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第4章 ちびっこ怪獣三匹、仲間と協力して戦利品を吟味する

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「すんっませんでしたぁあッ!」

 みんなで協力してトレントを打ち倒し、安全だと確認のとれている広場らしき場所まで戻ってきた光太は、それは見事なスライディング土下座を披露する。
 すでに、しこたま木本先生と大内先生に叱られた後である。

 無鉄砲にも程がある。
 もう少し後先を考えろ。
 何かあったら取り返しがつかないんだぞ、などなど。

 涙目になるほどくどくどと雷を落とされて。
 最後の最後で、「無事でよかった」と大泣きする木本先生に力一杯抱きしめられ。
 大内先生には「あまり心配をさせるな」と優しく頭を撫でられ。

 光太は、自分の迂闊な行動がどれほどまわりに迷惑と心配をかけたのかを、身に染みて理解した。
 先生たちはなにも、光太が憎くて怒っているのではない。
 迷惑をかけたにもかわからず、光太の軽率な行動が光太自身を傷つけないよう、心配してくれているのだ。

 それが、ぎゅうぎゅうと抱きしめてくる力の強さから。
 光太の無事を確めるように、頭だけではなく、頬や体を触って怪我がないか確めてゆく手のひらの優しさから。
 嫌というほど伝わってきて。

「心配かけてごめんなさい」

 口からぽろりと、謝罪の言葉が転がって出た。

 決してわざとではなかったけれど、光太のやらかしたことで、みんなに心配をかけたのみならず、みんなを危険にさらしてしまった。
 その事が、叱られた内容よりもずっと、光太の心を締め付ける。

 興味のおもむくまま、好奇心を満たすのではダメなのだ。
 いつもいつも、ユーゴとケースケに言われていたこと。
 ふたりはいつだって「コウちゃんはしょうがないなあ」と笑って許してくれるから、甘えていた。

 でも--……。

 光太が好奇心のままみんなをふりわますということは、みんなを危険にさらすことなのだと、光太はようよう、心の底から実感できた。
 ましてや異世界。知らない場所で、なにがあるかもわからないのに、好奇心を優先してはダメなのだ。

 異世界なんてわけのわからない場所に連れてこられて、覚悟も決まらないうちからの戦闘だ。
 彼らの立場を自分に置き換えてみて、本気で反省した光太である。

 だって、『助けない』なんて選択肢は存在しない。
 この中の誰がピンチに陥ったって、光太は全力で助けに行く。
 みんなだってそうだ。
 誰がピンチになったって、自らの危険を顧みず助けに走る。
 現にこうして、彼らはなんの躊躇ちゅうちょもなく光太を助けにきてくれた。

 だからこそ、光太は軽率な行動をしてはいけなかった。
 光太がピンチに陥れば、嫌でもみんなを危険にさらしてしまう。

 逆もそう。誰かが軽率な行動をとれば、他のみんなが危険にさらされてしまう可能性がでてくる。
 みんなそれがわかっているから、光太のように好奇心だけで突っ走ったりしないのだ。
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