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第1章 ちびっこ怪獣三匹、異世界に降り立つ
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木本先生はへたり込んだまま立てずにいるし、かろうじて動いている大内先生も、どこか動きがぎこちない。
いつもの先生たちなら、なにかあれば必ず真っ先に生徒の心配をしてくれる。
でもいまは、混乱して泣き出してしまいそうなカエデの様子も、半ば放心状態で立ち尽くしている金堂の姿も、まるで目に入っていないようだった。
たぶんだけれど、大空にひとり放り出されたり、高いところからものすごいスピードで落下し続けたりを、全員が体験したのではなかろうか。
「てゆーか。魔方陣? みたいなのに引きずり込まれてからの、見たこともない場所でしょ? だったらコレはもう、定番の異世界転移よ!」
そんな中、いち早く立ちあがり、辺りを探索していたもうひとりの女の子--幡中梢恵が、しれっとそんなことを言う。
異世界転移。
それはある日突然、知らない世界に飛ばされてしまって始まる物語り。
まあ、状況としては限りなく近い。
魔方陣? みたいなのに引きずり込まれたし、知らない場所で目が覚めた。
途中で紐なしバンジー体験が挟まったりしたけども。
異世界転移定番のシチュエーションだと言われれば、確かにそうだ。
でも、実際のところ、異世界なんてあるんだろうか。
どう思う?
ユーゴとケースケに目だけで問いかけようとした光太は、同じような疑問を浮かべたふたりと目があって、三人でちょっと笑う。
異世界転移だったりした場合。
帰れるパターンと帰れないパターンがある。
帰れないパターンだったりしたら、非常に困る。
だって、明日は祝日お休みだ。
いっぱいいっぱい遊びに行く予定をたてていたのに、帰れなかったら無駄になる。
「幡中。それはアニメや漫画の世界のことだ。物語りと現実を一緒にしちゃいかん」
どこか疲れた表情で、大内先生がため息を吐く。
仲良し三人組がひとりとして欠けていなかったからか、比較的いつも通りなちびっこ怪獣たちの様子を確かめ。
へたり込んでいる木本先生とカエデを立たせ、茫然自失状態の金堂を回収し、と。
辛うじて年長者としての責務を果たしてはいるものの、大内先生だって状況を把握できているわけではないのだろう。
突拍子もないことを言い出されても、対応しきれないとその顔には書いてある。
「でも先生。こっちきてみて? ほらこれ。なんかそれっぽいのがあるよ?」
大内先生の勘弁してくれといった視線もなんのその。
コズエは少し離れた場所で、みんなこっちへ来いと手招きする。
光太には、彼女の指差した先になにかあるようには見えなかった。
あるのは低木くらいなもので、これといって注目すべきモノはなにもない。
ユーゴやケースケにも、なにも見えてはいないのだろう。変な顔をしている。
見渡す限り、なにもない--が。
「ほら早く」
急かされ、しぶしぶ金堂とカエデを促し、木本先生を支えながら歩き出した大内先生につられてなんとはなしに近づいていき--……。
「なんだコレ!?」
みんなで、驚きの声をあげる。
コズエの指差した先。
「これは……石板--いや、石碑か?」
そこに、先ほどまでは確かになかったはずの、びっしりと文字のようなものが刻まれた、大きな石の板が天高くそびえ立っていたからだ。
いつもの先生たちなら、なにかあれば必ず真っ先に生徒の心配をしてくれる。
でもいまは、混乱して泣き出してしまいそうなカエデの様子も、半ば放心状態で立ち尽くしている金堂の姿も、まるで目に入っていないようだった。
たぶんだけれど、大空にひとり放り出されたり、高いところからものすごいスピードで落下し続けたりを、全員が体験したのではなかろうか。
「てゆーか。魔方陣? みたいなのに引きずり込まれてからの、見たこともない場所でしょ? だったらコレはもう、定番の異世界転移よ!」
そんな中、いち早く立ちあがり、辺りを探索していたもうひとりの女の子--幡中梢恵が、しれっとそんなことを言う。
異世界転移。
それはある日突然、知らない世界に飛ばされてしまって始まる物語り。
まあ、状況としては限りなく近い。
魔方陣? みたいなのに引きずり込まれたし、知らない場所で目が覚めた。
途中で紐なしバンジー体験が挟まったりしたけども。
異世界転移定番のシチュエーションだと言われれば、確かにそうだ。
でも、実際のところ、異世界なんてあるんだろうか。
どう思う?
ユーゴとケースケに目だけで問いかけようとした光太は、同じような疑問を浮かべたふたりと目があって、三人でちょっと笑う。
異世界転移だったりした場合。
帰れるパターンと帰れないパターンがある。
帰れないパターンだったりしたら、非常に困る。
だって、明日は祝日お休みだ。
いっぱいいっぱい遊びに行く予定をたてていたのに、帰れなかったら無駄になる。
「幡中。それはアニメや漫画の世界のことだ。物語りと現実を一緒にしちゃいかん」
どこか疲れた表情で、大内先生がため息を吐く。
仲良し三人組がひとりとして欠けていなかったからか、比較的いつも通りなちびっこ怪獣たちの様子を確かめ。
へたり込んでいる木本先生とカエデを立たせ、茫然自失状態の金堂を回収し、と。
辛うじて年長者としての責務を果たしてはいるものの、大内先生だって状況を把握できているわけではないのだろう。
突拍子もないことを言い出されても、対応しきれないとその顔には書いてある。
「でも先生。こっちきてみて? ほらこれ。なんかそれっぽいのがあるよ?」
大内先生の勘弁してくれといった視線もなんのその。
コズエは少し離れた場所で、みんなこっちへ来いと手招きする。
光太には、彼女の指差した先になにかあるようには見えなかった。
あるのは低木くらいなもので、これといって注目すべきモノはなにもない。
ユーゴやケースケにも、なにも見えてはいないのだろう。変な顔をしている。
見渡す限り、なにもない--が。
「ほら早く」
急かされ、しぶしぶ金堂とカエデを促し、木本先生を支えながら歩き出した大内先生につられてなんとはなしに近づいていき--……。
「なんだコレ!?」
みんなで、驚きの声をあげる。
コズエの指差した先。
「これは……石板--いや、石碑か?」
そこに、先ほどまでは確かになかったはずの、びっしりと文字のようなものが刻まれた、大きな石の板が天高くそびえ立っていたからだ。
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