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淫欲を積み上げ男達は己を跡形も無く押し潰す

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薄汚れた木製の床の上に置かれている薄桃色をした新品のクッションを見つめながら、男達がじたばたと身をよじらせている。
二の腕を胴体に括り背中で重ねさせた肘から手首までの部分をきつく一まとめにする上半身の縄と、足首同士とすね同士そして太もも同士を遊び無く結合する下半身の縄、加えて上半身の縄と足首の縄を繋ぐ縄を施された裸体を必死で暴れさせながら、二人の男は厳重な縄拘束からの脱出を求める試行錯誤を繰り返している。
しかし、幾ら頑張っても男達は手足を縛める縄からは抜け出せない。腕に走る痛みに呻き、後ろに折り曲げさせられた位置から離れられなくされた足で上半身を引っ張りながらもがいても、二人は裸体を直接圧迫する縄はおろか全身の縄と太く頑丈な梁に設置された滑車を経由した先にあるクッションの真横に置かれた機械を結ぶ縄からも逃れられない。
手足の動きを大きく制限され、腹側を下にした姿でクッションの真上へと宙吊りにされた哀れな男達はもう、自分達をこの状況に追い込んだ男達が残した無慈悲な追い打ちの拘束にただただ心と身体を嬲られるしか無い。
口内を硬く丸めた布で満たされ、その布を吐き出せないようにと別の布を歯に噛まされ、更にその上から鼻と口を緩み無く圧迫する白布をあてがわれた男達は、口を塞ぎ言葉を奪う三枚の布に染み込まされていた強力な媚薬を為す術無く吸入させられながら、縄との格闘を試みる思考をじわじわと蝕む発情と快楽への渇望に狂わされるしか無いのだ。

「んっ、んぐぅ! ぶふっ、むぅぅんっ!」
「むぐっ、むおぉ! ふーっ! ふぶぅぅっ!!」

しゃべることを禁じられた口で苦悶に満ちた唸りを発し、三枚目の猿轡越しに甘く乱れた鼻息の音をプスプスと間抜けに鳴らしながら、涙に潤んだ目を痛々しく見開いた男達は並んで宙に固定された裸体を情けなくくねくねと踊らせる。
この発情から逃れる為にも早く縄を解かなければ、そう考えながら足掻く度に生まれる張り詰めた男根がぶるぶると揺れ動く刺激に望まぬ快楽を覚え、道具も無しに生身で脱するのは不可能に近い縄と無駄な戦いを行うくらいならば発情と欲望を誤魔化す動きを行って少しずつ冒されていく正気を守る方が良い、時にそう判断して無我夢中で腰を振り分泌した透明な淫蜜を撒き散らしつつ二本の男根をめちゃくちゃに振り乱す男達はもう、限界だ。
呼吸に合わせて際限無く肥大していく淫らな欲望に絶えず苛まれ続けた男達はもはや、無理矢理に引き起こされた淫猥な衝動を否定する気力も無い。手足を縛る縄達を解こうとする無意味な動きで自我をどうにか保っている男達は、自身が崩壊寸前にあることを理解する余裕すらも失われている。
破裂が目前に迫っている。そんな無様な男達に、二人を捕獲して宙に吊るし発情の中へと置き去りにした残忍な男達が残した仕掛けは前触れ無くとどめを刺した。滑車を通して二人を宙吊りにしていた二台の機械は突然に縄が巻き付けられていたドラム部分のロックを解除し、男達を床のクッションへと自らの重みで落下させた後に再びロックを掛けてしまった。
放置から二時間後に作動するよう設定されていた仕掛けは、火照りに火照っていた裸体を己の意思で惨めに慰める選択肢を二人に与え、理性と正気の瓦解を、誇り高き捜査員の自我の離散を、残酷に決定付けてしまったのだ。

「んぶっ、むぶぅぅっ!? むぉっ、ふぐっ、むぅぅんっ!」
「ぶぅ、んむぅぅっ!! んふっ、むぐっ……みゅぅぅぅんっ!!」

落下への驚きと、柔らかなクッションに裸体を受けとめられる緩やかな衝撃。それらの情報を疲弊した脳で認識するよりも先に、かつて正義の存在であった男達は縄塗れの裸体をみっともなく悶えさせそれまで得たくても得られなかった快感を夢中で貪り始めた。
裸体から滑車へと伸びクッションから下りることを禁じている縄を嬉しさを表わすように震わせながら、二人は一心不乱に腰を前後左右に振って男根をクッションへと擦り付け、隣に仲間がいることも悪人に拉致された立場であることも忘れて射精を追い求めていく。

「んむっ、ふぶぅぅ! んぐ、むぅぅ、ふむぅぅっ!」
「むー! むぐ、ぶふぅぅ! んっんっ、んぅ、むぐぅぅ!!」

腕を使えず、足を大きく動かせない裸体では満足に腰も振れない。満足に腰を振れない身体では、あまりにも柔らかすぎるクッションへとどんなに男根を擦り付けても、もどかしさが募るばかりで射精には辿り着けない。
残酷な事実を把握する思考能力も削り落とされた男達は何故絶頂に至れないのかと焦燥の感情を募らせながら裸体の悶えを仲良く引き上げていき、捜査員としてだけではなく人間としての自分を何処にも吐き出せなくなった淫欲を己の内側に積み上げることで跡形も無く押し潰し、冷酷な拷問を施した悪達の意に沿って射精と快楽のみをねだる色狂いへと堕落させられていくのだった。
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