|共同住宅《アパート》『フェアリーゴッドマザーハウス』の不可思議な日常茶飯事

ふゆき

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【1話目】

家の面倒をみるならハウスメイドの技術も必要だったから

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 引っ越してきてすぐの頃。廉太郎は、なんで男の人じゃなくて女の人の言葉を覚えたのかと、ダイフクに聞いてみたことがある。
 ダイフクはオスの三毛ネコだ。
 妖精に性別がなかったとしても、『器』である身体には性別があるのだから、身体にあわせたってよかったはずだ。
 まわりに女の人しかいなかったのなら覚えようがないけれど、元祖ダイフクの飼い主は、男の人だったという。
 ならば、男の人の言葉を覚えようと思えば覚えられた。
 なのにどうしてわざわざ女の人の、肝っ玉母さん風の口調を覚えようと思ったのか、不思議に思ったのだ。
 するとダイフクはしばらくじっと考えた後で、「家の面倒をみるならハウスメイドの技術も必要だったから」だと答えた。
 どうやら、ダイフクはその人の口調だけでなく、持てる技術のすべてを習得したらしい。
 そのおかげか、ダイフクはいまや大妖精でありながら、立派なハウスメイドだ。
 この共同住宅アパートの前の持ち主が亡くなった後。
 長年無人のままだった家が朽ちずにあったのは、ひとえにダイフクの働きによるものである。

 誰も住まなくなった別荘は売りに出され、家妖精であるダイフクを見つけたいまの持ち主が、大妖精憑きの家を朽ちさせるのももったいないと買い取り、『家』は人が住まなければ荒れるからと、共同住宅アパートにしてしまったらしい。
 ちなみに、廉太郎はまだ会ったことがないが、いまのこの家の持ち主ーー大家さんも、人の世に溶け込んで生きている人ならざるモノだったりする。
 なので当然、住人も人ならざるものや『視える』人ばかりだ。
 廉太郎があっさり部屋を借りることが出来たのは、オジサンが「この子は視える目を持っている」と保証人になってくれたからだ。
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