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3章
嵐はすべてを巻き込んで sideヴァレンティノ
しおりを挟む侍女の言葉に疑問を抱きつつ部屋を出ようとした時、ふと入口脇の棚に置いてあるラーナ嬢の扇が目に入った。
そして、そこから思いがけない人物の魔力を感じた。
恐らく自分の考えは間違ってはいない。
しかし確証が必要な為、仕方なく侍女に尋ねた。
「あの扇はいつもラーナ嬢が持ち歩いてる物だな?」
「えっ?あ、はい。高貴な方とお会いするときはいつもお持ちになっています。確かあの夜もお持ちになっていました」
「、、、の方とこの城に来てから、ラーナ嬢は直接会っているか?」
俺はあえてその人の名を空中文字で描き、音にしないようにする。
「初日のあの事件以降部屋にいるよう、旦那様からきつく言われておりましたのでずっとこちらにおりました」
これで確証は取れた。
しかし、なんとも後味が悪い。
急ぎ部屋を出た後、苦い報告をヴェルサスに念話で送る。
やはりヴェルサスからの返答はすぐには来なかった。
そして翌日、主要メンバーが集められ事件の真相が暴かれた。
「今回のラーナ嬢の件について、ヴェルサスより解決したと報告が上がった。皆心して聞くように」
マイ様の謁見を行った会議室に、あの時と同じメンバーが集められる。
そして、陛下の言葉を合図にヴェルサスが話し始める。
「、、、今回のラーナ嬢の魔力暴走の件について、皆ある程度知っていると思うが魔力譲渡が行われていた。
知っての通り、魔力譲渡は対象者に触れるだけで魔力を渡すことが出来る技。ただし、高魔力保持者より低魔力保持者へ渡す限定的な技だ」
そういってヴェルサスはラーナ嬢の扇を机の上に置いた。
「これはラーナの扇だ。彼女の魔力が高くないことは誰でも知っている。ラーナ嬢は夜会前の夜に誰かに呼び出され、この扇を持っていったとラーナ付き侍女が証言している。
魔力譲渡は魔力の痕跡が残る。今このラーナ嬢に残る痕跡は、、、」
皆一斉にヴェルサスを見る。
いや、正確にはその横に座る第2王子であるヴィーノ様を。
「ヴィーノ、、、」
ヴェルサスは苦い顔をして、横に座る弟を見据える。
対してヴィーノ様は閉じていた目をすっと開くと、楽しそうに笑った。
「僕は父上と同じ先見の力を少しだけ持っています。そして僕の指名は導き。
今回の「事」は起こらなければならなかった運命。ですよね?父上」
ヴィーノ様はそれだけ言って、陛下を見る。
皆やり取りについていけず、二人の動向を見守るしかなかった。
「父上?どういうことか説明していただけますか、、、」
ヴェルサスも苦慮しながら、陛下のお言葉を待つようだ。
陛下は少し間を置き、ゆっくりと口を開いた。
「ヴィーノの言うとおり、私には落ち人由来の先見えの力を持っている。だが私は力を持つだけで傍観することしかできない。導きの役目はヴィーノに引き継がれているからな」
陛下はそういうと、宙を見つめた。
「今回の件はすべてマイ殿の為に起こるべくして起きた件。ラーナ嬢はもともと「事」を起こす役割をもった運命なのだ」
「っ、だからといってマイを巻き込んでいいことにはなりません!防げる運命だったのではないのですか?」
ヴェルサスは強く拳を握り、口調を強めた。
「、、、残念だが「私達」は運命を変えられない。私達はこの世界の住人で、マイ殿はこの世界で愛されることを知る運命。皆にもわかって欲しい、マイに起こることは私達には変えることができないのだ」
陛下は悲しげな目をして私達を見る。
少しの沈黙の後、ヴィーノ様が話始めた。
「兄上、簡単に言いましょう。僕と父上は先見の力でマイ様が夜会の時に襲われることを知っていました。だからといって「僕達」は運命を変えられない。
だから「マイ殿が襲われる」という運命はそのままにし、なんとかその規模を小さくする方法を取らざるを得ませんでした。
そこで利用したのがラーナ嬢です。彼女は攻撃魔法は使えないからマイ殿に危害を加えることはできない。それにリヒャル王子と行動を共にすることも分かっていたので、彼の守護を利用させてもらうことにしました」
ヴィーノ様は淡々と事の顛末を話す。
今までヴィーノ様があまり多くの事を話さなかった理由がわかった。
彼は先見の力のせいで不用意な事を発言できないし、最悪の事態を回避する為に考え、行動に移されていたのだと。
「結果的にマイ殿は隣国へ行くことになってしまいましたが、それはこの問題が片付けば問題ないですし本来の運命にも背いていない」
ヴィーノ様はそこまで話すと、ため息をついた。
「兄上達には理解しがたい内容かもしれませんが、これが事実です」
ヴィーノ様は苦笑しながら、私たちを見た。
到底すぐには理解できるような内容ではない。
けれど、ヴィーノ様の話が本当であればマイ様はもっと大変なことになっていたことになる。
しかし、ラーナ嬢はただ巻き込まれたことになる。
「では、今回の件はラーナ嬢の責任という事で片をつけるのですか?」
私は耐えきれず、つい言葉に出してしまった。
「彼女はそういう運命を持つ者。今回関わらなかったとしても、いつか同じ事を必ずすることになる。時期が早まっただけだ」
陛下はそういうと、ヴェルサスを見る。
ヴェルサスは納得いかないようだったが、しばらく沈黙した後、結論を導く。
「今回の件はラーナ嬢の責任とし、対処は隣国への送還と同時に今後マール国内への入国を禁ずることにする」
無言の同意があり、皆様々な思いを残しながら会議室を後にしていった。
部屋には俺とヴェルサスだけ残る。
「父上とヴィーノがいつも遠くを見ていたのはこういう事だったのか、、、。俺は黒髪という理由だけで王子になっていいのだろうか、、、」
ヴェルサスは項垂れると、頭を抱え込んだ。
久しぶりに落ちこむヴェルサスを見て、何と声をかけていいのか分からない。
ヴェルサスは黒髪で生まれた為、幼少期から畏怖の象徴だったし、心ない奴から王の子ではないと影で言われ続けた。
ヴェルサスはそれを跳ね返すように、ひたすら鍛練を積み王子となるべく己を磨いていた。
けれど、その中にある孤独は計り知れない。
俺は無言でそのまま側にいることしかできなかった。
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