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第一章 パーティ結成編
ボッチの私と魔法職の少女
ベアトリクス・タブラは孤高なる女剣士と呼ばれていた。
王国の都市リーベルの冒険者ギルドには、多くの新人が集まって来る。
この街で経験を積み、そして各々が仲間を見つけて他の街へ旅立っていく。
私もそうやって背中を預けられる仲間を見つけて次の街に旅立つ予定だった。
3年間、仲間は見つけられなかった。
この街に来た当初の私は緊張していて、声をかけてくれた子達の誘いを断ってしまった。
――――君達は私の仲間になるには実力不足だ。
意味がわからない。そもそも私もその時新人だ。
一体何をしているのか自分でも分からない。
見栄を張りたかったのか、女ひとりなので舐められたくなかったのか。
そして私は街の市場でバイトをしながら冒険者としてソロでクエストをしていた。
近所の魔物の討伐からご近所さんの猫探し、血眼になって色々なクエストをクリアした。
多少実力がついてきた辺りでバイトを辞めて、1つ隣の街の危険なクエストを受けに行ってみたりもした。
そうこうしているうちに1年、2年と月日を重ね。
今では立派なBランクぼっち冒険者として、冒険者最初の街に居座る謎の存在となり果てていた。
そう、私は強くなりすぎた。
この街で新人が声を掛けるには強すぎて、他の街で欠員の募集に立候補するにはパーティとしての動きが経験不足。
所謂腫れ物扱い状態になってしまったのだった。
田舎に帰ろう。大見得切って出ていったのに、思い出話が一人で戦ってました、というのはあまりにもしょっぱい土産話だけど。
日々そんな思いを抱えながらも私はギルドに足繁く通っていた。
今日もギルドは新人の子達がキラキラとクエストボードを眺めていた。
地元から一緒にこの街へ来た仲間なのか、街で誘った子なのか。
1人ぼっちの私にはそのどちらでも羨ましい限りだ。
クエストボードに張り出されていない近場の高難易度クエストのリストを確認しようと受付に向かう途中、視界の端に1人の少女の姿が目に入った。
大きめの帽子は魔法使いがよく被る帽子と着るローブ。
そして少しくせのついた長い髪。
とても可愛らしい、まるで子犬のような人懐っこい横顔。
彼女は真剣な顔でクエストボードを見ていた。
一目惚れだった。
心臓を撃ち抜かれたような衝撃だった。
この子しかいないと思った。
3年間一人で活動してきたのは、彼女と出会うための試練だったんだと思った。
結婚したい。
私の身体が勝手に動いた。
「君1人?良かったらお姉さんとこの後遊ばない?」
私の口から出たのは、安いナンパみたいなセリフだった。
普通に声をかければ良かったのに!
突然のナンパに目を丸くしていた彼女が、少しの間の後、笑った。
「お姉さん面白いですね!じゃあご飯奢ってください」
私に向けられた彼女の笑顔に、私の思考回路は破壊されてしまった。
「も!もちろん!」
そうして私達はギルドに併設された食堂へ向かった。
時間はまだ昼頃だが荒くれた若者の冒険者グループが既に酒盛りを始めている。
やかましいその空間が私は嫌いだったが、少しでも早く目の前の彼女を口説き落としたかった私はなりふりを構っていられなかった。
席に案内された2人は、飲み物と簡単な料理を注文した。
向かい合って座った彼女がソワソワしている。
なので私から話を始めることにした。
「いきなり変な誘いをしてしまってすまない。私はベアトリクス・タブラだ。ベアと呼んでくれ。ソロの冒険者をしている」
いきなり愛称で呼ばせるのは攻めすぎだったか?
いや、ここは臆さず攻める!
「ベアさんですね!私はキリタニ・イチカ。イチカって呼んでください。」
キリタニ・イチカ……珍しい名前だ。
「この辺の国の名前ではないな。何処から来たんだ?」
「日本から来ました!」
私の知らない国の名前だった。
「あっ!日本っていうかその……へへへ」
困惑する私を見てはにかみ笑いを浮かべるその表情に釘付けになる。
可愛い!!!!
「そういえばベアさんってもしかして仲間探してたんですか?」
「えっ!?」
「だってお姉さんソロなんでしょ?女同士でナンパってこともないだろうし!」
先ほどのナンパを彼女はそう捉えたようだ。
この国で同性愛は別に珍しい事ではないのだが、彼女がいた国ではそうでもなかったのだろうか?
最初の勢いを失い、少し冷静になった私が。
――生涯の伴侶という名のパーティのお誘いでした。
なんて訂正ができるわけもなく、彼女の言うことに同意した。
「あっうんそうだな。ナカマ、サガシテイタンダ」
「ほんとですか!?私この世界に来たばかりなので!いきなり仲間が見つかるとは思いませんでした!」
イチカが目を輝かせる。
この世界?という言い回しが指すところはよく分からないが、私にも遂に仲間が出来るってことか?
3年間ぼっちだった私に!!!
下心で声をかけてよかった!
「神……」
「この国のいただきますですか?」
ちょうど料理が運ばれてきたタイミングだった。
「すまない。この国のいただきますは普通にいただきますだ」
「そうなんですね!いただきます!!!」
元気な挨拶とは裏腹に、貴族の娘の様に上品な食べ方だ。
おっと、あまりジロジロ見ているとイチカが食事に集中できないだろう。
私もイチカをおかずにご飯を食べることにした。
白米が、美味い。
そうして3年間ぼっちだった孤高なる剣士ベアトリクスは、下心丸出しで近づいた魔術師の少女、イチカとパーティを組んだ。
「ここが武器屋で、あっちが魔法道具屋だ。あっちの防具屋は戦士職の装備の質はいいが、魔術師のような軽装を扱う職ならば、その職業向けの店で装備を整えるといいだろう」
「ふむふむ」
食事が終わったあと、私はイチカに街の施設を案内していた。
どうやら本当にこの街に来たばかりのようで私の話を真剣に聞いていた。
「しかし宿屋の場所も知らないというのは、本当に今日来たばかりなのか?」
お金も持たず、寝泊まりする場所もないまま彼女はどうするつもりだったのだろうか。
というかこの街にどうやってたどり着いたのだろう。
もしや先ほどの名前は偽名で、実は貴族の娘が家出をして冒険者の真似事をしているのだろうか?
「はい!というかこの世界に来たばかりでお金も無いし国の情勢も何もわからないです!」
「国の情勢ね……」
私はイチカに簡単なこの国の成り立ちを話した。
人族の国であるクールル王国は魔族の国と戦争をしていた。
そしてその戦争を引き起こしていた魔王が世界に魔物を解き放った。
私達冒険者は、戦争の最前線や街の中を警備する騎士達の代わりに街の外の荒事を担当している組織だ。
「なるほど!よくある感じですね!」
「よくある?まあ人類の歴史を繙いていけば似たようなことはあったのかもしれないな」
「だいたいルールは分かったぜ!それじゃあこれから私達は手短なクエストをクリアしてレベルを上げて行くのが最優先って事ですね!」
「そうだな。簡単なクエストを受注してお互いの相性を確かめよう」
ということで私達はクエストを選ぶため、ギルドに戻ってきた。
「さっきも思ったけど文字が日本語だ……言語も同じだし融通が利くタイプで助かった」
「何をぶつぶつ言ってるんだ?」
「いえ!こっちの話です!」
私というこの街基準ではオーバースペックの前衛がいるとはいえ、イチカはまだ新人だ。慎重にクエストを選ばないと……。
「そういえばイチカはどういったことが出来るんだ?」
「どういったこと……ちょっと待ってくださいね」
そういうとイチカは謎の光る板を注視していた。
「えーっと、ファイアとかの攻撃魔法とあとエンチャントファイア、エンチャントサンダーが使えるみたいです」
「みたいって……でも攻撃と補助が両方使えるのはいいね」
新人だとだいたい攻撃魔法だけを覚えて、サポート呪文は僧侶などのヒーラー職に任せきりの魔術師は多い。
特に聖属性以外のエンチャントは魔術師の数少ないサポート面で僧侶に勝っている点だ。
「新人でエンチャント魔法が使えるなんて、イチカはセンスがあるな」
「今のはちょっと転移ものっぽい言い回しでいいですね!」
「それはよくわからんが」
「ふふふ。ただ攻撃魔法が初級っぽいのしか使えないみたいです」
少し落ち込んだ様子でそう言った。
自分の呪文なのに他人事な言い回しなのはなぜなのだろうか。
「初級魔法しか使えない事は気にしなくていい。この辺りの魔物には強力な呪文は必要ない。それに熟練の魔術師も取り回しの良さから普段は初級と中級の呪文しか使わないと聞く」
剣士だってド派手な剣技、もはや剣舞のような技もあると思うが、実戦でそんな動きをするものはいないと思う。
大体は近づいて、斬って、反撃が来る前に距離を取るという地味な戦いだ。
「ほんとだ、初級魔法の消費MPが3で現在のMPが66だから22回も魔法が撃てる!」
「そんな具体的な数字でわかるものなのか」
剣士である私には魔法の才能が無かったので魔法職の詳しい事情には疎い。
イチカに魔法職の基礎を教えてくれる師を探してあげたほうがいいのかもしれないな。
いやむしろ私が教本を読み込んで説明してあげるか?
素性を知らない人にイチカを預けたくない。これが独占欲というものか!
「そういえばベアさんとパーティになったからベアさんのステータスも見れる……うわ!レベル高!STRが3桁超えてる。HPも私の5倍はあるし……スキルは……」
「……基礎魔法が使えるならこれにしようか。」
イチカが板を見ながら自分の世界に入り込んでいるのでその間に私はクエストを選んだ。
「亡者系の魔物の討伐。僧侶がいた方が簡単だが炎魔法が使えれば問題はないだろう」
「やっぱり亡者は火とか回復が弱点なんですね」
私は頷いて受付へ向かった。
私が選んだ亡者の魔物『ワイト』は動くも遅く、掴まれても魔法職の腕力で振り解ける程の攻撃力しか持たない所謂雑魚モンスターだ。
雑魚なのに放っておくと群れて野宿をしている商人を襲ったりするので定期的に討伐のクエストが貼り出される。
スライム系統でも良かったが、下位種族ならワイトの方が魔法職の強みを活かしやすい。
「準備が出来たら出発しよう。お金がないと言っていていたからポーションとエーテルと解毒薬は私が用意しておく」
「ありがとうございます!」
お辞儀をした時に大きめの帽子がずり下がった。
慌てて元に戻そうとする仕草も可愛い。
こんな可愛い子とクエストに行く。
今日の朝までソロ冒険者だった私にそのことを話しても信じてくれないだろう。
きっと今日から私の灰色の人生は彩りを取り戻していく。
イチカに渡す道具を揃える為、二人で街を歩きながら私はそう予感していた。
王国の都市リーベルの冒険者ギルドには、多くの新人が集まって来る。
この街で経験を積み、そして各々が仲間を見つけて他の街へ旅立っていく。
私もそうやって背中を預けられる仲間を見つけて次の街に旅立つ予定だった。
3年間、仲間は見つけられなかった。
この街に来た当初の私は緊張していて、声をかけてくれた子達の誘いを断ってしまった。
――――君達は私の仲間になるには実力不足だ。
意味がわからない。そもそも私もその時新人だ。
一体何をしているのか自分でも分からない。
見栄を張りたかったのか、女ひとりなので舐められたくなかったのか。
そして私は街の市場でバイトをしながら冒険者としてソロでクエストをしていた。
近所の魔物の討伐からご近所さんの猫探し、血眼になって色々なクエストをクリアした。
多少実力がついてきた辺りでバイトを辞めて、1つ隣の街の危険なクエストを受けに行ってみたりもした。
そうこうしているうちに1年、2年と月日を重ね。
今では立派なBランクぼっち冒険者として、冒険者最初の街に居座る謎の存在となり果てていた。
そう、私は強くなりすぎた。
この街で新人が声を掛けるには強すぎて、他の街で欠員の募集に立候補するにはパーティとしての動きが経験不足。
所謂腫れ物扱い状態になってしまったのだった。
田舎に帰ろう。大見得切って出ていったのに、思い出話が一人で戦ってました、というのはあまりにもしょっぱい土産話だけど。
日々そんな思いを抱えながらも私はギルドに足繁く通っていた。
今日もギルドは新人の子達がキラキラとクエストボードを眺めていた。
地元から一緒にこの街へ来た仲間なのか、街で誘った子なのか。
1人ぼっちの私にはそのどちらでも羨ましい限りだ。
クエストボードに張り出されていない近場の高難易度クエストのリストを確認しようと受付に向かう途中、視界の端に1人の少女の姿が目に入った。
大きめの帽子は魔法使いがよく被る帽子と着るローブ。
そして少しくせのついた長い髪。
とても可愛らしい、まるで子犬のような人懐っこい横顔。
彼女は真剣な顔でクエストボードを見ていた。
一目惚れだった。
心臓を撃ち抜かれたような衝撃だった。
この子しかいないと思った。
3年間一人で活動してきたのは、彼女と出会うための試練だったんだと思った。
結婚したい。
私の身体が勝手に動いた。
「君1人?良かったらお姉さんとこの後遊ばない?」
私の口から出たのは、安いナンパみたいなセリフだった。
普通に声をかければ良かったのに!
突然のナンパに目を丸くしていた彼女が、少しの間の後、笑った。
「お姉さん面白いですね!じゃあご飯奢ってください」
私に向けられた彼女の笑顔に、私の思考回路は破壊されてしまった。
「も!もちろん!」
そうして私達はギルドに併設された食堂へ向かった。
時間はまだ昼頃だが荒くれた若者の冒険者グループが既に酒盛りを始めている。
やかましいその空間が私は嫌いだったが、少しでも早く目の前の彼女を口説き落としたかった私はなりふりを構っていられなかった。
席に案内された2人は、飲み物と簡単な料理を注文した。
向かい合って座った彼女がソワソワしている。
なので私から話を始めることにした。
「いきなり変な誘いをしてしまってすまない。私はベアトリクス・タブラだ。ベアと呼んでくれ。ソロの冒険者をしている」
いきなり愛称で呼ばせるのは攻めすぎだったか?
いや、ここは臆さず攻める!
「ベアさんですね!私はキリタニ・イチカ。イチカって呼んでください。」
キリタニ・イチカ……珍しい名前だ。
「この辺の国の名前ではないな。何処から来たんだ?」
「日本から来ました!」
私の知らない国の名前だった。
「あっ!日本っていうかその……へへへ」
困惑する私を見てはにかみ笑いを浮かべるその表情に釘付けになる。
可愛い!!!!
「そういえばベアさんってもしかして仲間探してたんですか?」
「えっ!?」
「だってお姉さんソロなんでしょ?女同士でナンパってこともないだろうし!」
先ほどのナンパを彼女はそう捉えたようだ。
この国で同性愛は別に珍しい事ではないのだが、彼女がいた国ではそうでもなかったのだろうか?
最初の勢いを失い、少し冷静になった私が。
――生涯の伴侶という名のパーティのお誘いでした。
なんて訂正ができるわけもなく、彼女の言うことに同意した。
「あっうんそうだな。ナカマ、サガシテイタンダ」
「ほんとですか!?私この世界に来たばかりなので!いきなり仲間が見つかるとは思いませんでした!」
イチカが目を輝かせる。
この世界?という言い回しが指すところはよく分からないが、私にも遂に仲間が出来るってことか?
3年間ぼっちだった私に!!!
下心で声をかけてよかった!
「神……」
「この国のいただきますですか?」
ちょうど料理が運ばれてきたタイミングだった。
「すまない。この国のいただきますは普通にいただきますだ」
「そうなんですね!いただきます!!!」
元気な挨拶とは裏腹に、貴族の娘の様に上品な食べ方だ。
おっと、あまりジロジロ見ているとイチカが食事に集中できないだろう。
私もイチカをおかずにご飯を食べることにした。
白米が、美味い。
そうして3年間ぼっちだった孤高なる剣士ベアトリクスは、下心丸出しで近づいた魔術師の少女、イチカとパーティを組んだ。
「ここが武器屋で、あっちが魔法道具屋だ。あっちの防具屋は戦士職の装備の質はいいが、魔術師のような軽装を扱う職ならば、その職業向けの店で装備を整えるといいだろう」
「ふむふむ」
食事が終わったあと、私はイチカに街の施設を案内していた。
どうやら本当にこの街に来たばかりのようで私の話を真剣に聞いていた。
「しかし宿屋の場所も知らないというのは、本当に今日来たばかりなのか?」
お金も持たず、寝泊まりする場所もないまま彼女はどうするつもりだったのだろうか。
というかこの街にどうやってたどり着いたのだろう。
もしや先ほどの名前は偽名で、実は貴族の娘が家出をして冒険者の真似事をしているのだろうか?
「はい!というかこの世界に来たばかりでお金も無いし国の情勢も何もわからないです!」
「国の情勢ね……」
私はイチカに簡単なこの国の成り立ちを話した。
人族の国であるクールル王国は魔族の国と戦争をしていた。
そしてその戦争を引き起こしていた魔王が世界に魔物を解き放った。
私達冒険者は、戦争の最前線や街の中を警備する騎士達の代わりに街の外の荒事を担当している組織だ。
「なるほど!よくある感じですね!」
「よくある?まあ人類の歴史を繙いていけば似たようなことはあったのかもしれないな」
「だいたいルールは分かったぜ!それじゃあこれから私達は手短なクエストをクリアしてレベルを上げて行くのが最優先って事ですね!」
「そうだな。簡単なクエストを受注してお互いの相性を確かめよう」
ということで私達はクエストを選ぶため、ギルドに戻ってきた。
「さっきも思ったけど文字が日本語だ……言語も同じだし融通が利くタイプで助かった」
「何をぶつぶつ言ってるんだ?」
「いえ!こっちの話です!」
私というこの街基準ではオーバースペックの前衛がいるとはいえ、イチカはまだ新人だ。慎重にクエストを選ばないと……。
「そういえばイチカはどういったことが出来るんだ?」
「どういったこと……ちょっと待ってくださいね」
そういうとイチカは謎の光る板を注視していた。
「えーっと、ファイアとかの攻撃魔法とあとエンチャントファイア、エンチャントサンダーが使えるみたいです」
「みたいって……でも攻撃と補助が両方使えるのはいいね」
新人だとだいたい攻撃魔法だけを覚えて、サポート呪文は僧侶などのヒーラー職に任せきりの魔術師は多い。
特に聖属性以外のエンチャントは魔術師の数少ないサポート面で僧侶に勝っている点だ。
「新人でエンチャント魔法が使えるなんて、イチカはセンスがあるな」
「今のはちょっと転移ものっぽい言い回しでいいですね!」
「それはよくわからんが」
「ふふふ。ただ攻撃魔法が初級っぽいのしか使えないみたいです」
少し落ち込んだ様子でそう言った。
自分の呪文なのに他人事な言い回しなのはなぜなのだろうか。
「初級魔法しか使えない事は気にしなくていい。この辺りの魔物には強力な呪文は必要ない。それに熟練の魔術師も取り回しの良さから普段は初級と中級の呪文しか使わないと聞く」
剣士だってド派手な剣技、もはや剣舞のような技もあると思うが、実戦でそんな動きをするものはいないと思う。
大体は近づいて、斬って、反撃が来る前に距離を取るという地味な戦いだ。
「ほんとだ、初級魔法の消費MPが3で現在のMPが66だから22回も魔法が撃てる!」
「そんな具体的な数字でわかるものなのか」
剣士である私には魔法の才能が無かったので魔法職の詳しい事情には疎い。
イチカに魔法職の基礎を教えてくれる師を探してあげたほうがいいのかもしれないな。
いやむしろ私が教本を読み込んで説明してあげるか?
素性を知らない人にイチカを預けたくない。これが独占欲というものか!
「そういえばベアさんとパーティになったからベアさんのステータスも見れる……うわ!レベル高!STRが3桁超えてる。HPも私の5倍はあるし……スキルは……」
「……基礎魔法が使えるならこれにしようか。」
イチカが板を見ながら自分の世界に入り込んでいるのでその間に私はクエストを選んだ。
「亡者系の魔物の討伐。僧侶がいた方が簡単だが炎魔法が使えれば問題はないだろう」
「やっぱり亡者は火とか回復が弱点なんですね」
私は頷いて受付へ向かった。
私が選んだ亡者の魔物『ワイト』は動くも遅く、掴まれても魔法職の腕力で振り解ける程の攻撃力しか持たない所謂雑魚モンスターだ。
雑魚なのに放っておくと群れて野宿をしている商人を襲ったりするので定期的に討伐のクエストが貼り出される。
スライム系統でも良かったが、下位種族ならワイトの方が魔法職の強みを活かしやすい。
「準備が出来たら出発しよう。お金がないと言っていていたからポーションとエーテルと解毒薬は私が用意しておく」
「ありがとうございます!」
お辞儀をした時に大きめの帽子がずり下がった。
慌てて元に戻そうとする仕草も可愛い。
こんな可愛い子とクエストに行く。
今日の朝までソロ冒険者だった私にそのことを話しても信じてくれないだろう。
きっと今日から私の灰色の人生は彩りを取り戻していく。
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