桜の木の下の少女

Nami📖🐬

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満開の桜の木の下で佇む少女

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 陽だまりの教室。静かに筆を動かしていたのは、高校3年生になったばかりの美術部員。青山美月。
 淡い桜色に染まったキャンバスには、満開の桜の木の下で佇むひとりの少女が描かれている。少女の横顔は、どこか美月自身に似ている。

 美月は、幼い頃から絵を描くことが大好きだった。
 特に風景画を描くのが得意で、数々のコンクールで入賞を果たしてきた。しかし、ここ数ヶ月は思うように絵が描けなくなっていた。

 ある日ひょんなことから、同じクラスの男子、佐藤亮太と話をするようになる。
 亮太は明るく穏やかな性格で、美月は亮太と話していると自然に笑顔になっている自分に気付く。

「きれいな絵」
 描きかけの絵を見て亮太は言った。

 亮太の言葉に勇気づけられ、思うように絵を書けなくなっていた美月は、再び筆を握る。
 そして、途中になっていた満開の桜の木の下で佇む少女の絵を再び描き始めた。

 しかし、美月は絵を完成させることができない。
 少女の顔を描く時、どうしても手が止まってしまう。

「この絵はすごく素敵だと思う。でも、何かが足りない気がする」
 亮太は、絵を見つめながら言った。

 美月は、亮太の言葉に考え込む。そして、気付いた。
「そうか、この絵には、大切なものが足りないんだ」

 美月は、筆を手に取り、少女の顔にそっと舞い散る桜の花びらを描き足した。

 絵が完成した時、美月は自分が描いていた少女が誰なのかを理解した。
 その少女は幼い頃の自分自身だった。

 美月は、絵を見つめながら涙ぐんだ。
「ありがとう、佐藤くん。おかげで、大切なことに気付けたよ」

 ただ、絵を描くことが大好きだった幼い頃の自分。
 しかし、成長するとともに、周囲からの評価を気にし、プレッシャーを感じ、自分らしさを失ってしまっていた。
 幼い頃は、プロの画家になることを夢見ていた。
 しかし、不安やプレッシャーから、将来進むべき道に迷うようになっていた。

 亮太は、美月の才能を信じ、美月の手を握りしめた。
「青山の絵、すごく好きだから、これからもずっと書き続けて欲しい」

 美月は、亮太の言葉に勇気をもらい、再び夢に向かって歩き出すことを決意した。
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