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第一章 パーティ結成編
第3話 欲望まみれな私
程なくして私達は目的地であるワイトの巣に到着した。
今回のワイトの巣はリーベル近郊にある巨大な池の近くにある見晴らしのよい所である。
この場所は昔、王国騎士団の訓練施設があった場所で、老朽化や魔物の増加の影響を受けて放棄された場所である。
ワイトの弱点のひとつである炎属性は酸欠の恐れのある洞窟や引火しやすい森の中では使いにくいので魔法職のメンバーがいるパーティにとってはいい立地と言える。
現在私達は現場から少し離れた所で敵の様子を伺いながら作戦を立てている。
「数は隠れているであろう伏兵も含めておおよそ15体程、想定よりも多そうだ」
私が一人で切り込むというのが最善ではある。
しかしそれだと道中と何も変わらない。
流石に本番である戦闘はイチカに活躍の場を譲りたいが。
「敵が集まっている場所、あそこに君の炎の一撃を撃ち込んで敵を撹乱しよう」
「……はい」
イチカの元気がない。
先ほどの1件をまだ気にしているのだろうか?
「どうかしたか?」
「戦闘前にすみません。ただちょっと自信をなくしてしまって」
「さっきの事なら気にしなくていい。冒険者とは血気盛んなくらいでちょうどいいのだから」
「いえ……私の我がままでベアさんに怪我をさせた事もそうなんですけど……」
歯切れが悪い。
「どうしたんだ?気になることがあるなら話してみろ」
「その……実はさっきの戦闘で私の魔法が思ったよりも弱かった事がちょっとショックで……」
「ふむ」
確かに炎以外の魔法の威力はかなりしょっぱいものだった。
だが今回必要な魔法は炎の魔法だ。他の種類の魔法は後々訓練して強化していけばいいのではないだろうか。
「それで、私のスキル、防御力1%アップとかの恐らく装備に付与されているであろう付帯効果とかもあって詳細はちゃんと見ていなかったんですが……ちょっと気になって詳しく確認してみたんです」
「さっき言っていた鑑定モドキか」
「はい。調べていたらひとつ気になるパッシブスキルがあって、味方がピンチの時魔法攻撃力が120%アップというスキルを持っていたんです」
「仲間がピンチの時に覚醒する。まるでおとぎ話に出てくる勇者のような力を持っているんだな」
魔王と戦う勇者のおとぎ話、確かその物語の主人公である勇者もそんな力を持っているという設定だったはずだ。
「そうだったら良かったんですけど『効果発動時以外のINTが50%ダウンする』というデメリットがあるみたいなんです」
「デメリット……なるほどな」
つまり火事場以外では全力が出せないという事か。
だからさっきの戦闘で魔法がクリーンヒットしたのに敵を倒せなかったのか。
「ごめんなさい!!!本当は気づいた時に話したかったんですけど言い出せなくって」
「むしろ今言ってくれて助かったよ」
そう言って私は剣を鞘から抜いた。
「魔力が半減されているという事なら後で装備を買い揃えて能力を底上げすればいい。それに私がピンチの時には君が助けてくれるんだろ?」
私は1歩前に踏み出し、頭だけ振り向いてイチカに視線を送った。
「背中を預ける相棒としてこれ程心強いことはない」
……決まった。
完璧なフォロー。ついでに後で装備を一緒に揃えに行くデートの予定を立てる布石まで打った。
私が女なら私に惚れちゃうね。
女だったわ。
私はイチカの返事を待たずにワイトの群れに突撃した。
外周で見張りの真似事をしている3体のワイトの内、1番手前にいた個体を斬り裂く。
そして残りの2体の頭を掴んでお互いの頭部を叩きつける。
「ふっ!」
見張りを倒した私は勢いをそのままに広場に突撃する。
1対多は避けるべきだが、流石にこいつらに手こずる事もないだろう。
広間に突撃し2体3体と斬り捨てていくと私に恐れをなした敵がバラバラに逃げ始めた。
勢いで突っ込んだので逃げる敵を追う方法を考えてなかった。
「ファイア!ファイア!」
カチカチと骨を鳴らしながら逃げようとしているワイトをイチカが魔法で追い討ちしてくれた。
ゴブリンに使用した時のような威力ではなかったが、それでも弱点属性の攻撃を背中に食らい戦闘不能になる。
「イチカ、ナイスだ!」
仲間っていいな!これが連携!!!
「ファイア!ファイア!ベアさん!作戦会議してたのに話が終わる前に突っ込んで行くのは脳筋過ぎます!」
イチカは距離の離れた私にも届くくらいの声量、というか半分怒声のような声で私に文句を言っていた。
「そうだイチカ!冒険者はこのくらい無茶で元気なくらいがちょうどいいんだ!!!」
私は笑ってそう言いながら残りのワイトを斬り伏せた。
およそ17体ほどで敵は全滅したようだ。
ギルドから支給される冒険者カードからクエストクリア時に流れる軽快な音が鳴った。
「イチカ!敵を殲滅したみたいだ!よくやったな!」
「お疲れ様です!っていうか冒険者カードから変な音が鳴ったんですけど」
「クエストをクリアしたんだから音も出るだろう」
「どういう仕組みなんですか……」
そういいながらイチカは冒険者カードを見ていた。
仕組みはよく分からないが何らかの魔法的な細工がされているんだろう。
「何はともあれ、無事クエストクリアだ。初めてのクエストはどうだった?」
「う~ん」
イチカが難しい顔をしている。
嫌な予感がする。
その様子を見ている私は動悸が激しくなる。
「なんとかクリアは出来たんですけど……私はベアさんの脚を引っ張っちゃって……」
やめてくれ。
その先は……聞きたくない。
「私じゃベアさんのパーティに参加するには力不足かも……」
「イチカ!」
イチカの声を遮るように私の口から心の声が漏れ出た。
剣を握りしめる手が動揺でカタカタと震えていた。
目の前が真っ暗になりそうだ。
「そんな悲しいこと言わないでくれ……君は……初めて出来た私の仲間なんだ……3年間たった1人だった私に出来た初めての……」
イチカに近づいた私に下心は、ある。
というか下心しか私にはない。
パーティ、相棒、恋人。
欲望塗れの私はもう、何もかも諦めたくない。全てを手に入れたい。
私はもうそういう欲求に支配されてしまっている。
自分でも、出会ったばかりの彼女にこんな気持ちを向けるのはおかしいというのはわかっている。
それでも一度知ってしまった気持ちはもう止めることは出来なかった。
「だから私と一緒にいてくれ……イチカ」
「ベアさん……」
情けない顔をしているだろう私を見て、イチカは困った顔をしていた。
やはり……ダメか。
パーティは解散、街で出会っても気まずい挨拶を交わすだけ。
イチカはすぐに別の仲間を見つけるだろう。
その様子を私は寂しく見守るんだ……。
やっぱり田舎に帰ろう。
「……ふふっ」
しばらくの沈黙の末、イチカの口から笑みが零れた。
「ふふふ……アハハハハ!!!!」
「イ……イチカ?」
「ごめんなさい!ただクールな雰囲気のベアさんからそんなよわよわなセリフが出るなんて」
イチカは腹を抱えて笑っている。
悲しみに暮れていた私を見て笑うイチカに少しムッと来た。
「少し笑いすぎじゃないか?私は真剣に……」
「そうです!真剣なんです!真剣にあんな告白みたいなお誘いされたら断れないです!!!」
イチカが左手で目元の涙を拭いながら右手を差し出してきた。
「私も勝手に心が折れてすみません!こんな弱くて性格の悪い私で良ければこれからもよろしくお願いします!」
欲望に染まった私の手は、私がイチカの言葉を理解するよりも早く彼女の手を取っていた。
「ありがとう……これからもよろしく頼む……」
「はい!よろしくお願いします!ベアさん!」
2人は日の傾き始めた空の下、固い握手を交わした。
これが、私達のパーティの始まりであった。
今回のワイトの巣はリーベル近郊にある巨大な池の近くにある見晴らしのよい所である。
この場所は昔、王国騎士団の訓練施設があった場所で、老朽化や魔物の増加の影響を受けて放棄された場所である。
ワイトの弱点のひとつである炎属性は酸欠の恐れのある洞窟や引火しやすい森の中では使いにくいので魔法職のメンバーがいるパーティにとってはいい立地と言える。
現在私達は現場から少し離れた所で敵の様子を伺いながら作戦を立てている。
「数は隠れているであろう伏兵も含めておおよそ15体程、想定よりも多そうだ」
私が一人で切り込むというのが最善ではある。
しかしそれだと道中と何も変わらない。
流石に本番である戦闘はイチカに活躍の場を譲りたいが。
「敵が集まっている場所、あそこに君の炎の一撃を撃ち込んで敵を撹乱しよう」
「……はい」
イチカの元気がない。
先ほどの1件をまだ気にしているのだろうか?
「どうかしたか?」
「戦闘前にすみません。ただちょっと自信をなくしてしまって」
「さっきの事なら気にしなくていい。冒険者とは血気盛んなくらいでちょうどいいのだから」
「いえ……私の我がままでベアさんに怪我をさせた事もそうなんですけど……」
歯切れが悪い。
「どうしたんだ?気になることがあるなら話してみろ」
「その……実はさっきの戦闘で私の魔法が思ったよりも弱かった事がちょっとショックで……」
「ふむ」
確かに炎以外の魔法の威力はかなりしょっぱいものだった。
だが今回必要な魔法は炎の魔法だ。他の種類の魔法は後々訓練して強化していけばいいのではないだろうか。
「それで、私のスキル、防御力1%アップとかの恐らく装備に付与されているであろう付帯効果とかもあって詳細はちゃんと見ていなかったんですが……ちょっと気になって詳しく確認してみたんです」
「さっき言っていた鑑定モドキか」
「はい。調べていたらひとつ気になるパッシブスキルがあって、味方がピンチの時魔法攻撃力が120%アップというスキルを持っていたんです」
「仲間がピンチの時に覚醒する。まるでおとぎ話に出てくる勇者のような力を持っているんだな」
魔王と戦う勇者のおとぎ話、確かその物語の主人公である勇者もそんな力を持っているという設定だったはずだ。
「そうだったら良かったんですけど『効果発動時以外のINTが50%ダウンする』というデメリットがあるみたいなんです」
「デメリット……なるほどな」
つまり火事場以外では全力が出せないという事か。
だからさっきの戦闘で魔法がクリーンヒットしたのに敵を倒せなかったのか。
「ごめんなさい!!!本当は気づいた時に話したかったんですけど言い出せなくって」
「むしろ今言ってくれて助かったよ」
そう言って私は剣を鞘から抜いた。
「魔力が半減されているという事なら後で装備を買い揃えて能力を底上げすればいい。それに私がピンチの時には君が助けてくれるんだろ?」
私は1歩前に踏み出し、頭だけ振り向いてイチカに視線を送った。
「背中を預ける相棒としてこれ程心強いことはない」
……決まった。
完璧なフォロー。ついでに後で装備を一緒に揃えに行くデートの予定を立てる布石まで打った。
私が女なら私に惚れちゃうね。
女だったわ。
私はイチカの返事を待たずにワイトの群れに突撃した。
外周で見張りの真似事をしている3体のワイトの内、1番手前にいた個体を斬り裂く。
そして残りの2体の頭を掴んでお互いの頭部を叩きつける。
「ふっ!」
見張りを倒した私は勢いをそのままに広場に突撃する。
1対多は避けるべきだが、流石にこいつらに手こずる事もないだろう。
広間に突撃し2体3体と斬り捨てていくと私に恐れをなした敵がバラバラに逃げ始めた。
勢いで突っ込んだので逃げる敵を追う方法を考えてなかった。
「ファイア!ファイア!」
カチカチと骨を鳴らしながら逃げようとしているワイトをイチカが魔法で追い討ちしてくれた。
ゴブリンに使用した時のような威力ではなかったが、それでも弱点属性の攻撃を背中に食らい戦闘不能になる。
「イチカ、ナイスだ!」
仲間っていいな!これが連携!!!
「ファイア!ファイア!ベアさん!作戦会議してたのに話が終わる前に突っ込んで行くのは脳筋過ぎます!」
イチカは距離の離れた私にも届くくらいの声量、というか半分怒声のような声で私に文句を言っていた。
「そうだイチカ!冒険者はこのくらい無茶で元気なくらいがちょうどいいんだ!!!」
私は笑ってそう言いながら残りのワイトを斬り伏せた。
およそ17体ほどで敵は全滅したようだ。
ギルドから支給される冒険者カードからクエストクリア時に流れる軽快な音が鳴った。
「イチカ!敵を殲滅したみたいだ!よくやったな!」
「お疲れ様です!っていうか冒険者カードから変な音が鳴ったんですけど」
「クエストをクリアしたんだから音も出るだろう」
「どういう仕組みなんですか……」
そういいながらイチカは冒険者カードを見ていた。
仕組みはよく分からないが何らかの魔法的な細工がされているんだろう。
「何はともあれ、無事クエストクリアだ。初めてのクエストはどうだった?」
「う~ん」
イチカが難しい顔をしている。
嫌な予感がする。
その様子を見ている私は動悸が激しくなる。
「なんとかクリアは出来たんですけど……私はベアさんの脚を引っ張っちゃって……」
やめてくれ。
その先は……聞きたくない。
「私じゃベアさんのパーティに参加するには力不足かも……」
「イチカ!」
イチカの声を遮るように私の口から心の声が漏れ出た。
剣を握りしめる手が動揺でカタカタと震えていた。
目の前が真っ暗になりそうだ。
「そんな悲しいこと言わないでくれ……君は……初めて出来た私の仲間なんだ……3年間たった1人だった私に出来た初めての……」
イチカに近づいた私に下心は、ある。
というか下心しか私にはない。
パーティ、相棒、恋人。
欲望塗れの私はもう、何もかも諦めたくない。全てを手に入れたい。
私はもうそういう欲求に支配されてしまっている。
自分でも、出会ったばかりの彼女にこんな気持ちを向けるのはおかしいというのはわかっている。
それでも一度知ってしまった気持ちはもう止めることは出来なかった。
「だから私と一緒にいてくれ……イチカ」
「ベアさん……」
情けない顔をしているだろう私を見て、イチカは困った顔をしていた。
やはり……ダメか。
パーティは解散、街で出会っても気まずい挨拶を交わすだけ。
イチカはすぐに別の仲間を見つけるだろう。
その様子を私は寂しく見守るんだ……。
やっぱり田舎に帰ろう。
「……ふふっ」
しばらくの沈黙の末、イチカの口から笑みが零れた。
「ふふふ……アハハハハ!!!!」
「イ……イチカ?」
「ごめんなさい!ただクールな雰囲気のベアさんからそんなよわよわなセリフが出るなんて」
イチカは腹を抱えて笑っている。
悲しみに暮れていた私を見て笑うイチカに少しムッと来た。
「少し笑いすぎじゃないか?私は真剣に……」
「そうです!真剣なんです!真剣にあんな告白みたいなお誘いされたら断れないです!!!」
イチカが左手で目元の涙を拭いながら右手を差し出してきた。
「私も勝手に心が折れてすみません!こんな弱くて性格の悪い私で良ければこれからもよろしくお願いします!」
欲望に染まった私の手は、私がイチカの言葉を理解するよりも早く彼女の手を取っていた。
「ありがとう……これからもよろしく頼む……」
「はい!よろしくお願いします!ベアさん!」
2人は日の傾き始めた空の下、固い握手を交わした。
これが、私達のパーティの始まりであった。
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