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「流石よねー、苦木君。営業成績も良いらしいし、あの無愛想加減なら浮気もしなそうじゃない?狙ってる子多いと思うわー」
ムクドリ達を難なくかわして帰っていく後ろ姿を眺めつつ、FGMが楽しそうに声を掛けてきた。私がそんなつもりないのなんて百も承知のくせに。
「ですねー。ま、私には関係ないですけど」
だからクソデカボイスでちゃんと宣言しておく。こういう気遣いもできるのだから、ほんと流石フェアリーゴッドマザーというしかない。やっぱり私の名付けセンスは秀逸だと自画自賛して、朝の準備の続きを再開した。
労務が総務が入っているオフィスは女子率と男性の高齢化が著しいのはどの会社でも同じなのだろうか。私が所属するグループは小さいのでFGMと私と40オーバーの男性が5人。下っ端はもちろん私になるので、誰かのお土産を配るなんて雑務は当然、私が担当になる。
「お土産なんて共有スペースに置いて『ご自由にどうぞ』って書いとけよ」と思わないでもないけれど、おじさま達にはその文化はないので仕方ない。今日も、昨日まで出張に行っていた『無害』石井課長のお土産を部署内に配っていると、ムクドリAが声をかけてきた。
「ね、さっき苦木さん来てたでしょ?あれって何の用だったの?」
「あー、ちょっと申請手続きで書類の提出が必要で。お忙しいのに態々持ってきてくださったんです」
「そうなんだー。それってさ、何の書類?もしかして個人情報とか、わかっちゃう系?」
そうだよ。だって労務なんだから、誰かを扶養に入れますとか出しますとか個人情報バリバリに決まってるよ。って言葉はもちろん、心の中だけ。この会社の人事は鉄壁だから、情報漏らしてくれないもんね。どうにかって思ったら労務が1番手っ取り早いよねって言葉も。
「まあ、労務ですからねー。あ、ここの席の方って今日はお休みですか?」
「あ、ああ。今日は有給。で、あの」
「そうなんですね、じゃあ机に置いて置くので、出勤してらしたらご説明お願いします」
言いかけてる事には気付かないふりで、Aを振り切る。ついでにそれを見ていたにも関わらず、果敢に挑戦してきたBも瞬殺。
大体、こうやって情報聞き出したいなら普段からもうちょっと態度どうにかしとけよ。もちろん、そんな親切な指摘はしないけど。
度胸がないのか、直接言い出せなくて目線で聞いてきたムクドリCは視線を合わせないことで回避して配り切り、席に戻るとFGMが「お疲れ様。ふふっ」と堪えきれない笑いと一緒に出迎えてくれた。
「分かってたなら代わってくれてもよかったんですよ?」
「まさか。それに私が代わったら、それはそれでまた色々言われるでしょ?」
「それは・・・そうです、けど」
同じグループで一緒に仕事する女性がFGMって事はこの会社に来てからの1番の幸運かも、とは思う。どんな良い人だって、所詮男性はこういう空気には気付けないし。とりあえず笑い続けるFGMを冗談めかして軽く睨んでから自分の仕事に戻った。
ムクドリ達を難なくかわして帰っていく後ろ姿を眺めつつ、FGMが楽しそうに声を掛けてきた。私がそんなつもりないのなんて百も承知のくせに。
「ですねー。ま、私には関係ないですけど」
だからクソデカボイスでちゃんと宣言しておく。こういう気遣いもできるのだから、ほんと流石フェアリーゴッドマザーというしかない。やっぱり私の名付けセンスは秀逸だと自画自賛して、朝の準備の続きを再開した。
労務が総務が入っているオフィスは女子率と男性の高齢化が著しいのはどの会社でも同じなのだろうか。私が所属するグループは小さいのでFGMと私と40オーバーの男性が5人。下っ端はもちろん私になるので、誰かのお土産を配るなんて雑務は当然、私が担当になる。
「お土産なんて共有スペースに置いて『ご自由にどうぞ』って書いとけよ」と思わないでもないけれど、おじさま達にはその文化はないので仕方ない。今日も、昨日まで出張に行っていた『無害』石井課長のお土産を部署内に配っていると、ムクドリAが声をかけてきた。
「ね、さっき苦木さん来てたでしょ?あれって何の用だったの?」
「あー、ちょっと申請手続きで書類の提出が必要で。お忙しいのに態々持ってきてくださったんです」
「そうなんだー。それってさ、何の書類?もしかして個人情報とか、わかっちゃう系?」
そうだよ。だって労務なんだから、誰かを扶養に入れますとか出しますとか個人情報バリバリに決まってるよ。って言葉はもちろん、心の中だけ。この会社の人事は鉄壁だから、情報漏らしてくれないもんね。どうにかって思ったら労務が1番手っ取り早いよねって言葉も。
「まあ、労務ですからねー。あ、ここの席の方って今日はお休みですか?」
「あ、ああ。今日は有給。で、あの」
「そうなんですね、じゃあ机に置いて置くので、出勤してらしたらご説明お願いします」
言いかけてる事には気付かないふりで、Aを振り切る。ついでにそれを見ていたにも関わらず、果敢に挑戦してきたBも瞬殺。
大体、こうやって情報聞き出したいなら普段からもうちょっと態度どうにかしとけよ。もちろん、そんな親切な指摘はしないけど。
度胸がないのか、直接言い出せなくて目線で聞いてきたムクドリCは視線を合わせないことで回避して配り切り、席に戻るとFGMが「お疲れ様。ふふっ」と堪えきれない笑いと一緒に出迎えてくれた。
「分かってたなら代わってくれてもよかったんですよ?」
「まさか。それに私が代わったら、それはそれでまた色々言われるでしょ?」
「それは・・・そうです、けど」
同じグループで一緒に仕事する女性がFGMって事はこの会社に来てからの1番の幸運かも、とは思う。どんな良い人だって、所詮男性はこういう空気には気付けないし。とりあえず笑い続けるFGMを冗談めかして軽く睨んでから自分の仕事に戻った。
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