アラサー手前だった私が男子高校生に?!

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本編

1話



 ——私は、普通に生きてきたはずだ。
 普通の家庭に生まれ、普通に学校へ行き、普通に就職して。
 彼氏いない歴=年齢だったけど、別にそれは今どうでもいい。

 問題は、いまのこの身体である。

「……誰やねん、この身体。めっちゃ太っとるやんけ……」

 ゆっくりとシーツをめくった瞬間、目を疑った。
 見慣れない腕、腹まわり…そしてあれ…

「いやいやいや……私の身体じゃないよね?! え、なんで? 何がどうなってんの?」

 半分混乱しながらベッドの上でジタバタする。体痛すぎて気持ちだけだけども…
 しかし部屋の豪華さがふと目に入って、思考が一度止まった。

「……てか、この部屋……高級ホテルみたいなんだけど。何? この身体の持ち主って金持ち?」

 ガラガラ、とドアが開く。

「あっ、目が覚められたんですね。龍宮(たつみや)さん」

「えっ? あ……はい、おかげ様で」

 白衣を着た看護師さんが入ってくる。
 落ち着いた声と優しい表情に、ここが病院だとようやく理解した。

(病院って……こんな豪華な個室ある?)

「私は担当看護師の長野理沙(ながの りさ)と言います。よろしくお願いしますね」

「よろしくお願いします、長野さん」

「動けるようになったら、カテーテルも外しましょうね」

「ひぇっ」

 その言葉に思わず変な声が出た。
 さっきからあった股間の違和感、やっぱりそうだったのか。

(違和感ありすぎて逆に気づいてなかった……)

「大丈夫ですか? 急に顔色が……」

「す、すみません。カテーテルって……痛いです?」

「力まれなければ、ほとんど痛みはありませんよ。外すときもゆっくりしますからね」

「よかったぁ……」

 ホッと息を吐くと、長野さんは柔らかく微笑み、

「何かあればナースコールを押してくださいね」

 そう言い残して部屋を出ていった。

 ——静かになった。

「……暇だ」

 動けるほど回復していないし、スマホもない。
 ベッド横の棚を開けたり閉めたりして、子どもみたいに暇つぶしをする。

 ガタッ、バタン。
 ガタッ、バタン。

「あ、鏡あった」

 そっと覗き込む。

「……うん。なかなか酷いねこれは……」

 肌荒れ、パンパンにむくんだ顔、腫れぼったい目元。
 前の自分が肌トラブルゼロだっただけに、差が激しすぎる。

(長野さん肌めっちゃ綺麗だったな……なんかコツ聞いてみよう)

 コンコン。

「失礼します」

 入ってきたのは——綺麗めのイケメンだった。
 スーツ姿で整った顔立ち、落ち着いた雰囲気。
 いかにも育ちが良さそうな人だ。

「あぁ、本当に目を覚まされたのですね。よかった」

「心配かけてごめんね」

 自然とそんな言葉が出たが、相手はそれを当たり前のように受け取った。

「今日は着替えをお持ちしました。他に必要なものがあればすぐに用意いたします」

「今は大丈夫かな。ありがとう」

「そうですか……でも、少し疲れた様子ですね」

(やば……本人と性格違いすぎるとか思われてない?)

 内心ひやひやしていると、イケメンが紅茶を差し出してきた。

「紅茶をお淹れしました。飲めそうですか?」

「いただきます」

 一口。

「……甘っ!!」

「えっ……? い、いつもは“美味しい”とおっしゃるのに……」

「なんか好みが変わっちゃったのかも。ごめん、次はストレートでお願い」

「……気づけず申し訳ありません。すぐ淹れ直します」

「いやいや! 私の方こそ悪いし! ありがとう」

 彼は丁寧な動きで着替えを棚にしまい、ベッド周りを整える。

(仕事できそうだなこの人……というか優しいな……)

「では、また明日も来ます。必要なものがあれば連絡してください」

「うん。帰り気をつけてね」

「はいっ」

 嬉しそうに笑って彼は出ていった。

 その表情がなんだか印象に残った。

(……さて。この身体、どうやって生きていこっかな)

 そんなふうに軽く考えてしまうくらい、私はもう“この奇妙な状況”に馴染み始めていた。


感想 1

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