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22】【最終話】俺の方がずっと前から好きだったし
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22】【最終話】俺の方がずっと前から好きだったし
一周回った気持ちと、ブチッと何かが切れた気がしたのと。
春樹の部屋で、俺は腹を括った。広げた勉強道具に、春樹の部屋の学校の机よりも幅の狭い小さなテーブル。俺の後ろの席の春樹が、今は目の前にいる。スリッと俺の目尻をなぞった指が、こんな時すら遊ぶように俺の指先を突いた。
「ちょっ、春樹」
「葵が久しぶりに遊びに来てくれて、俺も浮かれんの」
「遊びに来たわけじゃないだろ」
「いいだろ」
「よくない」
ムッとして春樹を見れば、余裕な表情だった。焦る気持ちか、喉が渇く。まだ大して会話もしていなかったが、さっそく春樹が持って来てくれた麦茶を一口飲んだ。ゴクンと大きな音がして、また春樹が笑う。
「葵、そんなに喉乾いてた?」
誰のせいだ、誰の。フーッと深呼吸をして、まっすぐに春樹の目を見て言った。
「春樹、英文を和訳するクイズをしないか?」
「クイズ? 良いよ」
「じゃあ、最初は俺からな」
「thii is a pen」
「ちょっ! 葵! これは、ペンです!」
「慣らしに優しい問題にした」
「葵は優しいな。じゃあ、次は俺な」
「that is book」
「あれは本です。いや、もう慣らしは良いだろ」
*****
***
そんな問題から始め、問題を交互に出していく時間が過ぎていく。渇きを潤したはずの喉が、また少し乾いた。隠すように開いたページの例文を、そろそろ伝えても良いだろうか。
「じゃあ、俺の番だ。I like ……」
Like。Likeでも通じるだろうが、どうとでも取れるだろう。そもそも、もう拗らせた気持ちは。奥に隠した気持ちは、like以上だ。
いや、もう良いや。当たって砕けろ! 砕けたって、ダメで元々……! 数秒言い直すように息を止めれば、「ごめん、また俺が言って良い?」と春樹が割って入った。手が重なって、視線が一瞬だけ重なった手の甲へ。すぐに視線を春樹の顏へ向ければ俺よりもスラスラと唇が動いた。
「I love you」
「は?」
なんだコレ。何だ? どういう意味だ??
「葵、I love you。葵、好きです。俺と付き合って下さい」
「…………は??」
頭が回らなかった。夢? 白昼夢でも見ているのかと思って、空いている方の手で自分の頬を抓る。痛い。どうやら、これは夢じゃなく、現実らしい。
「春樹、俺のこと好きだっていったの?」
「うん」
「何で?」
「葵が好きだから。幼馴染ってだけじゃなくて、恋愛的な意味で」
「は???」
また一週回った気持ちから、ブチッと何かが切れた。切れただけじゃない。ジワジワと視界が滲んでいく。ああ、もう! テスト勉強どころじゃない。
「何だよ、それ……なんだよっ……! 俺が告白しようとしてたのに、終わりにしようとしてたのに……!」
「終わりにしないでよ。俺、ずっと葵のことが好きだったんだから」
「俺の方が、ずっと前から好きだったし!」
「葵、泣かないでよ」
「泣いてない!」
「それから……葵、返事は?」
「OKに決まってるだろ!」
春樹の隣は、俺じゃなきゃ嫌だと思っているくらいなのに。
「ははっ、嬉しい。ってか、告白ってすげぇ緊張するのな。初めてだから、滅茶苦茶緊張した」
「俺もだよ」
あんなに告白されているのに、告白するのは初めてらしい。緊張だとか、諸々の気持ちが一気に抜けて、思わずテーブルに突っ伏した。まだ心臓がドキドキと煩い。だが、あの夜のように胸の苦しさは無い。寧ろ嬉しいという気持ちで胸が一杯だ。
「葵」
春樹が優しい声で俺の名前を呼びながら、俺の髪に触れる。チラリと視線だけ上に向ければ、初めて見るような表情の春樹がいた。
「葵。俺ね、葵の隣はずっと俺でいるつもりだから」
「…………俺も同じつもりだったし」
何だ。俺たち二人結構重くて拗らせてるな? と思った。
(あー、でも先に「好きだ」と言われたのは悔しかったな)
■春樹の隣は、この先もずっと俺が良い■
「ああ、そうだ。葵」
「うん?」
「今度さ、指輪見に行かない?」
「はぁっ……!?」
「だって、ほら。ずっと隣にいるつもりだから、婚約的な?」
「……気が早すぎるだろ」
後日。
二人でお揃いの指輪を買ってしまう未来が、簡単に想像できた。
*******
お気に入り・イイネ有難うございました
とりあえず、こちらで完結に致します
また何か始めた際は、読んで頂けると嬉しいです
一周回った気持ちと、ブチッと何かが切れた気がしたのと。
春樹の部屋で、俺は腹を括った。広げた勉強道具に、春樹の部屋の学校の机よりも幅の狭い小さなテーブル。俺の後ろの席の春樹が、今は目の前にいる。スリッと俺の目尻をなぞった指が、こんな時すら遊ぶように俺の指先を突いた。
「ちょっ、春樹」
「葵が久しぶりに遊びに来てくれて、俺も浮かれんの」
「遊びに来たわけじゃないだろ」
「いいだろ」
「よくない」
ムッとして春樹を見れば、余裕な表情だった。焦る気持ちか、喉が渇く。まだ大して会話もしていなかったが、さっそく春樹が持って来てくれた麦茶を一口飲んだ。ゴクンと大きな音がして、また春樹が笑う。
「葵、そんなに喉乾いてた?」
誰のせいだ、誰の。フーッと深呼吸をして、まっすぐに春樹の目を見て言った。
「春樹、英文を和訳するクイズをしないか?」
「クイズ? 良いよ」
「じゃあ、最初は俺からな」
「thii is a pen」
「ちょっ! 葵! これは、ペンです!」
「慣らしに優しい問題にした」
「葵は優しいな。じゃあ、次は俺な」
「that is book」
「あれは本です。いや、もう慣らしは良いだろ」
*****
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そんな問題から始め、問題を交互に出していく時間が過ぎていく。渇きを潤したはずの喉が、また少し乾いた。隠すように開いたページの例文を、そろそろ伝えても良いだろうか。
「じゃあ、俺の番だ。I like ……」
Like。Likeでも通じるだろうが、どうとでも取れるだろう。そもそも、もう拗らせた気持ちは。奥に隠した気持ちは、like以上だ。
いや、もう良いや。当たって砕けろ! 砕けたって、ダメで元々……! 数秒言い直すように息を止めれば、「ごめん、また俺が言って良い?」と春樹が割って入った。手が重なって、視線が一瞬だけ重なった手の甲へ。すぐに視線を春樹の顏へ向ければ俺よりもスラスラと唇が動いた。
「I love you」
「は?」
なんだコレ。何だ? どういう意味だ??
「葵、I love you。葵、好きです。俺と付き合って下さい」
「…………は??」
頭が回らなかった。夢? 白昼夢でも見ているのかと思って、空いている方の手で自分の頬を抓る。痛い。どうやら、これは夢じゃなく、現実らしい。
「春樹、俺のこと好きだっていったの?」
「うん」
「何で?」
「葵が好きだから。幼馴染ってだけじゃなくて、恋愛的な意味で」
「は???」
また一週回った気持ちから、ブチッと何かが切れた。切れただけじゃない。ジワジワと視界が滲んでいく。ああ、もう! テスト勉強どころじゃない。
「何だよ、それ……なんだよっ……! 俺が告白しようとしてたのに、終わりにしようとしてたのに……!」
「終わりにしないでよ。俺、ずっと葵のことが好きだったんだから」
「俺の方が、ずっと前から好きだったし!」
「葵、泣かないでよ」
「泣いてない!」
「それから……葵、返事は?」
「OKに決まってるだろ!」
春樹の隣は、俺じゃなきゃ嫌だと思っているくらいなのに。
「ははっ、嬉しい。ってか、告白ってすげぇ緊張するのな。初めてだから、滅茶苦茶緊張した」
「俺もだよ」
あんなに告白されているのに、告白するのは初めてらしい。緊張だとか、諸々の気持ちが一気に抜けて、思わずテーブルに突っ伏した。まだ心臓がドキドキと煩い。だが、あの夜のように胸の苦しさは無い。寧ろ嬉しいという気持ちで胸が一杯だ。
「葵」
春樹が優しい声で俺の名前を呼びながら、俺の髪に触れる。チラリと視線だけ上に向ければ、初めて見るような表情の春樹がいた。
「葵。俺ね、葵の隣はずっと俺でいるつもりだから」
「…………俺も同じつもりだったし」
何だ。俺たち二人結構重くて拗らせてるな? と思った。
(あー、でも先に「好きだ」と言われたのは悔しかったな)
■春樹の隣は、この先もずっと俺が良い■
「ああ、そうだ。葵」
「うん?」
「今度さ、指輪見に行かない?」
「はぁっ……!?」
「だって、ほら。ずっと隣にいるつもりだから、婚約的な?」
「……気が早すぎるだろ」
後日。
二人でお揃いの指輪を買ってしまう未来が、簡単に想像できた。
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