転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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第十一章 もう一人の転移者

第八話 王宮にて(上)

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 王宮内の応接室へ早速案内されたアルバート王子とルーシェ。
 王子はしっかりとその腕に小さな竜姿のルーシェを抱きかかえている。
 なにせ、リン王太子妃の六人の子供達が好奇心いっぱいの目で、ルーシェを見つめ、隙あらば手を伸ばして抱っこしようと狙っていたからだ。
 なんとなしにその子供達の様子は、バルトロメオ辺境伯の息子アーサーと通じるものがあった。
 だからルーシェは、ここでは王子の腕にしがみつき、尻尾までクルリと王子の腕に巻き付けて、離れまいとしていた。

 応接室に入ると、リン王太子妃は、自身の護衛の女騎士ガヴリエラと女官メリッサの二人を残して、後の護衛と女官達は全て席を外させた。もちろん大層渋られたのだが、子供達も全員部屋から退出させられる。
 今部屋の中にいるのは、アルバート王子と彼に抱きかかえられている小さな紫色の竜ルーシェ、それからリン王太子妃、女騎士ガヴリエラと女官メリッサの五人だけであった。

 リンは言った。

「ガヴリエラとメリッサは、私の腹心の部下です」

 そう言うと、二人の女性は頭を深々と下げる。

「彼女達の口は堅く、決して私を裏切ることはありません。ルーシェ、貴方が人化できることは友親から聞いています。貴方と話をしたいので、どうか人の姿に変わってくれないかしら」

 ルーシェはリンの顔をマジマジと見つめた。
 ルーシェの人化のことを話すなど、親友の三橋友親は、委員長こと石野凛のことをよほど信頼していたようだ。転生前の高校生であった頃、彼女は単なるクラスメイトで、三橋友親や沢谷雪也(ルーシェ)とはそれほど親しい間柄ではなかった。この世界へ友親が転移して以降、友親と石野凛は関係を親しくすることがあったのだろうと思う。
 友親が信頼しているのならばと、ルーシェも考え、彼は石野凛の望み通り人の姿に変わることにした。

「ピルルゥ(分かった)」

 そう言うと、ルーシェは一瞬で王子の膝の上に、三歳くらいの幼児の姿で現れた。
 それには、王太子妃リンも女騎士ガヴリエラも女官メリッサも、目を大きく見開いて驚いていた。先ほどまでの小さくて可愛らしい竜が、今度はいたいけな黒髪の幼児に姿を変えたのである。
 リンの横で、ガヴリエラとメリッサの二人は真っ赤に頬を染めて「なんてお可愛らしい」「天使だ!! 天使がいるぞ!!」と大興奮で叫んでいる。
 その二人の頭を、王太子妃リンはどこから取り出したのか一本の扇子で、ビシッビシッと一撃ずつ叩いていた。

「全く、騒がないの」

「はい、申し訳ありません」

「大変申し訳ありません」

 ガヴリエラとメリッサの二人は項垂れている。リンは扇を広げ、それで優雅に仰ぎながら言った。

「まぁ、確かに目の覚めるような美……美幼児というのかしらね。少年というには幼すぎるもの。友親から、貴方が素晴らしい美形になっているという話は聞いていたけど、美幼児とは思わなかったわ」

 それからリンはチラリとアルバート王子を見つめ、咳払いをした。

「ルーシェと、王子殿下が婚姻を結んだという話は聞いております。……まぁ、『源氏物語』の若紫の話もありますからね……。こんな小さなルーシェ相手に……」

 暗記能力が前世からからっきし駄目であったルーシェは、『源氏物語』の若紫の話と言われてもピンとこない。だからそのままアルバート王子の膝のうえで、黙って座っている。
 
「貴方は沢谷雪也君で間違いないのよね?」

 確認するように王太子妃リンが、元クラスメイトの石野凛が尋ねてきたので、ルーシェはコクリと頷いた。

「委員長、久しぶり。委員長が異世界に来て王太子妃になっているなんて聞いてびっくりしたよ。ラノベ小説そのまんまじゃんか!!」

 そのあっけらかんとした物言いに、リンは目を細めどこか懐かしそうに言った。

「本当に、貴方はユキみたいね。ちっちゃくてこんなに可愛い竜に転生しているなんて私も驚いたわ。ともあれ、また再会できて本当に嬉しいわ。積もる話もたくさんあるでしょうから、是非、王宮にゆっくりと滞在して頂戴」

 そう王太子妃リンは艶然と笑って言った。



 それからほどなくして、女官の一人が「お部屋のご用意が出来ました」と言って、アルバート王子とルーシェを、今日泊まらせてくれる客室へ案内してくれた。
 王太子妃リンとはまた改めて話をする機会を設けるという。
 案内された客室は、さすが王宮というものであった。広々として家具も立派な部屋である。

「わー、凄い!!」

 三歳児姿のルーシェは、大きな寝台の上に突進しても大の字になってそのフカフカな寝具の上に横になっている。
 わざわざついてきてくれた女官メリッサが、恭しく一礼しながら言った。

「後ほど、王太子殿下と王太子妃殿下が夕食を是非、ご一緒にというお話です」

 王太子殿下というと、リン王太子妃の旦那さん!!

「有難うございます。喜んでご一緒させて頂きます」

 そうアルバート王子が答える。

「こちらで衣装もご用意させて頂き、後ほどお持ち致します」

 至れり尽くせり!!
 
 それから女官メリッサは、客室の横にある浴室のことを教えてくれたり、客室から庭へ出る道を教えてくれたりした。そして彼女は一礼して部屋を立ち去る。

 王子とルーシェは、部屋に二人きりになった。
 ルーシェは寝台の上から飛び降りると、説明された浴室を覗いて声を弾ませた。

「王子、王子、大きなお風呂があるよ!!」
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