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機械はいつも通りに動けぬ男から商品を搾り取る

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左右の手首と肘、足首と太もも、そして首と腰の部分を台へと遊び無く縫い付ける内側に黒色のクッションがあてがわれた金属製の器具は、今日もいつものように男の自由を奪い取っていた。

「あぉっ……おぁ、あぉぉっ!」

昨日も、一昨日も、その更に前にも目覚めと同時に味わわされた厳重な拘束達による圧迫に絶望と焦りを募らせながら、男はうつ伏せの体勢で固められ両手両足を×字に伸ばさせられた裸体をじたばたと暴れさせる。顔の下半分を覆う形で装着された黒革のマスクと一体になっている太く硬い透明なチューブを噛まされ、チューブを通した口呼吸を強要された上にチューブ内へと流し込まれる淫猥な薬品混じりの食事の摂取を拒絶出来なくされた男は、口から伸びたチューブの先にある箱型の機械が起動する前に逃れなければという焦燥を膨らませつつ、裸体を縛める拘束達との格闘を一心不乱に繰り返す。
しかし、男が幾らなりふり構わずに暴れようとも、頑丈な拘束具達はビクともしない。男が言葉にならぬ呻きに怯えと恐れを滲ませながら雄々しき筋肉に覆われた裸体に力を込めても、全身を台に固定する金属達は外れる気配すら見せない。
生身では決して振り払えぬ拘束達に身動きを完全に封じられた哀れな男は、必死の足掻きも虚しく今日も抗えぬ裸体をいつも通りの時刻に起動した眼前に位置する箱型の機械に苛まれるしか無い。口内へと続いているチューブに流し込まれる媚薬混じりの空気と、少量ずつ注入される栄養剤と媚薬と精液の製造量を増幅させる薬品が混ざり合った液体を体内へと取り込まされながら、チューブが接続されている場所とは違う面から伸びた口の物より細いチューブやコードの先にある残忍な責め具に隠したくても隠せぬ恥部を嬲られるしか無い。
わずかに開かされた足の間に取り付けられた金属の土台を用いて無防備な尻穴を狙い撃つ形で設置された男根を模した極太の張型と、丸出しの男根をすっぽりと囲う形で与えられた透明な筒を毟り取りたくても毟り取れない無様な男は、それらの器具に電力を送り淫らな弱点を甘く追い詰める動きを行わせる機械の思い通りに望まぬ絶頂を何度も何度も迎えさせられるしか無い。
行動を制限され、しゃべることさえも不可能にされた男はもう、設定した時刻に従って残酷に起動し始めた機械によって生み出された口と、男根と、尻穴の淫獄にただただ悶え苦しみ、堪えきれずに噴き出させた精液を男根全体を吸い上げている筒の機構によって為す術無く採取されるしか無いのだ。

「あぉぉぉぉーっ!? おぁっ、うぁぉぉぉぉっ!!」

嫌という程に吸わされ、飲まされた薬品達が口内をじわじわといたぶり男の裸体を内側から狂わせていく。
荒々しい前後運動を開始した張型が男の尻穴を奥深くまで掻き毟り、捕らわれた当初には想像すらもしていなかった雌の悦楽を容赦無く男にもたらしていく。
小刻みな振動を絶えず維持する非道な筒が、内部で苦しげに脈打ち早くも一回目の射精に至っている男根に吸い付きながら、普通の人間を大きく超える量と回数の射精を可能にされた男に次の射精を促しつつ、吐き出された精液を自身に繋がっているチューブを用いて本体である箱型の機械へと移動させていく。
何もかもが気持ち良い。まだ始まったばかりなのに、脳が破裂しそうなくらいに気持ちが良い。このまま続けられたら、今日もまた心と身体を淫猥に突き崩されてしまう。反抗心と人間としての理性を昨日以上に壊されながら、意識を失うまで絶頂に次ぐ絶頂へと押し上げられてしまう。
そんな戦慄を覚えながら一層激しく身をよじらせても、男を取り巻く状況は変わらない。冷酷な敵に捕獲され、敵の組織を潤す狂気的な商品として精液を搾り取られる惨めな男の立場は、どんなに頑張っても覆せない。
敵の手に堕ちた日から衣服の代わりに拘束を纏わされ、起きている間はほぼ常に淫蕩な地獄を加えられている男はもはや、憎い敵の意に沿ってイきまくらされるだけの、高値で売れる商品を作り出す生きた装置でしか無いのだ。

「うがっ、ご、むぁぁぁんっ! うふっ、うもあぁ、んぉっ、あぉぉぉぉぉんっ!!」

休み無く思考に浮かび上がるイくの言葉と、否定さえ許されぬ暴力的な気持ちいいの感情に翻弄されながらどうすることも出来ずに延々と絶頂に導かれる男の絶叫は、激しすぎる快楽を持ってしても意識を現実に引き戻すことが叶わなくなる形での失神が訪れる時まで外部に音が漏れ出ることも無い一人きりの部屋に哀しく響き渡り、イき地獄に陥らされた男をより濃い絶望の方向へと追い詰めていくのだった。
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