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第十三章 失われたものを取り戻すために
第二十二話 辺境伯城への帰還
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カルフィーが長々とした呪文を唱え終わったその瞬間、ルーシェ達一行の足元にある魔法陣が白い光を放ち、彼らは“転移”した。
白い光の眩しさに瞬きをした次の時には、ルーシェ達はバルトロメオ辺境伯の城の中庭に立っていた。
事前に到着の時刻を知らされていたのだろう。
少し離れた場所に立っていた兵士や召使達から「おおお!!」という歓声の声が上がる。大勢の人間が、城の中庭を取り囲むようにしていた。
そしてその群衆の中から、大柄なバルトロメオ辺境伯が近づいて来ようとしている。
ルーシェ達が“転移”してきた中庭の場所には、ロープが四方に張られて誰も入れないようにされていた。バルトロメオ辺境伯は、城の魔術師に「もういいか」とロープを手に取りながら聞いている。
魔術師から「大丈夫です」と言われたバルトロメオ辺境伯は、ロープを持ち上げてくぐり、アルバート王子のそばにズカズカとやって来た。そして王子の手を熱く握りしめる。
「殿下、ルティ魔術師に聞きました!! “消失”解消の目処が立ったとのことで、さすが殿下です!!」
ブンブンと握った手を上下に揺らされる。
そしてバルトロメオ辺境伯のそばに、アレドリア王国のルティ魔術師も立っていた。彼は微笑みながら言っている。
「殿下、そちらの方々が、仰っていた協力者の皆さまですか」
「はい」
アルバート王子は、バルトロメオ辺境伯とルティ魔術師に、カルフィー魔術師と三橋友親、ケイオスを紹介した。といっても、バルトロメオ辺境伯はカルフィー達とは面識がある。以前、カルフィー魔道具店は内覧会をするためにこの城を訪れていたからだ。
カルフィー魔術師とルティ魔術師は、出会ったその時から、互いに魔術の高度な会話が交わせる相手だと思ったようで、二人して何やら熱心に話し始めている。バルトロメオ辺境伯はアルバート王子に「中へ入りましょう。私から殿下にお伝えしたいことがあります」と言って、アルバート王子の背を押すようにして、城の中へと招き入れたのだった。
なおその道中、バルトロメオ辺境伯は、アルバート王子が抱き上げている小さな子供に気が付いた。
「殿下、その子供は?」
そう尋ねるバルトロメオ辺境伯に、アルバート王子は今更ながら気が付いたのだ。
ルーシェを、幼児姿で城へ連れて来たことが今まで一度としてなかったことに。
少年姿のルーシェを、シアンと名を偽ってバルトロメオ辺境伯の養子にし、婚姻を結んだアルバート王子である。ここでまた小さな子供姿のルーシェを、紫竜の化身した姿だと明らかにすることは、あまり良いこととは思えなかった。何かの拍子でシアンとルーシェと紫竜が関連付けられる可能性がある。
「後ほど、お話しします」
アルバート王子は内心、失敗したと思いながら、ルーシェの頭のフードを深く被らせた。
なんと無しに何かを察したように、ルーシェは黙って王子の胸にしがみついていたのだった。
バルトロメオ辺境伯は、召使に命じてカルフィー魔術師達を客室へ案内させる。夕食の席までゆっくり体を休めてもらいたいと、一行に言葉を掛けていた。
だが、アルバート王子に関しては、辺境伯は王子を別室へ連れてきて、人払いをした上で内密の話をしようとしていた。
その際にも、王子が抱っこし続けている小さな子供に対して「殿下、その子供を召使に預からせて下さい。殿下と至急お話ししたいことがあるのです」と言って、幼子の姿をしたルーシェとアルバート王子を引き離そうとした。
それでアルバート王子は、バルトロメオ辺境伯の耳元で「この子供はルーシェの変化した姿の一つだ」と告げて、辺境伯を驚かせていたのだった。
「……分かりました」
言われてみれば、いつもアルバート王子のそばを飛び回っていた紫竜の姿が見えないと思っていた。こんな小さな子供にも化身できるのかと、バルトロメオ辺境伯はマジマジと、王子に抱かれているルーシェを見つめていた。
居室に、アルバート王子とルーシェ、バルトロメオ辺境伯の三人だけになったところで、辺境伯は口を開いた。
「この度は、殿下が“消失”解消の目処を付けて下さり、誠に助かりました」
「まだ、成功したわけではないです。喜ぶのは早いでしょう」
「…………………………そうですが」
なんともバルトロメオ辺境伯らしくなく、彼の口が重い様子がある。わざわざアルバート王子を別室に連れて来て、したい話とはなんなのであろうか。すぐに話を切り出さないことを不可解に思いながら、アルバート王子は話の先を促す。
「何か私達がいない間にあったのですか?」
バルトロメオ辺境伯はため息をついて、それから口を開いた。
「実は、以前、お話ししたように、殿下がアレドリア王国へ渡っている間、私は王宮へ行って、リチャード王子殿下方に竜騎兵団や大森林地帯の“消失”について、報告に行って参りました」
国王は、王都に魔族の襲撃を受けて以来寝込んでおり、政務は第一王子リチャードが、軍務は第二王子アンリが担っているという。このまま国王が姿を現わさない状況が続けば、リチャード王子が王として即位するだろうと言われている。
「竜騎兵団や大森林地帯の“消失”は現在、機密事項とされております」
ラウデシア王国の戦力が大きく削がれていることを、他国に知られるのはマズイという判断からそうされているのだろう。また、国民の間の不安が高まることを抑えたいという意図もある。
「“消失”の解消を、第一に考えて欲しいと命じられ、私は動いております。特に、リチャード王子殿下におかれましては…………………………」
そこで何故か、バルトロメオ辺境伯が言葉を区切って、それから少し間を置いてからこう言った。
「アルバート王子殿下の伴侶であり、当家に養子入れしたシアンが、竜騎兵団と共に行方が不明となっている状況に大変心を痛めている状況で」
そのバルトロメオ辺境伯の言葉に、アルバート王子は目を見開く。
「…………辺境伯閣下は、シアンはそうなっているというお話を、兄上達に報せているのですね」
バルトロメオ辺境伯は頷いた。
「シアンが紫竜ルーシェだという話を伝えていないのだから、当然です。シアンは殿下のそばでピンピンして元気に生きています。紫竜のルーシェとして。そんなことをリチャード王子殿下にはお伝え出来ないでしょう」
「………………そうですね」
「そのため、シアンも、ウラノス達と一緒に“消失”に巻き込まれたことに致しました。殿下と紫竜は、軍務で三か国を巡っていて助かりましたが、殿下のご帰国を竜騎兵団の拠点で待っていたシアンは、“消失”に巻き込まれたという話にした方が自然なのです」
「…………………」
なんとも頭の痛い展開になっていた。
そしてなおもバルトロメオ辺境伯は面倒くさそうな顔をして言った。
「リチャード王子殿下は、シアンが“消失”に巻き込まれたことに大変心を痛めていらっしゃいます。そのせいで私は、“消失”を何とかするように、リチャード王子殿下から直々に命じられました。王宮魔術師長も遣わそうと言っていたのを断るのは凄く大変でした。こんな時にウラノスがいないのが本当に痛いです。あいつがいれば、もっと上手い事誤魔化せたでしょう」
バルトロメオ辺境伯の親友のウラノス騎兵団長も、“消失”に巻き込まれて、今はここにいないのである。辺境伯は、アルバート王子に言った。
「殿下、リチャード王子殿下には重々……いや、王家に忠誠を誓う者としてこんなことを言うべきではないのかも知れませんが、どうぞ気をつけて下さい。あの御方は……」
バルトロメオ辺境伯は、アルバート王子に目を遣った後、小さな幼児姿のルーシェに目を向けた。
「あの御方は未だに、シアンに心を奪われているような様子でした。弟王子の伴侶シアンが“消失”に巻き込まれたと聞いて、大層お嘆きになられるほど」
そう。
王宮で、バルトロメオ辺境伯は、リチャード王子から、アルバート王子の伴侶シアンはどうしたのかと聞かれた。辺境伯は戸惑いながらもシアンは“消失”に巻き込まれたようだと告げた時、リチャード王子は傍目から見ても驚くほど、蒼白となって動揺していたのだ。そしてその後は、“消失”を解消するために全力を尽くすように辺境伯へ命じる。その時のひどく動揺した様子は、単なる弟の伴侶の行方を心配するもの以上の何かを感じさせた。
人心を惑わすほどの美貌。
紫竜の持つその美貌は、未だにあの兄王子の心を惹き付けて離さないものなのだ。
「……お、俺、今すぐ、ちっちゃい竜になるよ!! そしてもう当分、人間の姿にはならない!! そうしたら大丈夫だよね!! 大丈夫だと言ってよ!!」
なんとなしに恐怖を感じたように青ざめたルーシェはそう叫ぶ。
辺境伯の養子に入った上で、アルバート王子の伴侶になった。これで無事安泰だと思われたはずなのに。
なのに。
兄王子に、そして次期国王有力候補者にこんなにも想われるなんて、まったく想像だにしていなかった。だからこそ、恐怖もひとしおであった。
きっとルーシェの脳裏には、五百年前の紫竜の娘の悲劇の出来事がよぎっているのだろう。伴侶たる竜騎兵ともども、王宮から戻ることのなかった紫竜の娘のことが。
アルバート王子は、顔を強張らせている小さなルーシェの頬に、優しく手をやって言った。
「大丈夫だ、ルー」
そう言って、ルーシェの額に口づけを落とした。
「絶対にお前をどこへもやらない」
「うん」
チュッチュッと甘く幼いルーシェの額に口づけを落とし続けているアルバート王子を見て、バルトロメオ辺境伯は内心、少しだけ(殿下は小さなルーシェを愛でられることもお好きなのだな)と思って、何とも言えぬ思いで眺めていたのだった。
そしてルーシェは、バルトロメオ辺境伯の部屋の中で小さな竜に姿を変え、王子の胸元にしばらくの間入っていることにした。心の中に不安があったのだ。でも、王子の温かな胸元にいると、その不安も和らいでいく。そして夕食までの間、彼はいつの間にか王子の胸元で寝息を立てて丸くなって眠ってしまったのだった。
白い光の眩しさに瞬きをした次の時には、ルーシェ達はバルトロメオ辺境伯の城の中庭に立っていた。
事前に到着の時刻を知らされていたのだろう。
少し離れた場所に立っていた兵士や召使達から「おおお!!」という歓声の声が上がる。大勢の人間が、城の中庭を取り囲むようにしていた。
そしてその群衆の中から、大柄なバルトロメオ辺境伯が近づいて来ようとしている。
ルーシェ達が“転移”してきた中庭の場所には、ロープが四方に張られて誰も入れないようにされていた。バルトロメオ辺境伯は、城の魔術師に「もういいか」とロープを手に取りながら聞いている。
魔術師から「大丈夫です」と言われたバルトロメオ辺境伯は、ロープを持ち上げてくぐり、アルバート王子のそばにズカズカとやって来た。そして王子の手を熱く握りしめる。
「殿下、ルティ魔術師に聞きました!! “消失”解消の目処が立ったとのことで、さすが殿下です!!」
ブンブンと握った手を上下に揺らされる。
そしてバルトロメオ辺境伯のそばに、アレドリア王国のルティ魔術師も立っていた。彼は微笑みながら言っている。
「殿下、そちらの方々が、仰っていた協力者の皆さまですか」
「はい」
アルバート王子は、バルトロメオ辺境伯とルティ魔術師に、カルフィー魔術師と三橋友親、ケイオスを紹介した。といっても、バルトロメオ辺境伯はカルフィー達とは面識がある。以前、カルフィー魔道具店は内覧会をするためにこの城を訪れていたからだ。
カルフィー魔術師とルティ魔術師は、出会ったその時から、互いに魔術の高度な会話が交わせる相手だと思ったようで、二人して何やら熱心に話し始めている。バルトロメオ辺境伯はアルバート王子に「中へ入りましょう。私から殿下にお伝えしたいことがあります」と言って、アルバート王子の背を押すようにして、城の中へと招き入れたのだった。
なおその道中、バルトロメオ辺境伯は、アルバート王子が抱き上げている小さな子供に気が付いた。
「殿下、その子供は?」
そう尋ねるバルトロメオ辺境伯に、アルバート王子は今更ながら気が付いたのだ。
ルーシェを、幼児姿で城へ連れて来たことが今まで一度としてなかったことに。
少年姿のルーシェを、シアンと名を偽ってバルトロメオ辺境伯の養子にし、婚姻を結んだアルバート王子である。ここでまた小さな子供姿のルーシェを、紫竜の化身した姿だと明らかにすることは、あまり良いこととは思えなかった。何かの拍子でシアンとルーシェと紫竜が関連付けられる可能性がある。
「後ほど、お話しします」
アルバート王子は内心、失敗したと思いながら、ルーシェの頭のフードを深く被らせた。
なんと無しに何かを察したように、ルーシェは黙って王子の胸にしがみついていたのだった。
バルトロメオ辺境伯は、召使に命じてカルフィー魔術師達を客室へ案内させる。夕食の席までゆっくり体を休めてもらいたいと、一行に言葉を掛けていた。
だが、アルバート王子に関しては、辺境伯は王子を別室へ連れてきて、人払いをした上で内密の話をしようとしていた。
その際にも、王子が抱っこし続けている小さな子供に対して「殿下、その子供を召使に預からせて下さい。殿下と至急お話ししたいことがあるのです」と言って、幼子の姿をしたルーシェとアルバート王子を引き離そうとした。
それでアルバート王子は、バルトロメオ辺境伯の耳元で「この子供はルーシェの変化した姿の一つだ」と告げて、辺境伯を驚かせていたのだった。
「……分かりました」
言われてみれば、いつもアルバート王子のそばを飛び回っていた紫竜の姿が見えないと思っていた。こんな小さな子供にも化身できるのかと、バルトロメオ辺境伯はマジマジと、王子に抱かれているルーシェを見つめていた。
居室に、アルバート王子とルーシェ、バルトロメオ辺境伯の三人だけになったところで、辺境伯は口を開いた。
「この度は、殿下が“消失”解消の目処を付けて下さり、誠に助かりました」
「まだ、成功したわけではないです。喜ぶのは早いでしょう」
「…………………………そうですが」
なんともバルトロメオ辺境伯らしくなく、彼の口が重い様子がある。わざわざアルバート王子を別室に連れて来て、したい話とはなんなのであろうか。すぐに話を切り出さないことを不可解に思いながら、アルバート王子は話の先を促す。
「何か私達がいない間にあったのですか?」
バルトロメオ辺境伯はため息をついて、それから口を開いた。
「実は、以前、お話ししたように、殿下がアレドリア王国へ渡っている間、私は王宮へ行って、リチャード王子殿下方に竜騎兵団や大森林地帯の“消失”について、報告に行って参りました」
国王は、王都に魔族の襲撃を受けて以来寝込んでおり、政務は第一王子リチャードが、軍務は第二王子アンリが担っているという。このまま国王が姿を現わさない状況が続けば、リチャード王子が王として即位するだろうと言われている。
「竜騎兵団や大森林地帯の“消失”は現在、機密事項とされております」
ラウデシア王国の戦力が大きく削がれていることを、他国に知られるのはマズイという判断からそうされているのだろう。また、国民の間の不安が高まることを抑えたいという意図もある。
「“消失”の解消を、第一に考えて欲しいと命じられ、私は動いております。特に、リチャード王子殿下におかれましては…………………………」
そこで何故か、バルトロメオ辺境伯が言葉を区切って、それから少し間を置いてからこう言った。
「アルバート王子殿下の伴侶であり、当家に養子入れしたシアンが、竜騎兵団と共に行方が不明となっている状況に大変心を痛めている状況で」
そのバルトロメオ辺境伯の言葉に、アルバート王子は目を見開く。
「…………辺境伯閣下は、シアンはそうなっているというお話を、兄上達に報せているのですね」
バルトロメオ辺境伯は頷いた。
「シアンが紫竜ルーシェだという話を伝えていないのだから、当然です。シアンは殿下のそばでピンピンして元気に生きています。紫竜のルーシェとして。そんなことをリチャード王子殿下にはお伝え出来ないでしょう」
「………………そうですね」
「そのため、シアンも、ウラノス達と一緒に“消失”に巻き込まれたことに致しました。殿下と紫竜は、軍務で三か国を巡っていて助かりましたが、殿下のご帰国を竜騎兵団の拠点で待っていたシアンは、“消失”に巻き込まれたという話にした方が自然なのです」
「…………………」
なんとも頭の痛い展開になっていた。
そしてなおもバルトロメオ辺境伯は面倒くさそうな顔をして言った。
「リチャード王子殿下は、シアンが“消失”に巻き込まれたことに大変心を痛めていらっしゃいます。そのせいで私は、“消失”を何とかするように、リチャード王子殿下から直々に命じられました。王宮魔術師長も遣わそうと言っていたのを断るのは凄く大変でした。こんな時にウラノスがいないのが本当に痛いです。あいつがいれば、もっと上手い事誤魔化せたでしょう」
バルトロメオ辺境伯の親友のウラノス騎兵団長も、“消失”に巻き込まれて、今はここにいないのである。辺境伯は、アルバート王子に言った。
「殿下、リチャード王子殿下には重々……いや、王家に忠誠を誓う者としてこんなことを言うべきではないのかも知れませんが、どうぞ気をつけて下さい。あの御方は……」
バルトロメオ辺境伯は、アルバート王子に目を遣った後、小さな幼児姿のルーシェに目を向けた。
「あの御方は未だに、シアンに心を奪われているような様子でした。弟王子の伴侶シアンが“消失”に巻き込まれたと聞いて、大層お嘆きになられるほど」
そう。
王宮で、バルトロメオ辺境伯は、リチャード王子から、アルバート王子の伴侶シアンはどうしたのかと聞かれた。辺境伯は戸惑いながらもシアンは“消失”に巻き込まれたようだと告げた時、リチャード王子は傍目から見ても驚くほど、蒼白となって動揺していたのだ。そしてその後は、“消失”を解消するために全力を尽くすように辺境伯へ命じる。その時のひどく動揺した様子は、単なる弟の伴侶の行方を心配するもの以上の何かを感じさせた。
人心を惑わすほどの美貌。
紫竜の持つその美貌は、未だにあの兄王子の心を惹き付けて離さないものなのだ。
「……お、俺、今すぐ、ちっちゃい竜になるよ!! そしてもう当分、人間の姿にはならない!! そうしたら大丈夫だよね!! 大丈夫だと言ってよ!!」
なんとなしに恐怖を感じたように青ざめたルーシェはそう叫ぶ。
辺境伯の養子に入った上で、アルバート王子の伴侶になった。これで無事安泰だと思われたはずなのに。
なのに。
兄王子に、そして次期国王有力候補者にこんなにも想われるなんて、まったく想像だにしていなかった。だからこそ、恐怖もひとしおであった。
きっとルーシェの脳裏には、五百年前の紫竜の娘の悲劇の出来事がよぎっているのだろう。伴侶たる竜騎兵ともども、王宮から戻ることのなかった紫竜の娘のことが。
アルバート王子は、顔を強張らせている小さなルーシェの頬に、優しく手をやって言った。
「大丈夫だ、ルー」
そう言って、ルーシェの額に口づけを落とした。
「絶対にお前をどこへもやらない」
「うん」
チュッチュッと甘く幼いルーシェの額に口づけを落とし続けているアルバート王子を見て、バルトロメオ辺境伯は内心、少しだけ(殿下は小さなルーシェを愛でられることもお好きなのだな)と思って、何とも言えぬ思いで眺めていたのだった。
そしてルーシェは、バルトロメオ辺境伯の部屋の中で小さな竜に姿を変え、王子の胸元にしばらくの間入っていることにした。心の中に不安があったのだ。でも、王子の温かな胸元にいると、その不安も和らいでいく。そして夕食までの間、彼はいつの間にか王子の胸元で寝息を立てて丸くなって眠ってしまったのだった。
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