2度目の人生は、公爵令嬢でした

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第二章 学園生活

41話 備品保管庫への訪問  

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 午前の授業を終え、私はクロエと共に備品保管庫へ向かった。

 備品保管庫は、学園の敷地内でも特に厳重に管理されている施設のひとつだ。魔物討伐訓練の準備として、多くの生徒が必要な装備を借りるため、この時期は利用者も増える。

「クリスティア、こちらです……!」

 クロエ嬢が控えめな声で私を呼ぶ。廊下を進むと、学園の一角にある重厚な鉄製の扉が見えてきた。

 扉の前には、威圧感のある男性が仁王立ちしている。学園の備品を管理する専属管理者だ。彼は生徒が入るたびに鋭い眼光を向け、物を借りる者が規則を守るかどうかを厳しく監視しているという。

(まるで城の宝物庫の番人ですわね……)

「ごきげんよう。備品を拝見したくて参りましたわ」

 私がそう声をかけると、管理者はじろりと私たちを見た後、無言で頷き、扉を開いた。

ゴゴゴゴ……

 鉄の扉が鈍い音を立てながらゆっくりと開かれる。

「うわぁ……!」

 クロエ嬢が小さく感嘆の声を漏らした。

 そこに広がっていたのは、整然と並べられた多種多様な備品の数々。武器、防具、ポーション類、さらには魔道具や書物まで、討伐訓練や戦闘科目に必要なものが一通り揃っている。

 棚には、剣や槍、弓がずらりと並び、それぞれに札が付けられていた。学園の貸し出し品とはいえ、質の良いものが多い。

「すごいです……! こんなにたくさんの種類があるんですね……!」

「ええ。これなら必要なものは大抵揃いそうですわね」

 クロエ嬢と一緒に各種装備を見ていると、奥の方に分厚い強化ガラスのショーケースがあることに気づいた。

 その中には、まばゆい光を放つ魔石が並べられている。

「……あれが学園で管理している魔石、ですわね」

 クロエも気づいたようで、ガラスケースに近づき、興味深そうに眺めた。

 しかし、その瞬間――

「魔石を見るのか?」

 突然、管理者の低い声が背後から響いた。

「……っ!」

 クロエがびくっと肩を震わせる。私も少し驚いたが、すぐに振り向いた。

「はい、少し拝見したくて」

「そうか。だが、許可のない者には中の魔石を見せることはできん」

 管理者はそう言いながら、腕を組んだ。

 備品保管庫の魔石は、貴族や資産家でなければ簡単に手に入れられないほどの高価なもの。そのため、学園でも厳重に管理されており、許可を得なければケースの中を覗くこともできない。

(なるほど……そこまで厳しく管理されているのですわね)

「では、許可をお願いできますか?」

 私が申し出ると、管理者はしばらく私を見つめた後、ゆっくりと頷いた。

「……いいだろう。ただし、見る間は私の監視下に入る。不用意に手を伸ばしたり、触れようとした場合は即刻退場してもらう」

「心得ておりますわ」

「では、ついてこい」

 管理者はケースの前に進み、鍵を取り出した。

カチャリ

 分厚いガラス扉が開かれると同時に、魔石の神秘的な光が辺りに広がる。

「……綺麗」

 クロエが小さな声で呟いた。

 ケースの中には、赤、青、緑、紫と、様々な色の魔石が並べられている。それぞれ異なる魔力を秘めており、炎を強化するもの、魔力の消費を抑えるもの、回復効果を高めるものなど、用途も様々だ。

「触るなら言え。私が出してやる」

 管理者が厳しい目で言い放つ。どうやら、ケース内の魔石に直接手を伸ばすことすら許されないようだ。

「では……この『エナジー魔石』を拝見してもよろしいかしら?」

 私が指さすと、管理者は頷き、慎重に魔石を取り出した。そして、目の前にそっと置く。

(魔石を扱うだけなのに、ものすごく監視されている気分ですわね……)

 私は慎重に指先で魔石に触れた。すると、ほんのりと温かみがあり、微細な魔力の流れを感じる。

「すごいです……まるで脈を打っているみたい」

「これが『エナジー魔石』だ。魔力を蓄え、消費を抑える効果がある。だが、粗雑に扱えば簡単に砕ける。慎重に使え」

 管理者の声はいつも通り無愛想だが、その言葉には確かな知識と経験が裏打ちされている。

「……とても勉強になりますわ」

「もういいか?」

「はい、ありがとうございました」

 管理者が魔石を再びケースに戻し、ガラス扉を閉める。

「学園の魔石はすべてこうして厳重に管理されている。扱う際は絶対に気を抜くな」

「心得ておりますわ」

 管理者の厳しい視線を受けながら、私はクロエ嬢と共にその場を後にした。

 保管庫を出ると、クロエがふうっと息をついた。

「すごく……緊張しました……」

「ええ、本当に」

 備品保管庫はまさに学園の宝物庫。それを実感したひとときだった。

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