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第2章 ちびっこ怪獣三匹、事の次第を知る

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 『帰れる』のなら、帰るためにやらなければならないことをやるだけだ。
 光太とユーゴとケースケの三人だけではない。ここには、金堂もコズエもカエデもいる。
 頼りになる先生たちだっているのだ。
 やってやれないことはない。
 みんなで協力すれば、たいていのことはなんとかなる。

 たくさんの能力ちからをもらったみたいだし、この世界のイキモノより、自分たちの方が頑丈にできているという。
 魔物がどんなモノかは直接見てみないとわからないけれど。
 少なくとも、導くもの大精霊は、異世界のイキモノの方が強いと言い切っている。
 その言葉に嘘がないなら、みんなでそろって帰れるはずだ。

 だって、魔王を倒してこいだとか、邪神を封印してこいだとか、命懸いのちがけでいどまなければできないことを言われたわけじゃない。
 増えすぎた魔物を魔素に戻して欲しいと頼まれただけである。

 不安がまったくないと言ってしまえば嘘になる。
 なんで自分たちがそんなことをしなければならないのかという思いもある。

 でも、光太たちは異世界へと召喚されて、帰るためには魔物とやらを狩るしかないのだ。
 ほんの少し、魔物を狩る--……殺すといった行為に不安があれど。
 魔物は魔素とかいうのが『形』を持っただけで、イキモノのですらないという。

 生きてるものを殺し食らって魔素を奪う負の要素の集合体--それが魔物だ。
 ならばきっと、どうにかできる……はずだ。


《魔物を倒し、ダンジョンを攻略するのに必要なものはすべて授けました。救世の徒よ--……この世界をお願いします》


 導くもの大精霊は語りたいことだけを語ると、少しずつ霞み、消えてゆく。
 どうやら、質問タイムはないらしい。

「え……? ちょ、待っ」

「お願いしますって、こんなところに置いていかれてどうしろと!?」

 ギョッとした顔で、木本先生と大内先生があわてて追いすがるも間に合わず、石の板までもがゆっくりと薄れ、その姿を消してしまう。
 どこまでも続く草原すら消え失せ、森の中の広場らしきところへ放り出された一同は、その場でぽかんと立ち尽くす。

 無理矢理連れてきて、一方的に頼み事をしたあとは、返事も聞かずに放置。
 小学生でもさすがにわかる。
 いくらなんでも、人にものを頼む態度ではない。
 相手は異世界の導くもの大精霊とやらで、種族や世界が違えば感覚も違うのかもしれないが。
 コレでは、体のいい押し付けである。

 呆然とすることしばし。

「--……とりあえず、全員集まろうか」

 はっと我に返った大内先生の呼びかけが、どこか疲れているように感じられたのはたぶん、光太だけではなかったはずだ。
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