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13】俺の初めて
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13】俺の初めて
『好きです』
「好き」たった二文字。
その文字を口から発するのに、恋する人はどれだけ勇気を出しているんだろう。俺は言えないまま、胸の奥にしまい込んでいるのに。加藤はそんな気持ちを伝えられないのは嫌だと、勇気を出したんだ。
(じゃあ、もし伝えられなかったら)
(俺のこの奥の気持ちは、どうなるんだろう?)
加藤のように、涙になった溢れることも無く。ただひっそりと苦しいと消えてしまうんだろうか? 加藤のような満足な表情をすることなく、俺の中で大きくなってしまうんだろうか。
「……」
出口の見えない迷路に入り込んでしまった気持ちで、思わず下唇を噛んだ。ともすれば、もう教室だ。話し声も聞こえない様子に、春樹は帰ったのだろうと思った。ガラリと扉を開けて前方の俺の席を見れば、俺のリュックが置かれた机にもたれ掛かる男が一人。伏せていた頭に耳が生えた幻覚が見えそうなほど、ピクンと反応した上半身がバッ! と動いて顔を上げた。
「おかえり、葵」
「……春樹」
何でいるんだよとは、言えなかった。とりあえず自分の席に脚を進める。座ったままの春樹が「葵?」と俺の顔を覗き見た。
「先に帰っていいって言ったじゃん、俺」
「いいじゃん。俺が青いと一緒に帰りたかったから、待ってたんだよ。なぁ……後輩ちゃん、何だったん?」
「……」
「……」
視線を合わせなかったが、ジッ……とし視線を感じる程圧が強い。別に悪いことはしていないのに、どうしてこんなに圧を感じるだろうか。
「春樹、視線が煩い」
「熱視線だった?」
「圧が強いんだよ」
「ははっ……葵?」
「告白されてた」
「ふーん。可愛い子だったやん。葵、付き合うん?」
「……」
またジッ……と俺を見る視線と視線を合わせ。珍しく春樹を見下ろして言った。
「付き合わないよ」
「何で?」
「春樹だって、俺より何倍も告白されてるけど付き合わないだろ。それこそ何でだよ」
「今、俺のことは良いんだよ」
「我が儘だな」
何かを探るような、視線と言葉。視線の圧を気にしない。付き合いが長い分、この視線にも慣れている。それよりも先ほどの加藤の事を思い出して、俺も少しだけ勇気を出した。
「だって、俺。好きな人おるから。だから付き合えないって」
「…………葵、好きな人いたのか?」
「俺だって年頃の高校生男子だぞ。好きな人くらいいるし」
「え、俺聞いてないけど」
「さっき初めて、加藤に教えたから」
だって、俺が好きなのお前だし。言えるわけないだろ。言ったら告白になるんだよ。
ドキドキドキ……。
胸の奥にギュウギュウに隠すように押し込んだ気持ちが、少しだけ顔を出し。喉まで押し上がってこないように注意した。
「加藤さん、羨ましいな。葵の初めてゲットしてるんだ」
「なんで春樹も加藤も、その言い方なんだよ」
「だってさ、春樹の初めてには変わらないだろ? いいなぁ……俺も葵の初めて欲しかったなぁ」
「親父臭いぞ」
「そのうち、俺も葵も親父にはなるじゃん。予行練習だ」
内心、俺の初めての幼馴染で、友達で……初恋。全部、俺の初めては春樹なのにと思った。
*******
『好きです』
「好き」たった二文字。
その文字を口から発するのに、恋する人はどれだけ勇気を出しているんだろう。俺は言えないまま、胸の奥にしまい込んでいるのに。加藤はそんな気持ちを伝えられないのは嫌だと、勇気を出したんだ。
(じゃあ、もし伝えられなかったら)
(俺のこの奥の気持ちは、どうなるんだろう?)
加藤のように、涙になった溢れることも無く。ただひっそりと苦しいと消えてしまうんだろうか? 加藤のような満足な表情をすることなく、俺の中で大きくなってしまうんだろうか。
「……」
出口の見えない迷路に入り込んでしまった気持ちで、思わず下唇を噛んだ。ともすれば、もう教室だ。話し声も聞こえない様子に、春樹は帰ったのだろうと思った。ガラリと扉を開けて前方の俺の席を見れば、俺のリュックが置かれた机にもたれ掛かる男が一人。伏せていた頭に耳が生えた幻覚が見えそうなほど、ピクンと反応した上半身がバッ! と動いて顔を上げた。
「おかえり、葵」
「……春樹」
何でいるんだよとは、言えなかった。とりあえず自分の席に脚を進める。座ったままの春樹が「葵?」と俺の顔を覗き見た。
「先に帰っていいって言ったじゃん、俺」
「いいじゃん。俺が青いと一緒に帰りたかったから、待ってたんだよ。なぁ……後輩ちゃん、何だったん?」
「……」
「……」
視線を合わせなかったが、ジッ……とし視線を感じる程圧が強い。別に悪いことはしていないのに、どうしてこんなに圧を感じるだろうか。
「春樹、視線が煩い」
「熱視線だった?」
「圧が強いんだよ」
「ははっ……葵?」
「告白されてた」
「ふーん。可愛い子だったやん。葵、付き合うん?」
「……」
またジッ……と俺を見る視線と視線を合わせ。珍しく春樹を見下ろして言った。
「付き合わないよ」
「何で?」
「春樹だって、俺より何倍も告白されてるけど付き合わないだろ。それこそ何でだよ」
「今、俺のことは良いんだよ」
「我が儘だな」
何かを探るような、視線と言葉。視線の圧を気にしない。付き合いが長い分、この視線にも慣れている。それよりも先ほどの加藤の事を思い出して、俺も少しだけ勇気を出した。
「だって、俺。好きな人おるから。だから付き合えないって」
「…………葵、好きな人いたのか?」
「俺だって年頃の高校生男子だぞ。好きな人くらいいるし」
「え、俺聞いてないけど」
「さっき初めて、加藤に教えたから」
だって、俺が好きなのお前だし。言えるわけないだろ。言ったら告白になるんだよ。
ドキドキドキ……。
胸の奥にギュウギュウに隠すように押し込んだ気持ちが、少しだけ顔を出し。喉まで押し上がってこないように注意した。
「加藤さん、羨ましいな。葵の初めてゲットしてるんだ」
「なんで春樹も加藤も、その言い方なんだよ」
「だってさ、春樹の初めてには変わらないだろ? いいなぁ……俺も葵の初めて欲しかったなぁ」
「親父臭いぞ」
「そのうち、俺も葵も親父にはなるじゃん。予行練習だ」
内心、俺の初めての幼馴染で、友達で……初恋。全部、俺の初めては春樹なのにと思った。
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