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新たな世界で少年は淫乱猫と化す

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空想の産物でしかなかった世界の実在を教えられ、渡された紹介状を手にして背徳の扉を叩いた少年はもう、建物の前で尻込みしていた時に感じていた不安を思い出せはしない。仕事の都合で自分と離れて暮らしている両親への後ろめたさも忘れ、誰もいない屋外に赴き一人きりで裸体を晒していた際に覚えていた物とは比べ物にならない興奮に浸っている少年は、自分と同じ立場を進んで取り全く同じ至福を貪っている周りの者達に負けじと痴態を披露し、恥ずかしい場所を余すところ無く見せ付ける愉悦を追い求めること以外考えられはしない。
巨大な建物の中庭部分へと案内された少年はもはや、建物の部屋達から思い思いにくつろぎつつ注がれる観察の視線を浴びながら猫の衣装を纏った裸体をはしたなく体積を増した恥部の主張を交えた四つん這いで歩かせ、自分と一緒に中庭で動物の飾りを身に着けた他の者達と仲良く発情を加速させる淫猥な獣でしか無いのだ。

「にゃん、にゃぁん……にゃぅ、にゃはぁ……!」

ふわふわの白い毛に覆われたグローブとブーツに付け根近くまでを包まれた手足を芝が敷かれた地面の上で動かす度に、少年の全身が甘く火照っていく。
誰に命令された訳でもないのに周りにいる別の動物になりきった者達の鳴き声に習って猫のような声を上げる少年は、頭部にあてがわれた猫の耳飾りの重みと赤い首輪に吊るされた鈴の音色を感じ、尻穴から垂れ下がった猫の尾が揺れるのに合わせて腸内を緩く抉る極太の張型の刺激で甘く苛まれる度に、己の意思で人間をかなぐり捨て本能を剥き出しにした淫獣へと陥落していく。
そうして、異常で淫蕩な空間を心から味わう少年の幸福な時間がどれくらい続いた頃だろう。不意に猫の耳を固定する器具と一体化している小型のスピーカーから左耳にこの場所を管理するスタッフの男の声が流れ、少年に伺いを立てた。

「お客様、失礼致します。別のお客様からお客様を独占して観察したいという申し出がありました。問題が無ければ、入り口から見て左側にあります五番のゲートをお通り下さい。一対一は遠慮したいというのであれば、右の前足で右耳を撫でて下さい」

突然に告げられた要求に、少年が心臓をドクンと高鳴らせる。遠くて顔もよく見えない不特定多数相手ではなく、たった一人相手に淫らな自分を捧げる。その事実を溶けかけの理性で噛み締めながら、少年は逡巡する。
しかし、とめどなく湧き上がる劣情の炎に突き動かされる衝動は、まだ考えている最中である少年の身体を示された五番ゲートへと勝手に歩み寄らせていく。男根の硬度を更に高め、全く掻き回していないにもかかわらず自分の指でほじくった時以上の快楽を抱いている尻穴で尻尾付きの張型を熱烈に絞め上げながら、少年は自分が迷っていたことすらも忘却しつつ震える四肢で辿り着いたゲートを通過していく。
そうして自分を独占したいとスタッフに告げた存在がいる別室へと移動し、引き返せないところまで到達してしまった現実に一層興奮を増幅させる猫の少年を待ち受けていたのは、少年にこの場所を知らせ紹介状を用意した一人の男だった。

「○○君、待ってたよ。悦んでもらえたみたいで何よりだ。それじゃここからは、もっともっと恥ずかしいことをして気持ち良く○○君を苛めてあげよう。二度と自分一人で肌を晒して遊ぶだけじゃ満足出来ないよう○○君を開発して……君をここの常連にしてあげるからね」

自分の私有地だと知らずに山へと立ち入り露出に耽っていたイケない少年を叱り付けずにより深い世界へと引きずり込んだ悪い男が、金属製の檻の横で片膝を付き手招きを行いながら少年をこの世界に縛り付けると宣告する。

「にゃぁ、んにゃ、にゃうぅんっ」

その宣告にすらも幸福を募らせ肉体を一層熱く甘く高めていく少年は、あそこに入ったらもっともっと気持ち良くなれると幸せに正気を砕かれた思考で認識しながら男の手招きに沿って歩き、淫乱猫と化した自らを甘ったるい責め苦が待ち受ける堅牢な檻へとしまい込んでいくのだった。
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