48 / 74
第二章 学園生活
41話 備品保管庫への訪問
しおりを挟む午前の授業を終え、私はクロエと共に備品保管庫へ向かった。
備品保管庫は、学園の敷地内でも特に厳重に管理されている施設のひとつだ。魔物討伐訓練の準備として、多くの生徒が必要な装備を借りるため、この時期は利用者も増える。
「クリスティア、こちらです……!」
クロエ嬢が控えめな声で私を呼ぶ。廊下を進むと、学園の一角にある重厚な鉄製の扉が見えてきた。
扉の前には、威圧感のある男性が仁王立ちしている。学園の備品を管理する専属管理者だ。彼は生徒が入るたびに鋭い眼光を向け、物を借りる者が規則を守るかどうかを厳しく監視しているという。
(まるで城の宝物庫の番人ですわね……)
「ごきげんよう。備品を拝見したくて参りましたわ」
私がそう声をかけると、管理者はじろりと私たちを見た後、無言で頷き、扉を開いた。
ゴゴゴゴ……
鉄の扉が鈍い音を立てながらゆっくりと開かれる。
「うわぁ……!」
クロエ嬢が小さく感嘆の声を漏らした。
そこに広がっていたのは、整然と並べられた多種多様な備品の数々。武器、防具、ポーション類、さらには魔道具や書物まで、討伐訓練や戦闘科目に必要なものが一通り揃っている。
棚には、剣や槍、弓がずらりと並び、それぞれに札が付けられていた。学園の貸し出し品とはいえ、質の良いものが多い。
「すごいです……! こんなにたくさんの種類があるんですね……!」
「ええ。これなら必要なものは大抵揃いそうですわね」
クロエ嬢と一緒に各種装備を見ていると、奥の方に分厚い強化ガラスのショーケースがあることに気づいた。
その中には、まばゆい光を放つ魔石が並べられている。
「……あれが学園で管理している魔石、ですわね」
クロエも気づいたようで、ガラスケースに近づき、興味深そうに眺めた。
しかし、その瞬間――
「魔石を見るのか?」
突然、管理者の低い声が背後から響いた。
「……っ!」
クロエがびくっと肩を震わせる。私も少し驚いたが、すぐに振り向いた。
「はい、少し拝見したくて」
「そうか。だが、許可のない者には中の魔石を見せることはできん」
管理者はそう言いながら、腕を組んだ。
備品保管庫の魔石は、貴族や資産家でなければ簡単に手に入れられないほどの高価なもの。そのため、学園でも厳重に管理されており、許可を得なければケースの中を覗くこともできない。
(なるほど……そこまで厳しく管理されているのですわね)
「では、許可をお願いできますか?」
私が申し出ると、管理者はしばらく私を見つめた後、ゆっくりと頷いた。
「……いいだろう。ただし、見る間は私の監視下に入る。不用意に手を伸ばしたり、触れようとした場合は即刻退場してもらう」
「心得ておりますわ」
「では、ついてこい」
管理者はケースの前に進み、鍵を取り出した。
カチャリ
分厚いガラス扉が開かれると同時に、魔石の神秘的な光が辺りに広がる。
「……綺麗」
クロエが小さな声で呟いた。
ケースの中には、赤、青、緑、紫と、様々な色の魔石が並べられている。それぞれ異なる魔力を秘めており、炎を強化するもの、魔力の消費を抑えるもの、回復効果を高めるものなど、用途も様々だ。
「触るなら言え。私が出してやる」
管理者が厳しい目で言い放つ。どうやら、ケース内の魔石に直接手を伸ばすことすら許されないようだ。
「では……この『エナジー魔石』を拝見してもよろしいかしら?」
私が指さすと、管理者は頷き、慎重に魔石を取り出した。そして、目の前にそっと置く。
(魔石を扱うだけなのに、ものすごく監視されている気分ですわね……)
私は慎重に指先で魔石に触れた。すると、ほんのりと温かみがあり、微細な魔力の流れを感じる。
「すごいです……まるで脈を打っているみたい」
「これが『エナジー魔石』だ。魔力を蓄え、消費を抑える効果がある。だが、粗雑に扱えば簡単に砕ける。慎重に使え」
管理者の声はいつも通り無愛想だが、その言葉には確かな知識と経験が裏打ちされている。
「……とても勉強になりますわ」
「もういいか?」
「はい、ありがとうございました」
管理者が魔石を再びケースに戻し、ガラス扉を閉める。
「学園の魔石はすべてこうして厳重に管理されている。扱う際は絶対に気を抜くな」
「心得ておりますわ」
管理者の厳しい視線を受けながら、私はクロエ嬢と共にその場を後にした。
保管庫を出ると、クロエがふうっと息をついた。
「すごく……緊張しました……」
「ええ、本当に」
備品保管庫はまさに学園の宝物庫。それを実感したひとときだった。
—————————————————————————————————————————————————————————————————
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!もしよかったら、キャラの行動やストーリーの展開について、皆さんの感想を聞かせていただけるとうれしいです!気軽にコメントしていただけると励みになります!
23
あなたにおすすめの小説
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
悪役令嬢の取り巻き令嬢(モブ)だけど実は影で暗躍してたなんて意外でしょ?
無味無臭(不定期更新)
恋愛
無能な悪役令嬢に変わってシナリオ通り進めていたがある日悪役令嬢にハブられたルル。
「いいんですか?その態度」
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる