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捕らわれた男は縛めと辱めの歓迎を加えられる

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腕が痛い。足が痛い。首に謎の圧迫があり、口は何かを噛まされたことによって開いた状態を強いられている。
不意打ちで吸入させられた薬品によってもたらされた深い眠りが薄れ、意識をぼんやりと覚醒させた男は己の肉体に訪れる様々な感覚に違和感を抱きつつ閉じていたまぶたをゆっくりと開き、そして驚愕した。男は気を失っている間に肉体の自由をあらゆる形で没収され、立ち上がることすらも許されない、それどころか惨めに床を這って移動することさえ叶わない姿へと追いやられてしまっていたのだ。

「うぅっ!? んむっ、むあぁぁっ! うぅ、ふっ……んぐぅぅっ!」

左右の手首と二の腕を背中で縄に縛られた腕と、足首と太ももを腕と同じように縄で括られた足をもがかせても、拘束は振り払えない。手首の縄と足首の縄を短く繋ぐ縄と、腕を胴体へと縫い付け後ろに折り畳ませた足を苛烈に締め付ける縄を軋ませながら悶えても、男は左半身を下にして床に転がされた無様な格好から離れたくても離れられない。
赤色のギャグボールを噛まされた口から焦り色の唸りと共に飲み込みきれない唾液を零し、黒い首輪の前部に位置する金具と眼前の床に打ち付けられた丸い金具を結合する鎖を鳴らしながら無意味に暴れ、芋虫のようにもぞもぞと蠢く哀れな男。そんな男を作り出し、覚醒直後の滑稽な足掻きを男の背後でしばし堪能した男は、大きく身を揺らした男の視界に自分が映り縛めとの格闘が緩んだのをきっかけに椅子に腰掛けての観察を切り上げ、悠然と歩み寄りつつ怯えと戦慄に染まった反応を晒す男に嘲りを乗せた言葉を浴びせた。

「おはよう、捜査員さん。私達のアジトへようこそ。敵である私が目の前にいても、視線を返すことしか出来ない。私を逮捕したくても、情けなく身悶えること以外何も行えない。実に素敵な格好だねぇ……私流の歓迎、気に入ってもらえたかな?」
「うぁっ、うぅぅっ! んーぅっ……ぐぅぅぅっ!!」

圧倒的に有利な立場から紡がれる勝ち誇った声に、捜査員と呼ばれた男が絶望を募らせる。醜悪に歪んだ悪の男の表情に、支配下に置かれた捜査員が恐怖を膨らませる。
しかし、捜査員の口はその絶望と恐怖からは想像も付かない反抗色の唸りを無意識に飛ばしていた。捜査員が有する悪を憎む正義の意思は、打ちひしがれそうになる心を鼓舞する抗いの感情を反射的に悪の男へと返していた。
そんな気丈な返事を耳にし、鋭く睨み付けてくる瞳に滲んだ恐れを目にしながら、悪は笑みの残忍さを更に引き上げる。この強気で気高い捜査員を今から弄び、自分好みに服従を植え付ける。異常な至福を噛み締めながら全身を甘く痺れさせた男は床に転がした捜査員の正面に回って床に直接腰を下ろし、守りたくても守れない無防備な股間を左手で巧みに刺激しつつ、手も足も出せない哀れな捜査員に余裕たっぷりの褒め言葉と、無慈悲な調教生活の開始を告げる言葉をぶつけた。

「ふふっ、元気いっぱいだねぇ。それでこそ苛め甲斐と堕とし甲斐がある、良い子だ。その元気を、今日から時間を掛けてじっくりと壊し尽くしてあげよう。ここには味方もいないし助けも来ないから、好きなだけ鳴き喚きなさい。絶対に逃げられないことを思い知りながら、私の手で淫らによがり狂いなさい。無意味な悲鳴を上げて、みっともない痴態を見せ付けながら、捜査員としての何もかもを忘れた私だけの淫乱奴隷になるんだよ? 分かったね?」
「うぐっ、む、あぁっ! うぁ、えうぅ! んみゅぅぅっ!」

悪が語る展開を拒む絶叫を部屋中に響かせつつ一層激しく身をよじらせても捜査員はやはり縄から抜け出せず、緩急を付けてズボン越しに男根をまさぐる悪の左手が生み出す意に染まぬ快楽に逆らえぬ身体を跳ねさせながら、捜査員は為す術無く勃起を強要され屈辱と恥辱に震える表情とはしたなく張り詰めさせられてしまった男根の脈動で、憎い悪の目と左手をこれ以上無く悦ばせてしまっていた。
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