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第1話「Nordic Mythology Online」
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『Nordic Mythology Online』(ノルディックミサロジーオンライン)
通称NMO。
北欧神話をモチーフにしたシナリオで、多彩な職が楽しめるネットゲームとして、今や世界中で楽しまれている大人気VRMMO。
ソロで楽しむもよし。仲間と協力して強力なモンスターに挑むもよし。戦わなくても生産スキルで生計を立てたり、気の合う仲間とダベってるだけでも楽しめる。
そしてこのゲームの一番の目玉は対人戦だ。
他のVRMMOとは違い、プレイヤースキルがモノをいうゲーム故に、他のゲームと比べ物にならない程の人気を誇っている。
有名なプレイヤーにはTV局からからオファーが来たり、プロゲーマーとして会社と専属の契約を結ぶ人も居る位だ。
そんな上位プレイヤーに憧れ続け、俺はついに上位プレイヤーが居る舞台は立っている。
自分のステータスウィンドウを見る。そこには自分の姿とステータスが表示されている。
某アニメキャラに憧れ、似たような外見にするため黒の短髪に全身黒のコーディネイト。
コートの背中に剣を差しているが、持っている杖の外見を変更をしているだけで、実際は杖だ。
それと左手には大きな盾が表示されているが、コイツは戦闘時以外はアイテム倉庫に入れてある。正直戦闘以外で装備していると邪魔だし。
プレイヤー名 リョウ
職 回復術士
所属クラン イージスの盾
職位 クランマスター
上位プレイヤーに憧れ、学校も疎かにしてまでプレイヤースキルを磨き続け、同じ目標の人間に声をかけて設立したクラン『イージスの盾』。
色々と困難もあったが、そのかいあって、ついにNMO最大のイベント。
『ノルディックミサロジーオンライン ワールドチャンピオンシップ』通称NWCの日本代表決定戦まで来た。
ちなみにプレイヤー名は本名である「宮迫 亮太(みやさこ りょうた)」からそのままとったものだ。
NWCは、最大100人vs100人のクラン同士の対人戦で、年に1度行われる。
各サーバーより代表を選び、勝ち抜き形式のリーグで優勝したクランが国の代表としてNWCに出られるのだ。
この試合に勝てば、俺は日本代表になれる。
リアルに投映されたVR空間で、俺は玉座に座り、踏ん反り返ることなく、クランのメンバー一人一人の顔を見て良く。
どいつもこいつも真剣なまなざしだ。しかし、これはちょっといけないな。
真剣なのは良いが、緊張して固まっている。まぁこんな大舞台に出たのは初めてと言う奴も何人か居るから、仕方がない事ではあるが。
「あー、お前ら。俺が居る限り、お前らをむざむざ死なす事は無い」
俺の発言に対し、頷き返してくれるけどまだ硬いな。
「いつも通り。生きた心地のしない、ギリギリの回復をくれてやるから、安心しろ」
副マスターの「それはそれで安心出来ないですよ」と言うツッコミで、他のメンバーから笑いが起こった。
ふぅ、良い感じに緊張がほぐれたようだ。
大丈夫。このメンバーなら絶対に勝てる。
俺は玉座から立ち上がり砦から出て行く。他のメンバーも俺の後を続いてきている。
砦から出ると平原になっており、左右少し離れた所には森がうっそうと茂っている。
1km程先にはこちらと同じように砦がある。そこから対戦相手のクランのメンバーが出てくるのが見える。
対人戦のルールはお互い砦を守りつつ、相手の砦を攻め落としたほうが勝ちというもの。シンプルなルールだが、戦術の奥は深い。
相手のメンバーが揃ったのだろう。どこからか大音量でアナウンスが聞こえてくる。
「さて、始まりましたNWC日本代表決定戦。初出場ながら快進撃を決めるのは『イージスの盾』だ。このクランは少数精鋭ながらも高い突破力を持った前衛と、難攻不落と言われる防衛力で攻守ともに高い評価を得ている」
俺たちのスタイルは攻めと防衛が3:7の比率で人数分けをしている。勿論相手のスタイルによって比率は変動させるが。
大体相手が5:5の比率程度なら、突破は余裕だ。そう言ってのけるくらいに俺はこのメンバーに自信がある。
「しかし。このクランの最大の目玉は、クランマスター『リョウ』通称『イージスの盾』と呼ばれる回復術士だ。1人で10人分の働きは出来ると言われているほどで、実際に少人数ながらも、彼のおかげで人数差をものともしない進軍速度を見せている」
ここまで褒められるのは流石に恥ずかしい。
副マスターや、他のメンバーがニヤニヤしながら俺を突っついてくる。
やった人物は覚えたから後で覚えておけよ。そんな風に考える時点で俺も緊張しているのだろう。
それに気付いたおかげか、ちょっとだけ体が軽くなった気がする。
「さて。それじゃあ日本一の称号、頂いちゃいましょうか」
辺りにプォォオオオオオオオオオと言う音が響き渡る。試合開始の合図だ。
早速お互い防衛に周る部隊は砦の中へ駆けてゆく。
俺が率いる進軍部隊は、そのまま真っ直ぐ相手の砦へと向かっていく。
ふむ。決勝と言うだけあって、流石の統率力だ。
各自がバラバラに攻撃を打つのではなく、2人組や3人組となって、こちらを一人づつ確実に仕留めようとしてくる。
「あー、マスター。俺そろそろ死にそうなんですが」
副マスターのHPを見る。確かに死にそうだな。
「そうか。じゃあ適当に死んでくれ」
別にさっきの仕返しで言ってるわけじゃない。ここで無駄に回復スキルを使えば、相手はその隙をついて範囲型攻撃に変えてくるだろう。
そうなれば一網打尽でやられるのが目に見えている。見え透いた戦術ではあるが、少数精鋭で攻める俺たちにとって、それは有効打と言えるだろう。
ただでさえ人数差が有るというのに一人減れば、その負担は大きくなる。
「へいへい。それじゃ出来る限り派手に散って、すぐに死に戻りさせて頂きますよ」
そろそろ相手の城門に着く、副マスターの奴は攻撃スキルを連打して、本当に派手に散ってくれたようだ。
「相手。大魔法来ます!」
メンバーの叫ぶような声に反応して地面を見た。
地面には大魔法を発動させるための巨大な魔法陣が次々と描かれていく。どうやら相手さんはしびれを切らせたようだ。
次の瞬間、雷鳴が轟いた。
「やったか!」
「残念。無傷なんだよな」
同時に発動させた、色とりどりのカラフルな大魔法群で俺たちを倒したと思ったんだろうな。城壁の上でガッツポーズを見せている相手クランのメンバーに、俺は笑顔で手を振って応えた。
確かに、今の大魔法を普通に食らっていたら、ひとたまりもないだろうな。
だから、俺はあらかじめ『範囲型高位回復魔法』を詠唱キャンセルさせながら進軍していた。相手の大魔法に合わせて『範囲型高位回復魔法』を発動し、途中でもう一度『範囲型高位回復魔法』を発動。
それと、事前にかけておいた『対魔法殻』のおかげでギリギリの所で持ちこたえた。
「あぁ、このギリギリな感じ。最高だぜ」
一瞬の合間に全員のHPを確認しながら、死ぬギリギリで回復をする。
これが俺の得意技であり。俺の戦闘スタイルだ。
「城門突破!」
これで俺たちの勝ちパターンに入った。
ふっ、勝ったな。
☆ ☆ ☆
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
ヴァーチャルコンソールを外し、俺は叫んだ。
先ほどのVR空間から現実世界に戻ってきた。周りには同じ参加者のメンバーたちの姿が見える。
多分周りから見たらアホみたいに思われるだろう。だが叫ばずにはいられなかった。
同じように、コンソールを外したメンバー達が次々と叫んでいる。中にはすすり泣くものが居る程だ。
俺達はあの後、勝利を収めた。
日本代表として、NWCへの参加出場権を見事に得た。
そこへ、コツコツと歩いてくる男性が居た。長身にメガネ姿、中途半端な無精ひげが清潔感を与えない感じだ。
まだ優勝の余韻で騒ぐメンバー等気にせず、俺の元まで歩いて来た。
「やぁ。キミが『リョウ』かな?」
「あ、はい」
笑顔で話しかけてくるこの男に、俺は油断していた。
いや、そもそも警戒していたとしてもどうにもならなかったと思う。
「良い試合だったよ」
そう言って手を差し伸べて来た男に、握手を交わそうと手を差し出した時だった。
一瞬の事だった。ドンっとした衝撃。
気づくまでに一秒はかかっただろうか。見ると俺の胸にナイフが突き刺さり、服が朱色にジワリジワリと染まっていくのが見えた。
理解して、初めて痛みに気付く。
そして何か叫ぼうにも、混乱した頭は上手く動いてくれない。
「お前が、お前がいけないんだからな!」
先ほどまで笑顔だった男は「フーフー」と激しく息を吐き、顔を憎しみに歪ませている。
そこでやっと他のメンバーも異常に気付いたようで、悲鳴を上げているようだけど、俺にはそれが遠く聞こえた。
いつのまにか地面が俺の前にある。気づかぬうちに倒れていた。
体中が冷たくなる感覚を覚えながら、俺の意識はそこで途絶えた。
通称NMO。
北欧神話をモチーフにしたシナリオで、多彩な職が楽しめるネットゲームとして、今や世界中で楽しまれている大人気VRMMO。
ソロで楽しむもよし。仲間と協力して強力なモンスターに挑むもよし。戦わなくても生産スキルで生計を立てたり、気の合う仲間とダベってるだけでも楽しめる。
そしてこのゲームの一番の目玉は対人戦だ。
他のVRMMOとは違い、プレイヤースキルがモノをいうゲーム故に、他のゲームと比べ物にならない程の人気を誇っている。
有名なプレイヤーにはTV局からからオファーが来たり、プロゲーマーとして会社と専属の契約を結ぶ人も居る位だ。
そんな上位プレイヤーに憧れ続け、俺はついに上位プレイヤーが居る舞台は立っている。
自分のステータスウィンドウを見る。そこには自分の姿とステータスが表示されている。
某アニメキャラに憧れ、似たような外見にするため黒の短髪に全身黒のコーディネイト。
コートの背中に剣を差しているが、持っている杖の外見を変更をしているだけで、実際は杖だ。
それと左手には大きな盾が表示されているが、コイツは戦闘時以外はアイテム倉庫に入れてある。正直戦闘以外で装備していると邪魔だし。
プレイヤー名 リョウ
職 回復術士
所属クラン イージスの盾
職位 クランマスター
上位プレイヤーに憧れ、学校も疎かにしてまでプレイヤースキルを磨き続け、同じ目標の人間に声をかけて設立したクラン『イージスの盾』。
色々と困難もあったが、そのかいあって、ついにNMO最大のイベント。
『ノルディックミサロジーオンライン ワールドチャンピオンシップ』通称NWCの日本代表決定戦まで来た。
ちなみにプレイヤー名は本名である「宮迫 亮太(みやさこ りょうた)」からそのままとったものだ。
NWCは、最大100人vs100人のクラン同士の対人戦で、年に1度行われる。
各サーバーより代表を選び、勝ち抜き形式のリーグで優勝したクランが国の代表としてNWCに出られるのだ。
この試合に勝てば、俺は日本代表になれる。
リアルに投映されたVR空間で、俺は玉座に座り、踏ん反り返ることなく、クランのメンバー一人一人の顔を見て良く。
どいつもこいつも真剣なまなざしだ。しかし、これはちょっといけないな。
真剣なのは良いが、緊張して固まっている。まぁこんな大舞台に出たのは初めてと言う奴も何人か居るから、仕方がない事ではあるが。
「あー、お前ら。俺が居る限り、お前らをむざむざ死なす事は無い」
俺の発言に対し、頷き返してくれるけどまだ硬いな。
「いつも通り。生きた心地のしない、ギリギリの回復をくれてやるから、安心しろ」
副マスターの「それはそれで安心出来ないですよ」と言うツッコミで、他のメンバーから笑いが起こった。
ふぅ、良い感じに緊張がほぐれたようだ。
大丈夫。このメンバーなら絶対に勝てる。
俺は玉座から立ち上がり砦から出て行く。他のメンバーも俺の後を続いてきている。
砦から出ると平原になっており、左右少し離れた所には森がうっそうと茂っている。
1km程先にはこちらと同じように砦がある。そこから対戦相手のクランのメンバーが出てくるのが見える。
対人戦のルールはお互い砦を守りつつ、相手の砦を攻め落としたほうが勝ちというもの。シンプルなルールだが、戦術の奥は深い。
相手のメンバーが揃ったのだろう。どこからか大音量でアナウンスが聞こえてくる。
「さて、始まりましたNWC日本代表決定戦。初出場ながら快進撃を決めるのは『イージスの盾』だ。このクランは少数精鋭ながらも高い突破力を持った前衛と、難攻不落と言われる防衛力で攻守ともに高い評価を得ている」
俺たちのスタイルは攻めと防衛が3:7の比率で人数分けをしている。勿論相手のスタイルによって比率は変動させるが。
大体相手が5:5の比率程度なら、突破は余裕だ。そう言ってのけるくらいに俺はこのメンバーに自信がある。
「しかし。このクランの最大の目玉は、クランマスター『リョウ』通称『イージスの盾』と呼ばれる回復術士だ。1人で10人分の働きは出来ると言われているほどで、実際に少人数ながらも、彼のおかげで人数差をものともしない進軍速度を見せている」
ここまで褒められるのは流石に恥ずかしい。
副マスターや、他のメンバーがニヤニヤしながら俺を突っついてくる。
やった人物は覚えたから後で覚えておけよ。そんな風に考える時点で俺も緊張しているのだろう。
それに気付いたおかげか、ちょっとだけ体が軽くなった気がする。
「さて。それじゃあ日本一の称号、頂いちゃいましょうか」
辺りにプォォオオオオオオオオオと言う音が響き渡る。試合開始の合図だ。
早速お互い防衛に周る部隊は砦の中へ駆けてゆく。
俺が率いる進軍部隊は、そのまま真っ直ぐ相手の砦へと向かっていく。
ふむ。決勝と言うだけあって、流石の統率力だ。
各自がバラバラに攻撃を打つのではなく、2人組や3人組となって、こちらを一人づつ確実に仕留めようとしてくる。
「あー、マスター。俺そろそろ死にそうなんですが」
副マスターのHPを見る。確かに死にそうだな。
「そうか。じゃあ適当に死んでくれ」
別にさっきの仕返しで言ってるわけじゃない。ここで無駄に回復スキルを使えば、相手はその隙をついて範囲型攻撃に変えてくるだろう。
そうなれば一網打尽でやられるのが目に見えている。見え透いた戦術ではあるが、少数精鋭で攻める俺たちにとって、それは有効打と言えるだろう。
ただでさえ人数差が有るというのに一人減れば、その負担は大きくなる。
「へいへい。それじゃ出来る限り派手に散って、すぐに死に戻りさせて頂きますよ」
そろそろ相手の城門に着く、副マスターの奴は攻撃スキルを連打して、本当に派手に散ってくれたようだ。
「相手。大魔法来ます!」
メンバーの叫ぶような声に反応して地面を見た。
地面には大魔法を発動させるための巨大な魔法陣が次々と描かれていく。どうやら相手さんはしびれを切らせたようだ。
次の瞬間、雷鳴が轟いた。
「やったか!」
「残念。無傷なんだよな」
同時に発動させた、色とりどりのカラフルな大魔法群で俺たちを倒したと思ったんだろうな。城壁の上でガッツポーズを見せている相手クランのメンバーに、俺は笑顔で手を振って応えた。
確かに、今の大魔法を普通に食らっていたら、ひとたまりもないだろうな。
だから、俺はあらかじめ『範囲型高位回復魔法』を詠唱キャンセルさせながら進軍していた。相手の大魔法に合わせて『範囲型高位回復魔法』を発動し、途中でもう一度『範囲型高位回復魔法』を発動。
それと、事前にかけておいた『対魔法殻』のおかげでギリギリの所で持ちこたえた。
「あぁ、このギリギリな感じ。最高だぜ」
一瞬の合間に全員のHPを確認しながら、死ぬギリギリで回復をする。
これが俺の得意技であり。俺の戦闘スタイルだ。
「城門突破!」
これで俺たちの勝ちパターンに入った。
ふっ、勝ったな。
☆ ☆ ☆
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
ヴァーチャルコンソールを外し、俺は叫んだ。
先ほどのVR空間から現実世界に戻ってきた。周りには同じ参加者のメンバーたちの姿が見える。
多分周りから見たらアホみたいに思われるだろう。だが叫ばずにはいられなかった。
同じように、コンソールを外したメンバー達が次々と叫んでいる。中にはすすり泣くものが居る程だ。
俺達はあの後、勝利を収めた。
日本代表として、NWCへの参加出場権を見事に得た。
そこへ、コツコツと歩いてくる男性が居た。長身にメガネ姿、中途半端な無精ひげが清潔感を与えない感じだ。
まだ優勝の余韻で騒ぐメンバー等気にせず、俺の元まで歩いて来た。
「やぁ。キミが『リョウ』かな?」
「あ、はい」
笑顔で話しかけてくるこの男に、俺は油断していた。
いや、そもそも警戒していたとしてもどうにもならなかったと思う。
「良い試合だったよ」
そう言って手を差し伸べて来た男に、握手を交わそうと手を差し出した時だった。
一瞬の事だった。ドンっとした衝撃。
気づくまでに一秒はかかっただろうか。見ると俺の胸にナイフが突き刺さり、服が朱色にジワリジワリと染まっていくのが見えた。
理解して、初めて痛みに気付く。
そして何か叫ぼうにも、混乱した頭は上手く動いてくれない。
「お前が、お前がいけないんだからな!」
先ほどまで笑顔だった男は「フーフー」と激しく息を吐き、顔を憎しみに歪ませている。
そこでやっと他のメンバーも異常に気付いたようで、悲鳴を上げているようだけど、俺にはそれが遠く聞こえた。
いつのまにか地面が俺の前にある。気づかぬうちに倒れていた。
体中が冷たくなる感覚を覚えながら、俺の意識はそこで途絶えた。
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