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【2話目】

女の子って痛いモノなんだなあ

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 悲しいかな、廉太郎が授業以外で女の子と手をつないだのは、これがはじめてだ。
 ついでに言うなら、背後から女の子に抱きつかれたーーヘッドロックを抱きついたと言っていいならーーはじめてである。
 ふつう、女の子に抱きつかれたり手を握られたりすれば、多少なりとも柔らかさやいい匂いにどぎまぎするモノだと思っていた廉太郎は、どちらの感想も「痛い」のみなことに、場違いだとは思いつつ、ほんのちょっぴり悲しくなる。

 だって、篠田さんはしょっちゅう肩を組んでくるけど、それもどちらかというと「痛い」という感想しかないからだ。
 女の子って痛いモノなんだなあ。
 廉太郎がついついそう思ってしまったとしても、悪くないはずだ。

「え、待って。わたし着替えてきてないよ。着替えないとダメだったの?」

「わたしもそのまま来ちゃった」

「いやいやいや。汚れていなければ着替えなくとも大丈夫じゃないかな? ワタシはほら、休み時間にやったドッジボールで泥だらけになってしまったからね。念のため着替えてきたんだ。同士も言っていただろう? 汚れていたから着替えたと! なあ、そうだろう同士よ!!」

 こちらの話が聞こえたのだろう。
 ミサキちゃんと仲良く話していた女の子たちがあわてだしたのを見て、ガッと廉太郎の肩をーー首?ーーを抱いた相田さんが薄い胸を張る。
 篠田さんもそうだが、相田さんも気安く男子に密着してくるタイプらしい。

「う、うん。オレも、下校の途中で汚しちゃって……」

 内心、女の子に密着されてドギマギしながらも、廉太郎はなるべく平静をよそおって、相田さんに話を合わせる。
 下校の途中というよりも、学校のーークラスの誰かから邪気を移された可能性が高いのだけれど。
 そんなこと、この場で言ったら廉太郎が変な子扱いされるだけである。
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