世界最後の日の噛み合わない二人

神谷 愛

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Q.明日世界が終わるなら

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Qもし、明日世界が終わるならあなたは何をしますか?

 幾度となく繰り返された質問だ。誰だって聞かれたか、聞いたことがあるか、またはその両方か。でも誰も本気でこの質問を聞いているわけではないだろう。だって本当に世界が終わることなんて考えてないから。私は胸を張って言える。世界が終わるまでには成し遂げなければいけないことが少なくとも一つは思いつく。でもそれをするには私には勇気がなかったし、背中を押してくれるのは世界が終わるという事実しかない。つまりどうあっても為されることのない、為さなければいけないことだ。どうせ、為されないなのなら他の人と同じだろう。

「ねえ、明日世界が終わるならどうする?」
「また?」
「だって、絶対あれ隕石だって!世界終わるって!考えとかなきゃ!」

 先週ぐらいから何度も同じ質問をされている。それもそのはず、先月ぐらいからだろうか、月が二つあると噂になっていたのだ。その大きさはどう見ても日に日に大きさを増していて、月よりも大きくなってから早一週間である。どこまで透き通るような真昼の中で太陽よりも存在感を誇っている真黒な真丸は確かに隕石に見える。
 あれが何かは未だに発表はない。UFOとも、政府の陰謀だとも、各種様々種々三者三様十人十色の見解はあれど、政府を始めとした、どこの公的機関からの発表がない以上、待つしかないわけで、そうしているうちに最早日常の中に溶け込もうとし始めてすらいた。

 でもそれが、今日覆る。いや、覆った。朝ご飯を食べながら、テレビをつける。寮暮らしも二年目となれば食堂に行かずに部屋でテレビを見ながら過ごしたい日もある。去年までなら考えられなかった話だ。
「・・・繰り返しお伝えします。国連、各国政府、NASAから明日、正確には日本時間で言う25時に巨大な隕石が落ちてくることが発表されました。政府はこの事態を隠していたことを謝罪し、国民には大事な人と最後の日を過ごしてほしいと繰り返しています。各新聞社とテレビ局は世界合同で声明を発表し、この事態を隠していた各国政府を強く非難し、事態の詳しい説明を求めて・・・」

 今朝から繰り返された荒唐無稽、とも言えないニュースは思ったよりも、大混乱を招くこともなかった。みんなどこか心の中では予測がついていただろう。予測どころかみんなそうだろうと思っていた。でも誰が本気でそんなことを言えるのか。きっとあれは本当に隕石で、止めることも、排除することもできずに地球は終わるなんて。
 そのニュースが流れた時、俄かに寮の中がざわめいたような気がした。食堂にはテレビがあり、毎日ニュースを流している。他のを観たい生徒もいるが結局食堂に居るので見ている生徒がほとんどだろう。そして食堂にはそれなりの数の生徒がいる。それでも私の部屋まで声が聞こえるなんてことは滅多にない。ずいぶん前に大きな虫が入ってきた時ぐらいだ。あの時はすごかった。

 大声が響いてくるざわめきではなく、本当に波紋が広がるように広がるざわめきはいっそ不気味だった。もちろん私もそのニュースを部屋で観ていたが食堂にいたところできっと私もそのざわめきの一つになるのだろう。本当に理解を超えた事態に会った時、きっと阿鼻叫喚ではなく「こう」なるのだろう。
 食堂以外では流石に大騒ぎになっているわけでは無い。でもたぶんどこも私とさして変わらない状況なのだろう。きっと、たぶん、私の隣の部屋以外では。私は今日も、きっと明日も開かないであろう隣室のことを思った。

 携帯に連絡が来る。ひとまず今日は学校は休みになるらしい。混乱を避けるため、とは書いてあるが本当に明日世界が終わるのならそれどころではないだろう。そして、もう一つ連絡が来ていた。
「ゆうき君?」
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