どうせ今週は舞も忙しいし、いつでもいいと送ると早速今晩オフ会をやることになった。

待ち合わせ場所は、ターミナル駅近くの居酒屋。幹事の及川と一緒に他2名のゲームパーティーを待った。


「久しぶりに翔に会ったけど、お前ニートの癖して相変わらずイケメンだな」

「俺はイケメンなんかじゃない。それに舞が世話してくれてるからそこまで落ちてない」

「え?舞ちゃん?まだ一緒にいてくれてんの?マジ女神だな」

そんな話をしながら5分後、女性と男性が来て軽く自己紹介すると、その女性がパーティーの中で1番強いキャラだったことがわかり盛り上がった。
だいぶ酒が進んだ頃、及川が俺が引き篭りニートだと話始めた。

「総ログイン時間がおかしいから、自宅勤務されてるのかな?とは思っていたんですけど。普段の生活はどうしてるんですか?」

「聞いてよ、こいつずーっと昔からお世話してくれる女神がいるんだよ」

「彼女さんですか?」

「それが10年来の幼なじみ!」

「、、、なんかそこまでなると義務感とか使命感で翔さんと一緒にいる気がします。このままだと翔さん、他の世界を知らずに一生終わりそうですね」

彼女の言葉が痛かった。
確かに外出をして慣れ始めてはいるが所詮亀並みの進歩。それに舞は俺と義務感とか使命感で一緒にいたのか?
俺に少しでも気持ちがあって一緒に居たと思っていたのに。

時間の関係でお開きになったが、パーティーメンバーと連絡先を交換することになりそのまま帰宅した。



家に帰って電気がついてない。
舞もいない。
その舞も義務感で一緒に居てくれたのかと思うと酷く寂しくなり、早速彼女と連絡を取るようになった。

舞がいない寂しさを埋めるように、彼女と連絡を取り合う。元々ゲームで話は合うし、彼女は謙虚な性格だったから話しやすかった。

舞が出張から戻ってもしばらく忙しかったようで、前ほどの頻度で来なくなった。家に来ても、「義務感」という言葉が気になっていつもみたいに上手く話せない。
逆に彼女との会話は新鮮で、知らないことや目新しいことばかりだった。



ある日、彼女から俺が良ければずっと一緒に居たいと、告白された。



一瞬、舞の事が頭に浮かんだが、義務感で一緒にいてもらうよりは彼女と一緒にいた方が今後の舞の為にもなるだろうと思った。

彼女に返信をする前に、及川に簡潔に自分の考えと告白されたから彼女と付き合おうと思う。と連絡をすると、すぐに返信が帰ってきた。


「告白の返信をする前にまず、舞ちゃんにお前のことをどう思っているか聞いてみろ。その後で自分の考えを言えばいい」


一先ず彼女には、気持ちは嬉しい旨と少しだけ回答を待って欲しいと返信した。

そして、週末の土曜日。
いつものように朝から舞が来て家事をしてくれた。俺は及川に舞が来たから今日聞いてみると連絡をする。
今日はゲームのイベント初日だった。いつものメンバーでクエストに向かっていたから気がつけば13時になったいた。

俺は慌てて舞に話しかける。

「俺の事どう思ってる?」

「好きだよ?ずっと一緒にいたいし、翔は大切な人だと思ってる」

舞の気持ちを初めて聞いて、心臓が高ぶるのがわかった。でも、今の俺には彼女が必要だ、、、。

舞に彼女と一緒にいたいと伝えると、舞は俯いて泣きそうな声で言った。


「そっかごめんね、、、。明日からもう来るのやめるね」


さっきまで高ぶっていた心臓が急に冷めて行くのが分かった。

舞が部屋から出ていこうとしたので、言い訳をさせて欲しくて慌てて舞の腕を強く掴んでしまった。

そこで初めて俺は舞より身長が高くなっていて、舞が幼なじみから「女性」になっていることに気がついた。

10年も一緒にいた筈なのに。

腕をほどかれて、「ごめんね翔、ばいばい」
と言われたとき。

頭が真っ白になった。

そのあと、どう過ごしたか覚えてない。





気がつけば太陽の光が眩しくて、目を細める。
ゲームはつけっぱなしだった。
時間は朝の10時。

酷く喉が渇いていたから、冷蔵庫を開けると作り置きされたおかずがぎっしり詰まっていた。仕事が忙しくなるのを見越して作ってくれたのだろう。

俺は涙が止まらなかった。

なんて事をしてまったのか。

もっとちゃんと舞と向き合っていればよかった。

しばらくして玄関の呼び鈴がなった。
舞かもしれない!
急いで玄関に向かうと、及川が立っていた。


「よぉ、酷い顔だな。見放されたか?」

及川は楽しそうに言った。

「連絡が帰ってこなかったから見に来たけど、まぁ予想通りだな」

「、、、お前は分かっていたのか?」

「誰だって気づくと思うけど。10年間大事な幼馴染みの世話してたのに、ゲームで知り合ったぱっと出の女と一緒にいたいなんて言われて。舞ちゃん可哀想に」

「傷つけるつもりはなかった、、、」

「意味が分からない。いつまで舞ちゃんに甘えてるんだお前?もういいや。俺が舞ちゃん幸せにするよ」

「は?何でお前が出てくるんだよ!」

「知ってる?舞ちゃん中学の頃から人気あったんだよ?本人は気付いてないけど今も会社で凄い人気なの。ご飯誘っても予定があるからって皆断られてさ」

「及川、お前一体、、、?」

「俺はお前と違って、舞ちゃんと一緒にいる為にずっと努力してきた。唯一お前の友達だと思われてたから仲良くなれた時は嬉しかった。
だから高校も大学も、就職だって同じとこ選んで入ってさ。いつか気付いてもらおうと思ってね。お前が自滅してくれて助かったよ」

及川は悪魔のような笑顔で俺を見たあと、玄関を閉めて立ち去った。

俺の知らないところで世界が動いている。

失って初めて気づくとはこの事なんだと痛感した。

それから何も手につかなかった。
舞は来ない。
ゲームは二人がいるからやりたくない。
俺に残されたものは何もない。

あの日からちょうど1週間経った土曜日。

舞が俺の家を出てから行方不明になった事を初めて知らされた。
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