俺の大好きな聖女ちゃんが腐女子で、現世まで追いかけてきた竜騎士とくっつけようと画策しているらしい

曙なつき

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第二章 現世ダンジョン編 ~異世界から連れ戻された勇者は、竜騎士からの愛に戸惑う~

第七話 ダンジョンの監視システム

「安藤さん、ちょっと来てください」

 さいたまダンジョンの監視カメラをチェックしていた、ダンジョン開発推進機構の警備部の有森七海は、上司の安藤を呼んだ。

「どうした?」

 安藤が席に来ると、有森は眼前に並ぶ幾つかのカメラモニターの中の一つを指さした。

「奥の二十八番カメラ前の湧き場所が異常です。見てください、これ」

 ダンジョン内には監視カメラ網が張り巡らされている。特に湧き場所前には必ずカメラを設置していた。
 ダンジョンの湧きモンスターの異常が出た場合に、即座に対応できるようにするためだった。
 過去にはそのようなことはなかったが、対応が厳しい非常に強いモンスターが沸き場所から現れた場合には、応援を要請しなければならない。
 ダンジョン内のモンスターを確実に始末できなければ、ダンジョンからモンスターが溢れ、地上に大きな被害が出ると言われていた。
 だからこそ、設置されたカメラによって、湧き場所は常時監視されていた。

 監視カメラにはAIが搭載され、湧きモンスターの種類や数もカウントされていた。

「ここだけで、百匹超えてますよ。異常です」

 通常、時間当たりのドロップ数は五から十。この初心者用のダンジョンであるさいたまダンジョンでは、緩やかにモンスターがドロップすることでも有名だった。
 探索者達は湧き場所前に陣取り、出てきたゴブリンを複数人で叩きつぶしているのだ。

 顔認識システムにより、二十八番カメラ前の湧き場所で、その百匹以上のゴブリンの殺戮を続けている探索者の情報が別のモニターに上がる。
 非常に的確にゴブリンを殺害していることから、初心者ではないと思っていたが、驚いたことに彼ら二人は、初めてこのダンジョンへ潜った探索者であった。

 そして、次に驚いたことは、その二人の少年が“マジックバック”を所有していたことであった。
 “マジックバック”は非常に高価で希少なドロップアイテムであった。
 小さなものでも数千万円は超える。収納容量によって値段は変わるのだが、彼らが持っている“マジックバック”は、どんどんゴブリンを収容している様子から、億を超えるであろうものであった。
 明らかに、この年齢の少年達が所有するものとしてはおかしいだろう。

 顔認識システムから、その二人の少年の名前をチェックする。
 中林光、中林ゼノンの二人は兄弟らしい。
 顔写真と氏名が表示された後、その名前の横に、secret、VIPの赤文字の表示が現れる。

 有森と安藤喪は顔を見合わせた。

「本部マターの探索者だな。こちらで詮索できない」

「…………」

 有森は不愉快そうに眉を寄せた。

 VIP表示はこれまでも見たことがあった。政治家の息子や芸能人、また探索者の極めて上位者、自衛隊や米軍の上位探索者がそれにあたる。VIP表示者に対しては非公式ではあるが、ダンジョン内でできるだけ便宜を図るように通達されていた。だが、secretは今まで見たことがない。基本、詮索不要の探索者であることは知っていた。

 湧き場所からのゴブリンの湧き数が落ち着いたのを見て、彼らはバットを肩に担いで元の道に戻っていく。
 有森七海は安藤に言った。

「買取ブースに行ってきます。ちょっと本人達を見てみたいので」

「わかった」

 

    *



 有森七海はすぐに、買取ブース用の制服に着替え、胸元に身分証のカードを下げた。
 ダンジョンの入口横には、ダンジョンのモンスターの死体やドロップ品の鑑定・買取を行うためのブースが設置されていた。
 モンスターの死体は放置しておけば、やがてダンジョンに吸収される。しかし、死体自体を売ることもできる。
 ゴブリンの死体には魔石があり、それを取り出すと良い値段になる。だが、死体の胸を切り裂いて魔石を取り出すことに抵抗がある者も多く、そのまま死体を持ち込む者も多かった。

 受付番号発行機から、受付番号カードを受け取ったあの二人の少年。
 戦いの際は、倒したゴブリンの体液に塗れ、ひどい状態だったが、おそらくダンジョン開発推進機構の提供する休息施設にあるシャワーを浴びてきたのだろう。今はこざっぱりした姿に変わっていた。
 すぐさま有森は、その番号を自分のブースの電光掲示板に表示させた。
 彼らは連れ立って、ブース内に現れた。

「こんにちは」

「こんにちは、よろしくお願いします」

 礼儀正しく二人は挨拶し、ゴブリンの買い取りと、ゴブリン討伐によるランクアップを希望した。

 大型荷物受付のためのスペースが、ブースのそばに用意されている。
 有森は二人をそこに案内し、彼らがマジックバックから、驚くほど多くのゴブリンを取り出す様子を、呆れたように眺めていた。
 すぐに応援のスタッフを呼び、二人でゴブリンの数を数えていく。

「……百十二匹です」

 一回で持ち込まれたゴブリン数としては過去最高数であった。
 そしてゴブリンの買い取り額は、現在一頭当たり三千五百円になっている。よって三十九万二千円が二人の少年に渡された。
 
 中林光という名の少年は、その表示された金額に心底驚いたように仰天していた。

「……三十九万? マジ?」

 ゴブリンは食用に回すことができる。少し骨ばっているが、歯ごたえがあり美味しいと好む者達もいた。
 この後、ダンジョン推進開発機構内で解体され、魔石は取り出され、肉は食肉業者に卸されることになっている。

「振込に致しますか? それとも現金の手渡しに致しますか?」

「現金でお願いします」

 現金の処理をする間に、二人のダンジョンの入場許可証に記載されている討伐数を確認し、彼らのランクアップの手続きをした。
 わずか一時間程度で、二人の少年はEランクからDランクへとランクを上げることになった。

 二人の登録データによると、年齢は十六歳とある。
 特に黒髪の、光という少年はあどけない印象さえあった。
 容赦なくゴブリンを殺害しながらも、子供のように驚く様を見せることに、アンバランスさを感じる。

 受領証にサインし、封筒に入った現金をおっかなびっくり受け取りながら、二人はさいたまダンジョンを去っていった。
 有森は二人の姿を消えるまで、その背中をじっと見つめていた。
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