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第4話「回復術士は○○がやる職業です」
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「それで。ご用件は?」
ニコニコとゴミを見るような目で見てくる。俺の評価は最低のままだな。
べ、別にそんな事で傷ついたりしないんだからね!
しかし、用件か。
正直ここが現実の世界と分かった時点で、もう用件は無いのだが。
「リアは、モンスターに奪われた砦を取り返す依頼を受けに来ました」
モンスターに奪われた砦?
「あなた一人で?」
「はい」
「ダメです」
受付嬢はリアにピシャリと言い放った。
「どうしても受けたいんです!」
「良い? ビフレストの砦は強力なモンスターだらけなのよ? 確かに取り返すために冒険者を募集しているけど、あなた一人では死ぬだけよ。当ギルドとしてはそのような自殺行為を認めるわけにはいかないの」
ビフレスト砦。
確かNMOのサービス開始当初はモンスターに奪われた設定だったが、クラン戦が始まってからは全プレイヤー参加型クエスト『砦のモンスター討伐』後に、クラン戦でクラン同士が奪い合う砦として使われていたはずだが。
この世界では、いまだにモンスターに奪われたままなのか?
いや、ゲームと一緒に考えては危険だ。この世界はゲームに似ているだけで、現実なのだから。
「あ、あの」
不意にコートの裾を引っ張られ、俺の思考は中断させられた。
先ほどの少女だ。
「1人じゃダメと言われるので、リアと一緒に依頼を受けて欲しいのですが」
あまり気乗りはしないが、正直今の俺は無一文だ。
持っている物は装備していたもの以外、何もない。
加えて言うなら俺は回復術士だ。ソロでの戦闘はこの上なく不向きと言える。
ならば、この少女とパーティを組むのがベストともいえる。
この少女がどの程度の能力かはわからないが、俺の腕なら死なせる事は早々ないだろう。
「あぁ、構わない。俺の名はリョウだ。よろしく」
「リア……じゃなくて私の名前はリアです。こちらこそよろしくお願いします」
両手を揃えてペコリと綺麗に90度のお辞儀をしている姿が可愛らしい。
パーティなんだから、ちょ、ちょっとくらい頭を撫でても良いよね?
ちょっとだけ、先っちょだけだから!
「ん?」
「なんでもないぞ」
撫でようとした矢先に頭を上げられ、勢いよく伸ばした手を引いた際に、カウンターに手を当ててしまい悶絶しそうなのを必死に抑える。
くそ、静まれ俺の腕よ。
あっ、受付嬢さん。そのゴミを見るような目、やめていただいて宜しいでしょうか?
「冒険者登録がまだでしたら、こちらに記入お願いします」
リアには優しく手渡しで、俺にはポイっと言った感じで紙を投げ渡される。
うむ。読めん。
「すみません。俺文字読めないのですが」
「それでは読み上げましょうか?」
「リアも一緒に書くから、読み上げてあげますよ」
そう言ってリアは俺の手を引き、近くにある空いたテーブルに腰掛け丁寧に読み上げながら、ついでに俺の分も書いてくれた。
内容についてはラノベやゲームで見かけるものとほぼ一緒なので省略しておこう。悪い事をしてはいけません的な内容だ。
ニコニコと一文を読み上げるたびに「わかった?」と聞いてくるリアに頷く、周りはそんな様子をニヤニヤと見てきて、時折含み笑いが聞こえるのが不愉快だ。
「最後に職業ですね。リアは剣士です。リョウは?」
「俺は回復術士だ」
どこから咽る声が聞こえた。おかしい事を言ったつもりは無いが。
リアは目をぱちくりさせながら、俺を見ている。もしかしてそんなに変なのか?
「背中に剣を差しているから、てっきり剣士と思っていました」
そう言って紙を書き直している。既に剣士と書いてしまっていたのだろう。
「あぁ、これか。これは剣に見えるがれっきとした杖だ」
またどこからか咽る声が聞こえた。
「兄ちゃん。実はさっき俺ケガをしちまってさ。コイツをヒールで治してくれよ」
先ほどの酔っぱらいのおっさんが声をかけて来た。
腕には確かに小さい切り傷がある。正直コイツの為にヒールをかけたくない気持ちもあるが、ここで渋れば俺の回復術士としての腕前が怪しまれる可能性もある。
仕方がない。ヒールをかけてやるか。
「おお、本当に治ったぜ」
その瞬間、冒険者ギルドで二度目の爆笑が起こった。
一体何なんだ? 回復術士というだけでそんなに笑われるのは流石に腹が立つ。
ゲーム内でも確かに回復術士を馬鹿にする奴らは居たが、ここまでじゃなかったはず。
「俺が回復術士なのは、そんなにおかしい事なのか?」
酔っぱらいに聞いても、多分まともに答えてくれないだろう。
なので俺は、リアに問い詰めてみた。
「その……回復術士は……女の子がやる職業です……」
リアは耳を垂れ下げながら、申し訳なさそうに目線を落としてそうつぶやいた。
回復術士は女の子がやる職業?
ニコニコとゴミを見るような目で見てくる。俺の評価は最低のままだな。
べ、別にそんな事で傷ついたりしないんだからね!
しかし、用件か。
正直ここが現実の世界と分かった時点で、もう用件は無いのだが。
「リアは、モンスターに奪われた砦を取り返す依頼を受けに来ました」
モンスターに奪われた砦?
「あなた一人で?」
「はい」
「ダメです」
受付嬢はリアにピシャリと言い放った。
「どうしても受けたいんです!」
「良い? ビフレストの砦は強力なモンスターだらけなのよ? 確かに取り返すために冒険者を募集しているけど、あなた一人では死ぬだけよ。当ギルドとしてはそのような自殺行為を認めるわけにはいかないの」
ビフレスト砦。
確かNMOのサービス開始当初はモンスターに奪われた設定だったが、クラン戦が始まってからは全プレイヤー参加型クエスト『砦のモンスター討伐』後に、クラン戦でクラン同士が奪い合う砦として使われていたはずだが。
この世界では、いまだにモンスターに奪われたままなのか?
いや、ゲームと一緒に考えては危険だ。この世界はゲームに似ているだけで、現実なのだから。
「あ、あの」
不意にコートの裾を引っ張られ、俺の思考は中断させられた。
先ほどの少女だ。
「1人じゃダメと言われるので、リアと一緒に依頼を受けて欲しいのですが」
あまり気乗りはしないが、正直今の俺は無一文だ。
持っている物は装備していたもの以外、何もない。
加えて言うなら俺は回復術士だ。ソロでの戦闘はこの上なく不向きと言える。
ならば、この少女とパーティを組むのがベストともいえる。
この少女がどの程度の能力かはわからないが、俺の腕なら死なせる事は早々ないだろう。
「あぁ、構わない。俺の名はリョウだ。よろしく」
「リア……じゃなくて私の名前はリアです。こちらこそよろしくお願いします」
両手を揃えてペコリと綺麗に90度のお辞儀をしている姿が可愛らしい。
パーティなんだから、ちょ、ちょっとくらい頭を撫でても良いよね?
ちょっとだけ、先っちょだけだから!
「ん?」
「なんでもないぞ」
撫でようとした矢先に頭を上げられ、勢いよく伸ばした手を引いた際に、カウンターに手を当ててしまい悶絶しそうなのを必死に抑える。
くそ、静まれ俺の腕よ。
あっ、受付嬢さん。そのゴミを見るような目、やめていただいて宜しいでしょうか?
「冒険者登録がまだでしたら、こちらに記入お願いします」
リアには優しく手渡しで、俺にはポイっと言った感じで紙を投げ渡される。
うむ。読めん。
「すみません。俺文字読めないのですが」
「それでは読み上げましょうか?」
「リアも一緒に書くから、読み上げてあげますよ」
そう言ってリアは俺の手を引き、近くにある空いたテーブルに腰掛け丁寧に読み上げながら、ついでに俺の分も書いてくれた。
内容についてはラノベやゲームで見かけるものとほぼ一緒なので省略しておこう。悪い事をしてはいけません的な内容だ。
ニコニコと一文を読み上げるたびに「わかった?」と聞いてくるリアに頷く、周りはそんな様子をニヤニヤと見てきて、時折含み笑いが聞こえるのが不愉快だ。
「最後に職業ですね。リアは剣士です。リョウは?」
「俺は回復術士だ」
どこから咽る声が聞こえた。おかしい事を言ったつもりは無いが。
リアは目をぱちくりさせながら、俺を見ている。もしかしてそんなに変なのか?
「背中に剣を差しているから、てっきり剣士と思っていました」
そう言って紙を書き直している。既に剣士と書いてしまっていたのだろう。
「あぁ、これか。これは剣に見えるがれっきとした杖だ」
またどこからか咽る声が聞こえた。
「兄ちゃん。実はさっき俺ケガをしちまってさ。コイツをヒールで治してくれよ」
先ほどの酔っぱらいのおっさんが声をかけて来た。
腕には確かに小さい切り傷がある。正直コイツの為にヒールをかけたくない気持ちもあるが、ここで渋れば俺の回復術士としての腕前が怪しまれる可能性もある。
仕方がない。ヒールをかけてやるか。
「おお、本当に治ったぜ」
その瞬間、冒険者ギルドで二度目の爆笑が起こった。
一体何なんだ? 回復術士というだけでそんなに笑われるのは流石に腹が立つ。
ゲーム内でも確かに回復術士を馬鹿にする奴らは居たが、ここまでじゃなかったはず。
「俺が回復術士なのは、そんなにおかしい事なのか?」
酔っぱらいに聞いても、多分まともに答えてくれないだろう。
なので俺は、リアに問い詰めてみた。
「その……回復術士は……女の子がやる職業です……」
リアは耳を垂れ下げながら、申し訳なさそうに目線を落としてそうつぶやいた。
回復術士は女の子がやる職業?
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