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優雅な晩酌は真下の滑稽に耳を澄ませつつ行われる

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晴れた夜空を見上げれば、そこには満月が浮かんでいる。夜の森に意識を傾ければそこには風に葉を揺らす木々のせせらぎと虫の音のハーモニーが響き渡っており、手元に目を移せばそこには自分好みの酒とつまみが用意されている。
そんな安らぎと至福に満ちたベランダでくつろぎながら、男は己の真下の空間で繰り広げられる愉快な悶絶に耳を澄ませていた。

「んうぅ……むふっ、ふぶぅっ……!」
「あおぉ、んもっ、まおぉっ……!!」

二つの口を塞ぐ一個のギャグボール越しに悔しげな色が混ざった喘ぎを零しつつ、自分を嗅ぎ回った愚かな捜査員達が淫らに苦しんでいる。
所持していた武器達と共に衣服を一枚残らず没収された裸体に縄を纏わされ、自由を奪う拘束とベランダの下部やベランダを支える丸い柱達に取り付けられたフックを追い打ちの縄で遊び無く結合され宙に吊るされた無様な捜査員達が、尻穴を貫いたまま抜け落ちないよう縄に押さえ付けられている男根型の淫具が行う駆動と無自覚な身悶えの度に密着させられた男根が擦れ合う刺激に鳴かされつつ、眼前に固定された仲間の顔が淫猥に歪む様を見続けさせられている。
直接は見えないそんな真下の情景を音を頼りに想像しながら、二人を捕獲した組織を束ねる悪の総帥に君臨した男は優雅な晩酌を愉しんでいた。

「んもぉぉっ! うぶ、ぼもおぉぉ……っ!」
「うーっ! んむ、もあぁぁ……っ!!」

また絶頂した。右手で動かしていたグラスを停止させ、酒を含もうとしていた口を残忍に歪ませながら悪の男が捜査員達の悲鳴に愉悦を加速させた。
自分が真上から痴態を味わっていることなど知る由も無い捜査員達が、部下達が加えた調教と奥深くまでたっぷりと注入された淫薬の力に屈して雌の器官へと貶められた尻穴を緩く撹拌し掻き毟る偽の男根の攻撃に忍耐をじわじわと看破される形で射精に達した。その事実を悲痛な鳴き声のみで認識しながら、悪の男は加虐に向ける意欲を勢いよく膨らませていく。
そうして肥大化した無慈悲な衝動のままに、悪の男はグラスを持った右手の下を潜らせた左手でテーブルに準備しておいた淫具の強度を司るリモコンを取り、真下で悶え狂う二人の捜査員がまだ絶頂の余韻から抜け出せていないことを承知の上で、リモコンのダイヤルを最大と記された位置へと回してしまった。

「っ!? もごぉぉぉーっ!? あぉ! もあぁぅっ!!」
「えっ、おぁぁぁぁーっ!? へぉ、へぶうぅ! むぉぉぉぉんっ!!」

驚愕を露わにした絶叫が、ベランダの真下で奏でられ始める。無意味な足掻きに合わせて弱々しく放たれる程度だった縄の軋む音が、二人分の裸体が痙攣する振動に合わせて激しい音を発し出す。
悪の思惑に沿って陥落に追いやられた尻穴を無感情な機械に蹂躙される捜査員達はもう、迫り来る絶頂を堪えることさえ叶わない。悪の総帥である男を愉しませる娯楽として人里離れた山中の邸宅へと拉致された捜査員達はもはや、二人仲良く鳴き喚きながらイき狂うだけの生物でしか無いのだ。

「んもっ、ぼもおぉ! うぅ、んみゅ! ふびゅぅぅぅっ!!」
「あぉ、あぉぉぉっ!! うぁ、むあぁ、ぐぶぅぅぅっ!!」

イってもイっても終わらないイき地獄に心と身体を打ちのめされながら、捜査員達は大粒の涙を零す瞳で虚しく仲間を見つめているのだろう。言葉にならない唸りを放つ度にお互いの口から溢れる空気を交換し合いながら、捜査員達はギャグボールの隙間から垂れ落ちた唾液で自分達のイきっぱなしにさせられた男根に追撃となる衝撃を生み続けているのだろう。
そんな空想を思考に巡らせながら、悪の男は両手両足を縄に縛られ自分の真下で宙吊りにされた裸体を為す術無く快感の頂点へと押し上げられ続けている正義達に歪んだ充足を改めて募らせつつ、用済みとなったリモコンをテーブルに戻した左手でつまみを取り、より滑稽で愉悦に満ちた晩酌を再開させるのだった。
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