上 下
50 / 60
第4章 ちびっこ怪獣三匹、仲間と協力して戦利品を吟味する

6

しおりを挟む
 たぶん、おそらく。
 『神の目』がドロップ品だと表現しただけで、実際はトレントが取り込めなかった不要品がつまってるだけじゃないの?
 子供組がそんな会話をかわす横で、大内先生と木本先生が、難しい顔をして黙り込む。

 もしも、この世界が戦乱の世だった場合。
 否応なしに人同士の争いに巻き込まれてしまうことになる。
 そうなった場合、子供たちをどう守るか。
 自分たちが人を傷つけ--殺さなければならなくなった時。
 子供の柔らかな精神が耐えられるかどうかわからない。
 大人である自分たちだって、どうなるかわからないのだ。
 子供たちは守りたい。
 守りきるつもりでいる。

 でも、だけど。
 平和な世界で生きてきた自分たちに、なにができるのか。

 思考の沼にはまりかけた大内先生と木本先生は、けれど。

「なあユーゴ。これさ、何人分くらいあんの?」

「ん~。このトレント、結構な古木みたいだから、数十人分はあるんじゃない? 年代も全部バラバラだし」

「古木って、樹齢何百年ってやつか?」

「そんな感じ」

 光太、ユーゴ、ケースケのやんちゃ怪獣トリオの会話を聞いて、ふと肩の力が抜ける。

 中には実際に、戦乱の世だった頃のモノもあるかもしれない。
 だが、何百年もまたいだ品物では、考察の参考にはならない。
 結局は人里を探して、自分の目で確かめるしかないのだ。

 考えすぎていたことに気づいたふたりは顔を見合せ、気まずそうな苦笑をかわす。
 つい悪い方へと思考が流れてしまうのは、どうしたって心の奥底に不安があるせいだ。

 案ずるより産むが易し。
 物事はあれこれ心配するよりも、実際に行ってみれば、案外たやすかったりするものだ。
 いま必要なのは、悩んでいる暇があるなら手を動かすことだろう。

「ねえねえ。剣と魔法の世界だって導くもの大精霊が言ってじゃん? なんかこう、パパッと整理整頓できちゃう魔法ってないの?」

 木の根っこに足を取られてよろめいたコズエが、ユーゴを振り返って愚痴をこぼす。
 物理攻撃主体の能力ちから構成ばかりの中で、魔法が主体の能力ちから構成なのは、ユーゴだけだ。

 能力ちからを自分のモノにしたのだから、当然ユーゴは魔法を使えるようになっている。
 先程は光太の安全を考えて能力ちからを使わなかっただけで、その気になれば、いくらでも使えるはずである。

「コズエちゃん、口より手を動かしてねえ」

 なにか便利な魔法がないかとユーゴにねだるコズエを、カエデがさっくりたしなめる。
 終わらない作業はないのだ。
 頑張っていればいつかは終わる。
 だから頑張ろうとカエデはコズエをなだめるが、木の根っこにつまずいて足を傷めそうになったからだろう。

「だって、重たいモノが多いんだもん」

 コズエのやる気はポッキリと折れていた。
しおりを挟む

処理中です...