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滑稽なペットは痴態を予定通りに味わわれる

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望まぬ快楽に翻弄させられたくなどない。恥辱への敗北を拒んでいた男の心は、自由を奪われた裸体を絶え間無く襲う甘く容赦の無い責め苦によって跡形も無く突き崩されてしまった。
左右の手首に地下室の天井から伸びた鎖に先にある黒革製の枷を嵌められ、足首にも同様に床と鎖で繋がった枷を施された男の身体は、断続的に押し寄せる悦びの波に為す術無く流されるしか無い。視界を閉ざす黒革の目隠しを外したくても外れず、口に噛まされた黒い棒状の枷を毟り取ることも出来ず、餌と称して与えられる飲食物に混ぜられた媚薬の効果で淫猥な火照りを加速させられている上下に引き延ばされた裸体を覆い隠すことも許されない立場へと追いやられた無様な男は、万歳とつま先立ちを同時に強要された抗えぬ肉体を自分を捕らえた存在が滾らせた悪意のままに弄ばれるしか無い。
憎い敵の男に生きたまま捕らわれ愉悦を膨らませる為の娯楽として飼育されている男は、自分の飼い主に君臨した男の思いのままに責め嬲られながら今日も誇りを忘れきった本能剥き出しの痴態を余すところ無く引きずり出されるだけの、惨め極まりないペットでしか無いのだ。

「んぅっ! んむっ、むぐぅぅんっ!」

手首と足首の拘束を甲高く鳴らしながら、抵抗を封じられた男がくねくねと裸体を踊り狂わせる。視界を閉ざす目隠しの下で眉根を寄せ、言葉を奪う口枷に歯を立て悲痛に歪んだ唸りを発しながら、男はそれが情けない行動だと自覚した上で一生懸命に腰を前後に揺らめかせつつ、自分を嬉々としていたぶる男に哀願の意思表示を浴びせ続ける。
けれど、間抜けな悶絶を披露する男を堪能する無慈悲な飼い主の男は、屈服を露わにして許しを請う様を見聞きしても責めを緩める素振りすら見せない。
何処にも逃げられない男の乳首と尻穴に残酷な薬品をあてがい、丸出しの男根の根元と亀頭の真下にローターが内蔵された黒色のベルトを巻き付けた男は、自身と敵対していた際の凜々しさを欠片も残さず失った光景を真紅の一人掛けソファーに腰掛けた体勢を変えること無く鑑賞するのみだ。
薬を塗られた乳首が、痒い。薬を奥深くまで塗り込まれた尻穴が、気が狂う程に痒い。決して絶頂を認めず、乳首と尻穴の痒みを誤魔化す手助けさえもしてくれない強さで振動を繰り返すベルトに震わされている勃起させられっぱなしの男根が、苦しい。
それらの拷問によって精神と肉体の両方を打ちのめされ、自分を苛んでいる張本人である自分に助けを求める男を目と耳と鼻で愉しんでいる男は、忌み嫌っていた快楽を欲して無意味にもがく姿に無言の笑みを浮かべどす黒い興奮を際限無く積み上げていくだけの圧倒的かつ冷酷な支配者なのだ。

「あぉっ! ふぐぅぅ! んもっ、もごっ……んみゅぅぅぅっ!!」

射精を一生懸命にねだり、透明な蜜を撒き散らしながら限界まで硬度を高めさせられた男根をベルトごと振り乱して救いを希求する男。痒みを紛らわせる刺激を乳首と尻穴に望みながら、塞がれた口から紡いだ絶叫を用いて飼い主の男に縋り付く男。
その最高に滑稽なペットの痴態を予定通りに味わいつつ、男はまだまだ終わりにはしないと告げる代わりに足を組み替えながらソファーに座り直し、愉快なショーを眺める佇まいを余裕たっぷりに改めていた。
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