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男は淫猥な気体で追い詰められる

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「んっ…ふぅ……はっ、はおぉっ…!」

外の様子を伺える窓は無く、現在の時刻を知る為の時計も無く、たった一つしか無い扉は外側からしか開けられない鍵を掛けられている部屋の中に監禁された一人の男が、荒く乱れた呼吸を繰り返しながら拘束と苦悶を与えられた裸体をベッドの上で苦しげにくねらせている。
ベッドに仰向けで寝かされた男の裸体は、真横に伸ばした両手両足を曲げたくても曲げられないよう、手首と足首に嵌められた黒革の枷から伸びた鎖とベッドの上下にある金属製の柵を南京錠で繋がれ、恥部を余すところ無くさらけ出した体勢のまま、ベッドから起き上がる事すら出来ないよう身動きを封じられてしまった。

そんな姿では、当然閉じ込められた部屋を脱出する事など不可能。それどころか、男は自分の頭部に被せられた無慈悲な装置を外す事も叶わない。
ガスマスクに似た形状をした鍵付きのマスクに繋がれている太いチューブから流し込まれる強烈な催淫効果を持つ媚薬ガスから男は逃れたくても逃れられない。
男は無理矢理に発情状態に追い込まれた汗まみれの裸体の火照りを拘束のせいで自ら鎮める事も出来ず、硬く勃起してしまった男根をはしたなく揺らし、媚薬ガスが漂うマスク内に甘さと切なさの混じった呻きを漏らしながら、激しい火照りを紛らわせる為に惨めと知りつつも裸体をくねくねと踊らせるしか無い。

「あっ…く、ふぅ……んぁ、あはぁぁ…っ!」

マスクの下で目を剥き、舌をだらしなく垂らし、透明な先走りで濡れた男根を振る男は、実に無様だ。
けれど、男は見た目の無様さからは想像も付かない程に精神を強く保ち、発情に苦しみながらも心は全く屈してはいない。故に、男は数時間ぶりに部屋へと戻って来た敵の男の問いに対しても、数時間前と内容の変わらない返事をした。

「久しぶり、兵士長さん。そろそろ、情報を吐いて楽になりたくなってくれたかな?」
「だま、りぇっ…! どんなに辱しめを受けようとも…祖国を、うりゃぎりなど、しない…っ! きひゃまらに話す事など無い…! こりょすなら、さっさところひぇ……っ!」

敵国の手に堕ち、軍人としてだけでなく男としての誇りを残酷に傷付けられているというのに、兵士長の男は折れていない。
舌足らずな口調で尋問に屈しない事を宣言し、処刑するなら早くしろと要求している。
しかし、そんな挑発に乗ってくれる程敵国の男は慈悲深くない。自由を奪い、尊厳を奪い、舌を噛み切って自らの命を絶ち恥辱を逃れる為の力も気が狂いそうな発情による疲弊で奪い取った敵国の男は、捕虜となった兵士長の男に救済を与えない。代わりに与えるのは、更なる辱め。兵士長の気丈な精神を跡形も無く壊し、服従させる為の淫らな責め苦だ。

「んー…まだ話す気にはなってくれないか。じゃあ、可哀想だけどもっともっと苦しめて、早く話す気にさせてあげないとね」
「っ…!? や、めぇっ! なにを、すりゅっ…!」
「すぐに分かるよ。嫌でもね」
「あぉぉぉぉ…っ!?」

敵国の男がポケットから取り出した注射器型の器具は、媚薬の効果で弛緩していた尻穴につぷりと先端を侵入させ、敵国の男の親指が器具の底を押すのに合わせて内部の液体を兵士長の腸内に放出した。恥ずかしい穴に、正体不明の液体が流し込まれる。その事実と液体が腸内で広がる感覚に兵士長は恐れを抱いたが、その恐れはすぐに掻き消えた。恐れなど気にならないくらいの刺激が、思わず悲鳴が上がる程の痒みが、尻穴を襲い始めたからだ。

「ひぎゃぁぁぁっ!? が、ゆい! かゆっ…かゆいぃぃ!?」

マスクに取り付けられた強化ガラスの窓から哀れな兵士長の表情を観察し、疲れ切った声で発せられる絶叫を愉しみ、拘束された裸体が汗を飛ばし男根をぶるぶると振り乱して痒みに責め立てられている尻穴をほじくろうともがいている様を微笑んでしばらく堪能し、敵国の男は冷酷に言った。

「じゃあ、兵士長さん。また後でね。良い返事を待ってるよ」
「あ、あはぁぁっ!? や、めっ…行くな、い、くなぁっ! 行かないで、くりぇ…お願い、だっ、尻の穴をいじっで! 痒いの、どうにかひてくりぇぇぇぇ…っ!!」

悲痛な懇願は、部屋の扉が閉じられると同時に聞こえなくなる。敵国の男は今自分が閉じた扉の鍵をしっかりとかけ直すと、扉を見つめてニヤニヤと笑みを浮かべながら小さく呟いた。

「私が帰って来た時に、良い子になってたらお尻の穴をたっぷり弄ってあげるよ。媚薬で熟し切った乳首やおチンチンを苛めながらね…」

数時間後に戻って来た時の兵士長の哀願を、快楽を求める無我夢中のおねだりを早くも愉しみにしながら、残酷な敵国の男は廊下に靴の音を響かせ、捕虜の立場に堕とされた憐れな兵士長の男が悶え鳴く部屋の前を離れていった。
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