26 / 48
【1話目】
家の面倒をみるならハウスメイドの技術も必要だったから
しおりを挟む
引っ越してきてすぐの頃。廉太郎は、なんで男の人じゃなくて女の人の言葉を覚えたのかと、ダイフクに聞いてみたことがある。
ダイフクはオスの三毛ネコだ。
妖精に性別がなかったとしても、『器』である身体には性別があるのだから、身体にあわせたってよかったはずだ。
まわりに女の人しかいなかったのなら覚えようがないけれど、元祖ダイフクの飼い主は、男の人だったという。
ならば、男の人の言葉を覚えようと思えば覚えられた。
なのにどうしてわざわざ女の人の、肝っ玉母さん風の口調を覚えようと思ったのか、不思議に思ったのだ。
するとダイフクはしばらくじっと考えた後で、「家の面倒をみるならハウスメイドの技術も必要だったから」だと答えた。
どうやら、ダイフクはその人の口調だけでなく、持てる技術のすべてを習得したらしい。
そのおかげか、ダイフクはいまや大妖精でありながら、立派なハウスメイドだ。
この共同住宅の前の持ち主が亡くなった後。
長年無人のままだった家が朽ちずにあったのは、ひとえにダイフクの働きによるものである。
誰も住まなくなった別荘は売りに出され、家妖精であるダイフクを見つけたいまの持ち主が、大妖精憑きの家を朽ちさせるのももったいないと買い取り、『家』は人が住まなければ荒れるからと、共同住宅にしてしまったらしい。
ちなみに、廉太郎はまだ会ったことがないが、いまのこの家の持ち主ーー大家さんも、人の世に溶け込んで生きている人ならざるモノだったりする。
なので当然、住人も人ならざるものや『視える』人ばかりだ。
廉太郎があっさり部屋を借りることが出来たのは、オジサンが「この子は視える目を持っている」と保証人になってくれたからだ。
ダイフクはオスの三毛ネコだ。
妖精に性別がなかったとしても、『器』である身体には性別があるのだから、身体にあわせたってよかったはずだ。
まわりに女の人しかいなかったのなら覚えようがないけれど、元祖ダイフクの飼い主は、男の人だったという。
ならば、男の人の言葉を覚えようと思えば覚えられた。
なのにどうしてわざわざ女の人の、肝っ玉母さん風の口調を覚えようと思ったのか、不思議に思ったのだ。
するとダイフクはしばらくじっと考えた後で、「家の面倒をみるならハウスメイドの技術も必要だったから」だと答えた。
どうやら、ダイフクはその人の口調だけでなく、持てる技術のすべてを習得したらしい。
そのおかげか、ダイフクはいまや大妖精でありながら、立派なハウスメイドだ。
この共同住宅の前の持ち主が亡くなった後。
長年無人のままだった家が朽ちずにあったのは、ひとえにダイフクの働きによるものである。
誰も住まなくなった別荘は売りに出され、家妖精であるダイフクを見つけたいまの持ち主が、大妖精憑きの家を朽ちさせるのももったいないと買い取り、『家』は人が住まなければ荒れるからと、共同住宅にしてしまったらしい。
ちなみに、廉太郎はまだ会ったことがないが、いまのこの家の持ち主ーー大家さんも、人の世に溶け込んで生きている人ならざるモノだったりする。
なので当然、住人も人ならざるものや『視える』人ばかりだ。
廉太郎があっさり部屋を借りることが出来たのは、オジサンが「この子は視える目を持っている」と保証人になってくれたからだ。
0
あなたにおすすめの小説
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
童話絵本版 アリとキリギリス∞(インフィニティ)
カワカツ
絵本
その夜……僕は死んだ……
誰もいない野原のステージの上で……
アリの子「アントン」とキリギリスの「ギリィ」が奏でる 少し切ない ある野原の物語 ———
全16話+エピローグで紡ぐ「小さないのちの世界」を、どうぞお楽しみ下さい。
※高学年〜大人向き
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる