1 / 1
Stride future第1話【すれ違いノイズ】
しおりを挟む
Stride future 第一話【すれちがいノイズ】
女プロデューサー「ところで君、アイドルにならないかい?」
橙也ナレ「そう街で声をかけられて始まった俺のアイドル生活。ゆかり、秋黄実、翡翠と俺で4人組グループ【COLORLESS PAINT】と言うユニットを組み日々奮闘中。アイドルに憧れていた俺は夢を叶える為にこの3人と頂点を目指している。これは、まだまだ始まったばかりの俺達の物語。」
ゆかり「翡翠っ!そこ!ズレてる!やり直し!次のシングルまで時間が無いんだからね!」
秋黄実「だぁ~もう!なんでズレんのかな~
!(イラついていて)」
翡翠「ご、ごめん…、次はちゃんとやるから…。」
橙也「大丈夫だよ、翡翠。ゆっくりやってみようよ。」
橙也ナレ「ただちょっと…、ホントにちょっとだけギスギスしてるんだよな。」
ゆかり「はぁ(あからさまに)この調子だとこの振り付けじゃ無理よね。この部分は翡翠が立ち回りやすいように改善して…。」
翡翠「僕、やれるよ!みんなと合わせられる様にするから!」
秋黄実「つってもなぁ…、こんだけ乱れてたら逆に気ぃ使うって。」
翡翠「…。」
微妙な雰囲気になり4人黙り込む
橙也「…きょ、今日はもう遅い時間だしこの辺で終わりにしようぜ、な?」
ゆかり「そうね、身体に負担かけても仕方ないし。帰りましょうか。」
翡翠「僕のせいで進まないよね、本当にごめん。次の練習日までにはちゃんとできるようにするから。」
ゆかり「ホーント、そうしてもらわないと困るわよ。結局出来ませんでしたってならないようにしてよね。」
橙也「そんな言い方はないだろう?翡翠だって頑張ってやってるんだからさ!」
秋黄実「でも、ゆかりの言ってる事も事実だぞ?シングル発表まであと二週間。それまでこうやって全員で合わせられるのが後3回有るかないか…。絶望的じゃね?」
橙也「……、な、なんとかなるって!な?翡翠?」
翡翠「う、うん…。」
橙也「とりあえず、今日はもう遅いし練習は終わりにして…。」
ゆかり「(被せるように)私、行く所あるからもう行くわね。それと翡翠。」
翡翠「え?な、なに?」
ゆかり「次の練習までに苦手な所を無くして来てよね。じゃ、また。」
ゆかり、退出
秋黄実「かー(不機嫌そうに)なーにが『(女声)じや、また。』だよ、統率力が必要ならもっとコッチ側に来いって話だよな。」
翡翠「まぁ、ああいう所がゆかりちゃんのいい所だし、言ってる事は事実だから仕方ないよ。」
橙也「それでも、やっぱりグループなんだから皆で乗り越えていかないとさ。」
翡翠「そう、だね。………ごめん、僕も帰るね。」
秋黄実「あ?ちょ、なんだよ急に。帰るなら俺も一緒に…(翡翠、退出)って、行っちゃったし…。ったく…翡翠の奴、一度沼ると上がってこれねぇくせしてなんにも言わねぇんだよなぁ…。」
橙也「追いかけなくていいのか?」
秋黄実「俺らはここの片付けとか戸締りしてかねぇとダメだろ。」
橙也「それ位俺一人だって出来るし、行ってこいよ。秋黄実は翡翠の一番の『親友』なんだろ?」
秋黄実「そんなんじゃねぇって、ただの腐れ縁。…じゃあ、悪いけどここの事頼めるか?」
橙也「俺に任せとけっ!」
秋黄実「サンキュー、じゃまたなっ!」
橙也「おう!」
秋黄実、退出
橙也「ふぅ…。じゃ俺もこのスタジオの片付けして帰ろうっと。」
橙也ナレ「この所、俺達は妙なプレッシャーを感じている。先輩で今超人気アイドルの『Lunar Eclipse』の弟分としてデビューをしてから、その期待と好奇の目に、まだ未熟な俺達はその大きな期待に押し潰されそうになってる。プロデューサーは『君達は君達らしく』って言うけど、『俺達らしい』ってなんだろう…?」
橙也「さてと、片付けも終わったし鍵を閉めして帰るか。」
橙也(M『COLORLESS PAINT』のユニット名は『色のない絵の具』。透明なキャンパスというファンをどう俺達色に染めるか…。)
紅「お?そこにいるちっこいのは…、おー、やっぱり橙也じゃん、こんな時間まで練習?」
橙也「紅さん。」
紅「なんだよ、辛気臭ぇツラしやがって、誰かと喧嘩でもしたか?」
橙也「喧嘩ならまだいいんですけどね…。はぁ…(溜息)」
紅「なに、もしかして行き詰まっちゃってる?おにーさんに話してみ?」
橙也「実は…。」
場面変更:秋黄実、翡翠を見つけて
秋黄実「やーっぱりココに居たか。お前わかり易すぎ。」
翡翠「うるさいなぁ…。いいだろ、ココが好きなんだから。」
秋黄実「だよなぁ。でも、ここはお前だけじゃなくて『俺らの場所』だろ?俺達がアイドルやるって決めた時、ココで二人でてっぺん取ろうぜって言ったろ?」
翡翠「…そう、だね。でも、僕はそのてっぺん、取れそうに無いや…。」
秋黄実「あ?なんでだよ、俺と翡翠なら絶対に大丈夫だって!」
翡翠「どうしてそんな自信たっぷりに言えるんだよ!?どうみたって僕は皆の足引っ張ってるし、ゆかりちゃん怒らせて橙也君には気を使わせて、その上サネにまで…。」
翡翠、黙り込む
秋黄実「俺が、なんだよ。」
翡翠「別になんでもない。」
秋黄実「ちゃんと話せっていつも言ってるだろ!?なんでお前はそうやって押し黙って一人で解決しようとすんだよ!?」
翡翠「…うるさいっ!僕の気持ちなんてこれっぽちも分かってない癖に親友ヅラしないでよ!…あ…。」
秋黄実「…そうかよ、そう思ってたのは俺だけって事かよ。」
翡翠「ちがっ…。」
秋黄実「(被せて怒り気味で)こんな風に追いかけて来たのも余計なお世話だったって事か。勝手にウジウジしてろよ!もう知らねっ!」
翡翠「まって、サネ!違う、そうじゃなくて…。」
秋黄実の姿はなく
翡翠M(勢いで酷い事を言ってしまった…。本当はそんな事思ってない…。だけど、一人でどんどん先へ進んでしまうサネが羨ましくて、妬ましい…。出来ない自分への苛立ちをサネにぶつけても仕方がないのに…。)
場面変更:ゆかり、一人で別スタジオにて練習中
ゆかり「はぁ…はぁ…、ダメだ…、こんなんじゃトップアイドルなんて夢のまた夢だ…。」
ゆかりM(僕がしっかりしなきゃ…僕がちゃんと完璧にやり遂げなきゃまだまだアンバランスなCOLORLESS PAINTをトップへ押し上げる為には僕が…。)
藍「こんな時間まで練習かい?」
ゆかり「藍、さん!?なんでここに…。」
藍「いやぁ、このスタジオに荷物全部置いてきちまってな。」
ゆかり「全部って…帰る時なんか変だと思わなかったの?」
藍「思わなかったんだな、コレが。」
ゆかり「…はぁ…藍さんって見た目と中身のギャップが三人の中で一番あるよね。」
藍「そうか?俺はアイドルしてる時も普段も同じ様にしてるけど?」
ゆかり「あっそう。」
藍「にしても、相変わらず頑張り屋だな、ゆかりは。(頭を撫でて)」
ゆかり「ちよっ…もぅ、やめてよね。もう僕は子供じゃないんだからね。」
藍「すまんすまん、でもゆかりがまたCOLORLESS PAINTでアイドルをするって聞いた時はホントに驚いたよ。しかも…プッ(笑いだし)女の子のフリしてとか…。初めてあの格好見た時は笑いを堪えるのマジで大変だったわ。(半笑い気味で)」
ゆかり「うるさいっ!僕が一番驚いてるんだからね。なんで僕が女の子のフリなんてしなきゃならない訳?ホント意味わかんない。」
藍「まぁまぁ、そこはあのプロデューサーの事だからいろいろ策があるんだろ。」
ゆかり「何となくだったら絶対許さないけどね。(不貞腐れて)」
藍「でも、ちゃんと完璧に女の子してるじゃん、さすがゆかり。」
ゆかり「やるからには最後までやり通す主義なんで。」
藍「そうだったな。さて、荷物も無事だしもう遅いから帰るぞ、ゆかり。」
ゆかり「は?僕はまだ残るけど?」
藍「あのなぁ…一応は女の子してるんだから気をつけなきゃダメだろ。」
ゆかり「あー…そういう事。……(暫く考え)そうだね、女装して襲われたなんて恥ずかしくて言えたもんじゃないし。」
藍「いや、そうじゃなくて…まぁいいか。なら早く準備しとけよ。」
ゆかり「はーい。」
・場面変更:控え室にて
橙也ナレ「あれから三日が経った。今日俺は一人での仕事。なんだかモヤモヤしたままだけど逆に一人でよかったのかもしれない。あのまま四人で仕事をしても上手くいかなかったと思う。」
橙也M(今日の仕事は…え…百花繚乱とかぁ…えっと、仕事内容は…うわぁ……、どうしよ…。)
山吹「おっはよーございまーす!百花繚乱の山吹でぇーす!(元気よく)」
若菜「うるさいよ、山吹。鼓膜破れるかと思ったじゃん。おはようございます、同じく百花繚乱の若菜です。よろしくお願いします。」
橙也「おはよう、ございます。COLORLESS PAINTの橙也です。」
若菜「君が…、最近伸びてきてるってうちのプロデューサーが…。」
山吹「橙也ぁ~♪やっと一緒にお仕事出来るねぇ♪(嬉しそうに抱き着いて)」
橙也「うわぁぁ!ちょっと、やめてよ。恥ずかしいだろ!」
若菜「……山吹。」
山吹「え?なぁに?若菜。」
若菜「(怒り気味で)この人とどういう関係なんだっ!?恋愛禁止とは言わないけど、一応アイドルなんだからスキャンダルになる様な行動は謹んで…。」
橙也「あ、いや、誤解ですよ!」
若菜「は?この状況を見てなにを誤解するって言うんだ?」
橙也「本当に誤解なんですってば!もぅ!いつまで抱き着いてんだよ!姉ちゃん!」
山吹「えぇー、お互いお仕事忙しくて最近まともに話してないじゃん?お姉ちゃん寂しくてぇ。」
若菜「姉ちゃんって……まさか、山吹の弟っ!?」
橙也「はい、姉がいつもお世話になってます。」
若菜「二人が姉弟…。だとしても、抱き着くのはやめた方がいいよ、山吹。」
橙也「そうだよ、姉ちゃん。俺ももう高校生なんだよ?」
山吹「わかったよぅ。はぁ…可愛い弟に嫌われたくないもんね。」
若菜「まったく、危機感全く感じてないようだけど今後も気をつけてくれよ。」
山吹「はぁい…。でもさー、今日のお仕事って雑誌の撮影でしょ?確かティーンズ向けの。内容はまだ聞いてないけど、そういうシーンの撮影もあるんじゃない?」
若菜「それは仕事として割り切ってやるだけでしょ。スタッフの方達は知らないんだから仕方がないよ。」
橙也「え?ちょっと待って『そういうシーン』って?なんの事?」
山吹「そりゃ、見つめ合ったり手を繋いだりとかかな?どっちとやるかは分からないけど。」
橙也「そんなの聞いてないっ!俺にはムリだよ!」
山吹「だぁいじょうぶ!お姉ちゃんがついてるぞ!」
橙也「それが一番心配なんじゃないか…。」
若菜「そうだね。はぁ…(溜息)橙也さんも苦労するね。」
橙也「苦労って言うか心配、かな。(苦笑い)あ、それと『橙也』でいいよ、若菜さん。」
若菜「え?そう?なら僕の事も『若菜』でいいから。」
橙也「わかった!これから姉共々、よろしくなっ!(満面の笑み)」
若菜「よろしく。」
山吹「ほぉらっ!二人とも、そろそろ始まるみたいだよ、行こっ!」
場面変更:その日の夜、Lunar Eclipseの三人
紅「今日のお仕事これにて終了っと!お疲れー。」
朱雀「はぁ、疲れた…。ただのインタビューだったのになんでこんなに疲れるんだ…?」
藍「紅のバカがバレないかヒヤヒヤしてたもんなぁ、朱雀。」
朱雀「…はぁ、それもそうなんですけど、ねぇ…。(呟くように)藍さんも藍さんだから余計に疲れるんだよなぁ…この二人、顔も良いし歌も上手いから黙ってれば俗に言う『イケメン』なのに…。」
紅「おい朱雀、何ひとりでブツブツ言ってんだよ、てめぇはよ。んな事よりさぁー、あの女俺等を呼びつけといて当の本人にいねぇとはどういう了見なんだよ。」
藍「あー、そういえば見当たらないねぇ。どこかに出かけたのかな?」
朱雀「いくら変人プロデューサーとはいえ呼びつけておいて出掛けるなんて事、しないと思いますけど?それに待ってればすぐに来るって。」
紅「俺早く帰って藍んちで酒振舞って貰うんだからさぁー。」
藍「はぁ?そんな約束いつしたんだ?」
紅「俺が今決めたの♡」
朱雀「あのなぁ、お前こないだも突然伺ったろ?暫く禁酒しろっ!」
紅「俺と言えば『酒』、酒と言えば『俺』じゃん?」
朱雀「全く意味わかんねぇ、ホントバカだなお前…。」
扉が空き女プロデューサー登場
女プロデューサー「おお、集まっているね、諸君。」
紅「遅せぇよプロデューサー、なぁにやってたんだよ。」
女プロデューサー「いやぁ、すまない。ちょっと込み入った話をしていてね。(咳払い)ところで君達、アイドルフェス『Stride future』を知っているかい?」
紅「おおっ!アイドルフェスかぁ!いいなそれ!」
朱雀「俺達があのフェスにってことですか?プロデューサーさん。」
女プロデューサー「あぁ、そうだ。君達ともう一組は『COLORLESS PAINT』に出場してもらおうと思っていてね。」
藍「『COLORLESS PAINT』…あの子がいるユニットか…。」
紅「はいはーい!質問があるんだけど?」
女プロデューサー「なんだい?紅。」
紅「アイドルフェスって何やんの?」
三人、無言になり
紅「え?なんでみんな黙っちゃうの?おーい、朱雀ぅー?藍ぃー?」
朱雀「はぁ~…(深いため息)お前さぁ、わかってて言ってたんじゃねぇの?」
藍「まぁ、紅だから仕方ないよ。いいかい?よく聞けよ紅。アイドルフェス『Stride future』は様々なアイドル達が集まりその頂点を競うフェスだよ。」
紅「アイドルの…頂点…。」
紅、暫く黙り
朱雀「どした?紅。」
紅「俺達に打って付けのフェスじゃねぇよっ!なぁなぁ!それに出るって事は新曲とか用意してんだろ?なぁって!!」
女プロデューサー「ええい、うるさいっ!当たり前だろう。これが君達の新曲だ。」
プロデューサー、書類とデータを渡して
藍「…(貰った書類を眺めて)この曲難しくないか?」
朱雀「そう、ですね…。でも、やりがいがありそうだ。」
紅「どんな曲だろうと俺達にかかればおてのものよ!」
女プロデューサー「その意気だ、紅。朱雀に藍も精進してくれたまえよ。」
紅「へーい。」
朱雀・藍「はい。」
(ここは同時に)
Lunar Eclipseの三人が退出し思うプロデューサー一人
女プロデューサーM(さて、Lunar Eclipseは大丈夫だろうが、問題はCOLORLESS PAINTだな。彼等は今どうしているだろうか…。)
一話、完
女プロデューサー「ところで君、アイドルにならないかい?」
橙也ナレ「そう街で声をかけられて始まった俺のアイドル生活。ゆかり、秋黄実、翡翠と俺で4人組グループ【COLORLESS PAINT】と言うユニットを組み日々奮闘中。アイドルに憧れていた俺は夢を叶える為にこの3人と頂点を目指している。これは、まだまだ始まったばかりの俺達の物語。」
ゆかり「翡翠っ!そこ!ズレてる!やり直し!次のシングルまで時間が無いんだからね!」
秋黄実「だぁ~もう!なんでズレんのかな~
!(イラついていて)」
翡翠「ご、ごめん…、次はちゃんとやるから…。」
橙也「大丈夫だよ、翡翠。ゆっくりやってみようよ。」
橙也ナレ「ただちょっと…、ホントにちょっとだけギスギスしてるんだよな。」
ゆかり「はぁ(あからさまに)この調子だとこの振り付けじゃ無理よね。この部分は翡翠が立ち回りやすいように改善して…。」
翡翠「僕、やれるよ!みんなと合わせられる様にするから!」
秋黄実「つってもなぁ…、こんだけ乱れてたら逆に気ぃ使うって。」
翡翠「…。」
微妙な雰囲気になり4人黙り込む
橙也「…きょ、今日はもう遅い時間だしこの辺で終わりにしようぜ、な?」
ゆかり「そうね、身体に負担かけても仕方ないし。帰りましょうか。」
翡翠「僕のせいで進まないよね、本当にごめん。次の練習日までにはちゃんとできるようにするから。」
ゆかり「ホーント、そうしてもらわないと困るわよ。結局出来ませんでしたってならないようにしてよね。」
橙也「そんな言い方はないだろう?翡翠だって頑張ってやってるんだからさ!」
秋黄実「でも、ゆかりの言ってる事も事実だぞ?シングル発表まであと二週間。それまでこうやって全員で合わせられるのが後3回有るかないか…。絶望的じゃね?」
橙也「……、な、なんとかなるって!な?翡翠?」
翡翠「う、うん…。」
橙也「とりあえず、今日はもう遅いし練習は終わりにして…。」
ゆかり「(被せるように)私、行く所あるからもう行くわね。それと翡翠。」
翡翠「え?な、なに?」
ゆかり「次の練習までに苦手な所を無くして来てよね。じゃ、また。」
ゆかり、退出
秋黄実「かー(不機嫌そうに)なーにが『(女声)じや、また。』だよ、統率力が必要ならもっとコッチ側に来いって話だよな。」
翡翠「まぁ、ああいう所がゆかりちゃんのいい所だし、言ってる事は事実だから仕方ないよ。」
橙也「それでも、やっぱりグループなんだから皆で乗り越えていかないとさ。」
翡翠「そう、だね。………ごめん、僕も帰るね。」
秋黄実「あ?ちょ、なんだよ急に。帰るなら俺も一緒に…(翡翠、退出)って、行っちゃったし…。ったく…翡翠の奴、一度沼ると上がってこれねぇくせしてなんにも言わねぇんだよなぁ…。」
橙也「追いかけなくていいのか?」
秋黄実「俺らはここの片付けとか戸締りしてかねぇとダメだろ。」
橙也「それ位俺一人だって出来るし、行ってこいよ。秋黄実は翡翠の一番の『親友』なんだろ?」
秋黄実「そんなんじゃねぇって、ただの腐れ縁。…じゃあ、悪いけどここの事頼めるか?」
橙也「俺に任せとけっ!」
秋黄実「サンキュー、じゃまたなっ!」
橙也「おう!」
秋黄実、退出
橙也「ふぅ…。じゃ俺もこのスタジオの片付けして帰ろうっと。」
橙也ナレ「この所、俺達は妙なプレッシャーを感じている。先輩で今超人気アイドルの『Lunar Eclipse』の弟分としてデビューをしてから、その期待と好奇の目に、まだ未熟な俺達はその大きな期待に押し潰されそうになってる。プロデューサーは『君達は君達らしく』って言うけど、『俺達らしい』ってなんだろう…?」
橙也「さてと、片付けも終わったし鍵を閉めして帰るか。」
橙也(M『COLORLESS PAINT』のユニット名は『色のない絵の具』。透明なキャンパスというファンをどう俺達色に染めるか…。)
紅「お?そこにいるちっこいのは…、おー、やっぱり橙也じゃん、こんな時間まで練習?」
橙也「紅さん。」
紅「なんだよ、辛気臭ぇツラしやがって、誰かと喧嘩でもしたか?」
橙也「喧嘩ならまだいいんですけどね…。はぁ…(溜息)」
紅「なに、もしかして行き詰まっちゃってる?おにーさんに話してみ?」
橙也「実は…。」
場面変更:秋黄実、翡翠を見つけて
秋黄実「やーっぱりココに居たか。お前わかり易すぎ。」
翡翠「うるさいなぁ…。いいだろ、ココが好きなんだから。」
秋黄実「だよなぁ。でも、ここはお前だけじゃなくて『俺らの場所』だろ?俺達がアイドルやるって決めた時、ココで二人でてっぺん取ろうぜって言ったろ?」
翡翠「…そう、だね。でも、僕はそのてっぺん、取れそうに無いや…。」
秋黄実「あ?なんでだよ、俺と翡翠なら絶対に大丈夫だって!」
翡翠「どうしてそんな自信たっぷりに言えるんだよ!?どうみたって僕は皆の足引っ張ってるし、ゆかりちゃん怒らせて橙也君には気を使わせて、その上サネにまで…。」
翡翠、黙り込む
秋黄実「俺が、なんだよ。」
翡翠「別になんでもない。」
秋黄実「ちゃんと話せっていつも言ってるだろ!?なんでお前はそうやって押し黙って一人で解決しようとすんだよ!?」
翡翠「…うるさいっ!僕の気持ちなんてこれっぽちも分かってない癖に親友ヅラしないでよ!…あ…。」
秋黄実「…そうかよ、そう思ってたのは俺だけって事かよ。」
翡翠「ちがっ…。」
秋黄実「(被せて怒り気味で)こんな風に追いかけて来たのも余計なお世話だったって事か。勝手にウジウジしてろよ!もう知らねっ!」
翡翠「まって、サネ!違う、そうじゃなくて…。」
秋黄実の姿はなく
翡翠M(勢いで酷い事を言ってしまった…。本当はそんな事思ってない…。だけど、一人でどんどん先へ進んでしまうサネが羨ましくて、妬ましい…。出来ない自分への苛立ちをサネにぶつけても仕方がないのに…。)
場面変更:ゆかり、一人で別スタジオにて練習中
ゆかり「はぁ…はぁ…、ダメだ…、こんなんじゃトップアイドルなんて夢のまた夢だ…。」
ゆかりM(僕がしっかりしなきゃ…僕がちゃんと完璧にやり遂げなきゃまだまだアンバランスなCOLORLESS PAINTをトップへ押し上げる為には僕が…。)
藍「こんな時間まで練習かい?」
ゆかり「藍、さん!?なんでここに…。」
藍「いやぁ、このスタジオに荷物全部置いてきちまってな。」
ゆかり「全部って…帰る時なんか変だと思わなかったの?」
藍「思わなかったんだな、コレが。」
ゆかり「…はぁ…藍さんって見た目と中身のギャップが三人の中で一番あるよね。」
藍「そうか?俺はアイドルしてる時も普段も同じ様にしてるけど?」
ゆかり「あっそう。」
藍「にしても、相変わらず頑張り屋だな、ゆかりは。(頭を撫でて)」
ゆかり「ちよっ…もぅ、やめてよね。もう僕は子供じゃないんだからね。」
藍「すまんすまん、でもゆかりがまたCOLORLESS PAINTでアイドルをするって聞いた時はホントに驚いたよ。しかも…プッ(笑いだし)女の子のフリしてとか…。初めてあの格好見た時は笑いを堪えるのマジで大変だったわ。(半笑い気味で)」
ゆかり「うるさいっ!僕が一番驚いてるんだからね。なんで僕が女の子のフリなんてしなきゃならない訳?ホント意味わかんない。」
藍「まぁまぁ、そこはあのプロデューサーの事だからいろいろ策があるんだろ。」
ゆかり「何となくだったら絶対許さないけどね。(不貞腐れて)」
藍「でも、ちゃんと完璧に女の子してるじゃん、さすがゆかり。」
ゆかり「やるからには最後までやり通す主義なんで。」
藍「そうだったな。さて、荷物も無事だしもう遅いから帰るぞ、ゆかり。」
ゆかり「は?僕はまだ残るけど?」
藍「あのなぁ…一応は女の子してるんだから気をつけなきゃダメだろ。」
ゆかり「あー…そういう事。……(暫く考え)そうだね、女装して襲われたなんて恥ずかしくて言えたもんじゃないし。」
藍「いや、そうじゃなくて…まぁいいか。なら早く準備しとけよ。」
ゆかり「はーい。」
・場面変更:控え室にて
橙也ナレ「あれから三日が経った。今日俺は一人での仕事。なんだかモヤモヤしたままだけど逆に一人でよかったのかもしれない。あのまま四人で仕事をしても上手くいかなかったと思う。」
橙也M(今日の仕事は…え…百花繚乱とかぁ…えっと、仕事内容は…うわぁ……、どうしよ…。)
山吹「おっはよーございまーす!百花繚乱の山吹でぇーす!(元気よく)」
若菜「うるさいよ、山吹。鼓膜破れるかと思ったじゃん。おはようございます、同じく百花繚乱の若菜です。よろしくお願いします。」
橙也「おはよう、ございます。COLORLESS PAINTの橙也です。」
若菜「君が…、最近伸びてきてるってうちのプロデューサーが…。」
山吹「橙也ぁ~♪やっと一緒にお仕事出来るねぇ♪(嬉しそうに抱き着いて)」
橙也「うわぁぁ!ちょっと、やめてよ。恥ずかしいだろ!」
若菜「……山吹。」
山吹「え?なぁに?若菜。」
若菜「(怒り気味で)この人とどういう関係なんだっ!?恋愛禁止とは言わないけど、一応アイドルなんだからスキャンダルになる様な行動は謹んで…。」
橙也「あ、いや、誤解ですよ!」
若菜「は?この状況を見てなにを誤解するって言うんだ?」
橙也「本当に誤解なんですってば!もぅ!いつまで抱き着いてんだよ!姉ちゃん!」
山吹「えぇー、お互いお仕事忙しくて最近まともに話してないじゃん?お姉ちゃん寂しくてぇ。」
若菜「姉ちゃんって……まさか、山吹の弟っ!?」
橙也「はい、姉がいつもお世話になってます。」
若菜「二人が姉弟…。だとしても、抱き着くのはやめた方がいいよ、山吹。」
橙也「そうだよ、姉ちゃん。俺ももう高校生なんだよ?」
山吹「わかったよぅ。はぁ…可愛い弟に嫌われたくないもんね。」
若菜「まったく、危機感全く感じてないようだけど今後も気をつけてくれよ。」
山吹「はぁい…。でもさー、今日のお仕事って雑誌の撮影でしょ?確かティーンズ向けの。内容はまだ聞いてないけど、そういうシーンの撮影もあるんじゃない?」
若菜「それは仕事として割り切ってやるだけでしょ。スタッフの方達は知らないんだから仕方がないよ。」
橙也「え?ちょっと待って『そういうシーン』って?なんの事?」
山吹「そりゃ、見つめ合ったり手を繋いだりとかかな?どっちとやるかは分からないけど。」
橙也「そんなの聞いてないっ!俺にはムリだよ!」
山吹「だぁいじょうぶ!お姉ちゃんがついてるぞ!」
橙也「それが一番心配なんじゃないか…。」
若菜「そうだね。はぁ…(溜息)橙也さんも苦労するね。」
橙也「苦労って言うか心配、かな。(苦笑い)あ、それと『橙也』でいいよ、若菜さん。」
若菜「え?そう?なら僕の事も『若菜』でいいから。」
橙也「わかった!これから姉共々、よろしくなっ!(満面の笑み)」
若菜「よろしく。」
山吹「ほぉらっ!二人とも、そろそろ始まるみたいだよ、行こっ!」
場面変更:その日の夜、Lunar Eclipseの三人
紅「今日のお仕事これにて終了っと!お疲れー。」
朱雀「はぁ、疲れた…。ただのインタビューだったのになんでこんなに疲れるんだ…?」
藍「紅のバカがバレないかヒヤヒヤしてたもんなぁ、朱雀。」
朱雀「…はぁ、それもそうなんですけど、ねぇ…。(呟くように)藍さんも藍さんだから余計に疲れるんだよなぁ…この二人、顔も良いし歌も上手いから黙ってれば俗に言う『イケメン』なのに…。」
紅「おい朱雀、何ひとりでブツブツ言ってんだよ、てめぇはよ。んな事よりさぁー、あの女俺等を呼びつけといて当の本人にいねぇとはどういう了見なんだよ。」
藍「あー、そういえば見当たらないねぇ。どこかに出かけたのかな?」
朱雀「いくら変人プロデューサーとはいえ呼びつけておいて出掛けるなんて事、しないと思いますけど?それに待ってればすぐに来るって。」
紅「俺早く帰って藍んちで酒振舞って貰うんだからさぁー。」
藍「はぁ?そんな約束いつしたんだ?」
紅「俺が今決めたの♡」
朱雀「あのなぁ、お前こないだも突然伺ったろ?暫く禁酒しろっ!」
紅「俺と言えば『酒』、酒と言えば『俺』じゃん?」
朱雀「全く意味わかんねぇ、ホントバカだなお前…。」
扉が空き女プロデューサー登場
女プロデューサー「おお、集まっているね、諸君。」
紅「遅せぇよプロデューサー、なぁにやってたんだよ。」
女プロデューサー「いやぁ、すまない。ちょっと込み入った話をしていてね。(咳払い)ところで君達、アイドルフェス『Stride future』を知っているかい?」
紅「おおっ!アイドルフェスかぁ!いいなそれ!」
朱雀「俺達があのフェスにってことですか?プロデューサーさん。」
女プロデューサー「あぁ、そうだ。君達ともう一組は『COLORLESS PAINT』に出場してもらおうと思っていてね。」
藍「『COLORLESS PAINT』…あの子がいるユニットか…。」
紅「はいはーい!質問があるんだけど?」
女プロデューサー「なんだい?紅。」
紅「アイドルフェスって何やんの?」
三人、無言になり
紅「え?なんでみんな黙っちゃうの?おーい、朱雀ぅー?藍ぃー?」
朱雀「はぁ~…(深いため息)お前さぁ、わかってて言ってたんじゃねぇの?」
藍「まぁ、紅だから仕方ないよ。いいかい?よく聞けよ紅。アイドルフェス『Stride future』は様々なアイドル達が集まりその頂点を競うフェスだよ。」
紅「アイドルの…頂点…。」
紅、暫く黙り
朱雀「どした?紅。」
紅「俺達に打って付けのフェスじゃねぇよっ!なぁなぁ!それに出るって事は新曲とか用意してんだろ?なぁって!!」
女プロデューサー「ええい、うるさいっ!当たり前だろう。これが君達の新曲だ。」
プロデューサー、書類とデータを渡して
藍「…(貰った書類を眺めて)この曲難しくないか?」
朱雀「そう、ですね…。でも、やりがいがありそうだ。」
紅「どんな曲だろうと俺達にかかればおてのものよ!」
女プロデューサー「その意気だ、紅。朱雀に藍も精進してくれたまえよ。」
紅「へーい。」
朱雀・藍「はい。」
(ここは同時に)
Lunar Eclipseの三人が退出し思うプロデューサー一人
女プロデューサーM(さて、Lunar Eclipseは大丈夫だろうが、問題はCOLORLESS PAINTだな。彼等は今どうしているだろうか…。)
一話、完
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる