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暗闇

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病院に着くと。
すごく慌ただしくて、
緊急手術が始まった。
神様どうか、華を助けてくれ。
 それから30分しかたってないのに、
手術室のドアが開いた。

「先生。華は。」
焦りながらも俺は華の容態を聞いた。
「脳の損傷、出血が多く、最善を尽くしましたが...これから娘さんのご遺体を安置所に移動させて頂きます。一緒に来ていただけますか。」
俺と華のお母さんはその場に崩れ落ちた。
「華。なんでだよ。.....はな。」
俺はグルグル思考が止まらなくなった。
華のお母さんは声を漏らしながら泣いている。

それからは何もかもが早かった。
お通夜に葬式。全てが淡々と終わっていった。
お通夜でも葬式でも俺は涙ひとつ流すことが出来なかった。
まだどこかに華がいて、
ひょっこり顔を出しながら
「事故っちゃった。」って苦笑いしながら言ってくれるんじゃないかって。
そんな事を考えていた。

シーンと静まり返った部屋に1人。
あれからずっとカーテンが閉まっている。
カーテンを開けたら、いつも通り華がいる。 
もし今、開けてしまったらいつも通りの日常がなくなってしまうのではないか。そう思った。でもまだ華が居なくなったなんて信じていなくて、
抜け殻みたいになってた。
母さんが部屋に入ってきて、そんな俺を見て言った、

「いつまでそうしてるつもり?カーテンぐらいは開けなさい。暗い空気になるでしょう。」
そう言ってカーテンを開けた。
でもそこには華が居ない。

「なー。母さん。華はどこだよ。なーなんで....どーして華が。」そこでやっと俺は華が消えた現実を少し信じた。そして自然と涙が出てきた。
「渉。華ちゃんはもう....」
母さんが泣いていた。
滅多に泣かない母さんさえも泣いていた。

母さんは華の事が大好きだった。
俺が華と付き合った時も1番喜んでくれた。
華のお母さんと一緒になって祝福してくれた。

「...母さん俺な、あの日華と喧嘩したんだ。
謝りに行って、まだ華帰ってなくてさ、
何でかわかんないけど、いやな感じがして、
そしたら電話がなってさ、華がさ。」
そこでもっと涙が出てきた。
なんで華だったんだよ。
そう思った。あの時、 
華のことを直ぐに追いかけていたら。
華を捕まえて、謝って、仲直りしたら。
こんなことにはならなかったんじゃないのか。

「俺が悪いんだ。俺も、華のところに行きたい。」
華が居ないなんて俺には考えられない。
....なんでだよ。... 置いていくなよ。
「パチン...」
そんな音とともに左頬に痛みが走った。
「馬鹿なこと考えないでよ。」
母さんがないていた。
「どんなに辛くても、あなたは華ちゃんの分まで生きないといけないの。」
「...華の分まで。」
華がいないのに。俺はどうやって生きていけばいんだ。

隣にいるのが当たり前で、
いつもそうだからって、
後回しにして、
大切な人を失って。 
それでも俺は華の分まで生きるのか。
生きれるのか。そんな資格あるのか。
「渉くん。私からもお願い。華の分まで生きて。」
家に来ていた華のお母さん。
俺はまた泣き出した。
子供みたいに泣いた。
だらしなく見られてもいい。
今はただただ少しでも馬鹿なことを考えた自分が情けなくて、華のことをもっと大事にしていたらと後悔して。色んな感情でぐちゃぐちゃになって。

それから俺は華の分まで生きると決めた。
華のために自分が出来ること。
華は生きている。
俺の中でずっと。

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