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聡明なプレゼントは計算通りに隷属する

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暖房がしっかりと効いた部屋の中で、青年が満面の笑みを浮かべながら下品な格好を何の迷いも見せずむしろ誇らしげな態度で披露している。
左右の乳首のみならず男根をも無防備に露出させ、丸出しとなった尻穴から垂れ下がった茶色い尻尾飾りを見せ付けるように折り畳んだ足で支えた肉体を揺らめかせているサンタとトナカイの特徴を混ぜ合わせたかのような淫らな衣装を身に纏った青年は、笑顔の左右に配置した手でピースサインを作りながら、ベッドに腰掛けて自分を眺めている同じ年頃の青年に向かってはしたなく無様な己を一生懸命に示し続けている。

「ご主人様っ、如何ですかっ? みっともない姿をしている俺で、愉しんで頂けていますかっ?」
「あぁ、愉しんでるぜ。正直お前がこんなにエロくて弄び甲斐があるなんて、今日まで全然気付いていなかったよ」

赤と白を基調にした二の腕までを覆う手袋と太ももまでを包むニーソックスを着た手足の細さに唾を呑みながら、主と呼ばれた青年が浮かべた笑みを獣じみた欲望を滲ませた物へと変化させていく。手足にあてがわれた物と同じ素材で作られた衣服に隠された腹部の上下で淫猥に自己主張する乳首と男根を目で追いながら、主に君臨した青年は眼前の青年の頭部で揺れるトナカイの角飾りと足の間で小さく往復するトナカイの尾の飾りに自分でも知らなかった獰猛な愉悦を湧き上がらせつつ、左手の中のスマートフォンを濡らす汗の量を増やしていく。
本当にこれが、あの生意気なあいつなのか。未だに信じがたい眼前の光景を疑う思いを改めて抱きながら、青年はズボンの内側で張り詰めた自らの男根の硬度を更に引き上げていく。
多くの人間から天才と呼ばれ、ありとあらゆる発明を手がけているあいつの今の姿は、これなのだ。愉快で滑稽で劣情をこれ以上無く煽る光景を独占しながら、青年は自分よりも遥かに賢く世界中の人間から存在を求められている偉大な幼なじみに間抜けな痴態を晒させている事実に歪んだ至福を募らせていく。
もっともっと、こいつの惨めなところが見たい。クリスマスプレゼントだと言いながら国家権力に頼まれて開発した機構の使用体験の機会を、本来は悪人から反抗や自害の選択肢を阻む為に支配下へと置き重要な情報の自白を無自覚に強要することを目的として作られたアプリのお試しを自分を実験体に捧げる方式で持ちかけた幼なじみを、他ならぬ自らが作製したアプリで貶めたい。そんな黒く醜悪な欲望に突き動かされながら青年が再びスマートフォンを弄った途端、幼なじみの青年は正常な状態を奪われていた思考のみを元に戻され、恥ずかしい場所を自分から見せ付けている形となっていた己の肉体に対する困惑と戦慄を分かりやすく放ち始めた。

「あ、え……っ? なんっ、え、うぁ……っ?」

正気に戻ったら、肉体が指一本すら思い通りには動かせない状況に追いやられていた。乳首や男根を隠すことはもちろん、尻穴を襲う違和感を振り払うことも不可能な立場に置かれていた。
異常な現実の原因が眼前にいる青年であること、ひいては己が作り上げたアプリにあることを持ち前の聡明さで理解した青年は、文字通り手も足も出せなくなった肉体を虚しく震わせつつ、ついさっきまで主と呼んで慕っていた幼なじみの青年に怯え混じりの声で許しを請い始めた。

「ど、どうしてこんなこと……? お願い、戻してっ。アプリを俺に使ってみても良いって言ったけど、こんなっ……!」

さっきまでの甘い火照りとは違う理由で顔を赤く染め上げながら、幼なじみの青年が介抱を欲する。
だが、青年の欲望はとまらない。どんな命令でも受け入れる生きた人形を手に入れた途端、普段の多くの人間から必要とされる生き様を欠片も伺わせない無抵抗で無様な幼なじみを手中に収め自身に従わせる悦びを知った途端、抑えきれぬ程の加虐欲と独占欲を自覚した青年は、遥か遠くに離れようとする幼なじみを自分に繋ぎとめたいという願望に任せて、抗えぬ肉体に新たな命令を下していく。

「良いぜ、○○。その顔堪んないよ。俺よりも優秀で、俺なんて比べ物にならないくらい頭が良いお前が何も抵抗出来ずにエロいところを晒してるの、本当に愉しい。ここからは自我を奪わずに苛め抜いて、俺に為す術無く弄ばれてるところをたっぷりと味わってやるからな? 可愛い○○」
「っあ? は、だ、らめぇ……っ!」

ベッドから立ち上がった青年が、ズボンのファスナーを下ろして自身の男根を取り出す。取り出された男根は逃走の選択肢を取りたくても取れなくされた幼なじみの青年の鼻先へと押し当てられ、鼻腔を淫臭で嬲り倒していく。

「ほら、しっかり嗅げよ、○○。まだまだ正気が残ってる頭を俺のチ○コの匂いで馬鹿にしちまいな。アプリの力で俺のチ○コの匂いが混ざってない空気以外じゃ呼吸出来ないようにしてやるから、たっぷり俺の匂い嗅いで、頭をおかしくさせちまいな」
「ひっ!? いぃ!? やら、りゃめ……ふ、あぁぁぁ……んっ……!」

呼吸までもを支配された幼なじみの青年が、乳首と男根の硬度を引き上げつつ肉体を一層の発情へと突き上げられていく。
男根の淫臭無しでは文字通り生きられなくされた青年が、鼻を鳴らしつつ脳を淫蕩に蝕まれていく。
その過敏に蕩け落ちていく幼なじみの絶景に興奮を際限無く加速させながら、青年は昨日適当に見繕って注文したサンタとトナカイが混ざった今身に着けている衣装のように似合うであろう数々のふしだらな衣服に思いを馳せつつ気まぐれに腰を前後させて鼻により強く男根を突き付け、すでに後戻り出来ないくらい心地良さげに緩んでいる理性と表情を、幼なじみが屈服を認めるまで無限に緩ませていくのだった。



何もかもの結果を、あらかじめ計算で予見していた。獣欲を剥き出しにさせ襲わせるのも、想定内の展開だった。
一切の道筋が天才な幼なじみの予測通りに動いていることを知る由も無い青年は、遠回しで爛れた告白を寄せた異常な天才の狙いに沿って陥落を強要し、独占されたがっていた幼なじみの青年が魂から欲していた幸せな隷属を自らも望んで与えていくのだった。
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