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【2話目】
のそのそ来といてデレデレすんな!
しおりを挟む「ケッ。ギリギリで来といて、女といちゃいちゃしてんじゃねえよ」
わざわざ怖い顔をして絡みにきたクラスメイトーー森山陽翔もそのひとりだ。
コイツは、同情であれなんであれ、ミサキちゃんが廉太郎を『特別扱い』するのが気に入らないのか、何かにつけてキツくあたってくる。
廉太郎本人でさえ、『特別扱い』は『特別扱い』でも、『仲間外れにしたらかわいそうな存在』に向ける『気づかい』でしかないと気がついているというのに、だ。
ちょっとしたことですぐ、陽翔は廉太郎に絡んでくる。
ひょっとしたら、陽翔はミサキちゃんが廉太郎に構うのが気に入らないのではなく、廉太郎を攻撃する口実にしたいだけかも知れない。
「学校でいつも『五分前行動』するよう言われてるだろうが。のそのそ来といてデレデレすんな!」
陽翔は、クラスの中でも背が高くて体も大きい。
顔つきもきつく、睨まれるとそれなりに威圧感がある。
背が低くて体も小さい廉太郎からしてみれば、見下ろされただけでも強く押さえつけられているような感覚があった。
両親と暮らしていた頃の廉太郎なら、なるべく近寄らないようにしていたタイプだ。
面倒事を起こせば、両親にこっぴどく叱られる。
ケンカなんてもってのほか。
自分を守るためのケンカであっても、両親はまず廉太郎を責める。
理由はなんであれ、両親にとって問題なのは、『廉太郎が騒ぎを起こした』という事実だけだからだ。
それがいかに理不尽なことだったのか、いまならわかる。
でも両親と暮らしていた頃の廉太郎は、なにもかも我慢してひとりで耐えることが、『いい子』であり続けることなのだと、本気で信じていた。
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