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ペットは非道な別れを嫌がる

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自分を攫い、地下室で人権を蔑ろにした飼育生活を強要している存在によって淫らに開発された裸体が、食事に混ぜられた薬品の効果も相まって火照り、疼きに疼いている。
男の物とは思えないくらいに肥大化しぷっくりと尖っている真っ赤に充血した乳首が刺激を欲してヒクつき、裸体全体が汗を噴き出させつつ泡が弾けているようなもどかしい感覚に苛まれ、雌の至福を仕込まれた尻穴が奥深くまでを慰める異物をねだってはしたない開閉を繰り返している。
乳首を弄りたい。床に敷かれた布に全身を擦り付けつつ、男根を欲望のままに扱きたい。気が狂う程の発情に追い詰められた男の思考は、快楽を追求することで一杯だ。
だが、男はどんなに淫猥な欲望を滾らせようともそれを実現に移すことは叶わない。己を支配する絶対的な存在の手で与えられた拘束達によって裸体の自由を大きく奪い取られている男は、自らを嬲りながら絶頂を迎え続ける惨めその物な痴態を晒すことさえ許されない。
厳重な拘束で自慰の選択肢さえも削ぎ落とされた惨めな男はもう、目隠しの向こうにいる憎い男に対して枷を加えられた口から飛ばす誇りを捨てた哀願の唸りを無慈悲に聞き流されながら、手も足も出せなくされた雄々しき裸体が快楽を求めて悶え狂う様を余すところ無く堪能されるしか無いのだ。

「うぅ……んぐぅ、むぅぅぅ……っ!」

視界を閉ざす黒革の下から零れ落ちた涙を頬に伝わせ、口を塞ぐ黒い棒状の枷の隙間から唾液を溢れさせながら、男はなりふり構わずに快感を心の底から望む。
自分を左右から挟む形で存在している太く長い柱から伸びた長い鎖を黒革の首輪に接続され、短い鎖を左右の太ももと足首に巻き付けられた黒革の枷へと結合された哀れな男は、ピンと背筋を伸ばしたがに股の姿勢に固められた筋肉質な裸体を苦しげに痙攣させながら、パンパンに張り詰めた男根を、睾丸と共に自身をくびり出す形で根本に巻き付けられた黒革のベルトと左右の手に握り拳を強要する鍵付きの手袋と一体化した黒革の手枷を南京錠を用いて繋がれた射精欲を限界以上に溜め込まされた男根を、可能な範囲で腰を振り乱すことで必死に自己主張する。

「んむっ、もごっ、あぶおぉ……っ」

乳首と男根をぷるぷると滑稽に震わせながら身動きを封じられた裸体をくねらせ、自分をこんな目に合わせている張本人である相手に懇願の意志を示し続ける男。自力では弄りたくても弄れぬ恥ずかしい場所が叫ぶ気持ち良くなりたいの思いに内側から追い詰められながら、逞しく鍛え上げられた肉体を持ってしてもどうにもならない拘束達を鳴らし諦めの悪いおねだりの呻きを発しつつ、火照りを誤魔化すダンスを憔悴した裸体で披露する愉快な男。
そうして最高に見応えのあるペットの悶絶姿を真正面に腰掛けて悠然と味わい尽くした男は、一生懸命に射精を欲する男の汗ばんだ髪を右手で優しく撫でると、淡い期待を分かりやすく抱いているペットに髪を撫でた右手の優しさとは真逆な残忍な宣告を嬉々として浴びせてしまった。

「それじゃ、○○。私はこれから約束があるから君はここでずっと発情してなさい。帰ってきたらまた観察してあげるから、それまでに今よりも愉しく苦しむところを私に見せられるよう、理性を無くしておくんだよ。良いね?」
「ふぐっ!? もあぁっ!?」

驚愕と、困惑と、戦慄。あらゆる絶望色の感情が混ざり合った悲鳴を口にする予想通りの反応を名残惜しげに見聞きしつつ、非道な男は右手を男から離しソファーから立ち上がると、何の迷いも見せずに地下室の扉へとわざと靴音を大きく立てて歩き始めた。

「えや、えあぁぁぁっ! おえあい、ひかへへ、くあはぃ! ひゅるひへ、ひあぁぁぁぁっ!!」

生殺しの地獄の中に放り出され、縋る相手さえいないまま一人きりで放置される。
今から始まる淫蕩な拷問に恐怖し、一層激しく腰を突き出し狂ったように鳴き喚く男の不明瞭な制止を無言で受けとめつつ、飼い主である男は自分との別れを嫌がるペットに小さく手を振り、醜悪な笑みを最後まで寄せながら扉を閉じていくのだった。
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