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第十四章 招かれざる客人
第二十五話 護衛騎士との訓練(下)
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バンナム達が来たので、ルーシェの「毎日が夏休み」状態は終わった。
リン王太子妃の子供達と、王宮の庭の中を駆けずり回り、追いかけっこしていた日々も、残念ながら終了である。バンナムはアルバート王子につきっきりで、戦法を教えていく。そしてルーシェは、元王宮魔術師のレネがそばについて教えてくれた。レネも王宮にいた頃には、王宮魔術師団から戦時の時の魔法使いの戦い方を教えられていたからだ。
「個人対個人の戦いの中で、魔法使いが出来ることは、実はそうありません」
「ピルルル?(そうなの?)」
レネは中庭の椅子に小さな竜のルーシェを膝に置いて説明をしていた。
「そうです。ルーシェもやってみて分かったでしょう? 攻撃魔法なんて放ったら、相手どころか味方も攻撃してしまう」
いわゆるフレンドリーファイアーの状態になる。
「もし優れた魔法使いが騎士と共に戦いに参加するなら、基本、その魔法使いの魔法が相手に確実に届くような状況を、騎士は作るようにします。敵が弱い相手なら簡単にその状況へ持ち込めるでしょう。でも、バンナムのような騎士は、そうさせないようにあのような乱戦状態を作ります」
ぐぬ
ぐぬぬぬぬぬぬぬ
あのように位置の入れ替わりの激しい戦いの状況は、ルーシェが攻撃しづらいよう、あえてバンナムが作り出していたということなのだ。
そしてバンナムが戦いの当初、戦いにルーシェを参加させても良いと言ったり、挑発するように、手でクイと招く仕草をしたのだって、後になって考えてみれば、血の気の多いルーシェの積極的な参戦を促す行為だったのだ。
「私だってあの状況の中、バンナムを魔法で加勢することはできないでしょう。だから、反対にバンナムが自分で対処しやすいように事前に護符を用意するわけです」
バンナム自慢の、レネ魔術師特製の護符である。
実際、ルーシェの魔法もその護符の力で消失させられていた。
「魔法使いは対人戦だと出来ることは限られますが、まったく何も出来ないわけではないです。例えば、罠系の魔法を先に仕掛けておいて、そこに騎士が相手を追いやることも出来ます。ルーシェ、あなたは土魔法が使える。先に騎士と打ち合わせをしておけばそこに敵を追い込んで、その罠の中に魔法を撃ち込むやり方もあるでしょう」
(すごい卑怯なやり方だけど、すげぇ効果的だ!!!!)
「土魔法に限らず、ある場所までやって来たらすぐに騎士には離脱してもらって、そこで魔法を集中的に当てることだって出来る。それはその戦いの最中の状況を読んで、地形を読み取っておく必要もあります。またルーシェ、貴方は竜だから空を飛んで戦いの全容を俯瞰することができるし、ペアを組む騎士から合図を受け取り、その合図に従って動くこともできる」
言われてみれば納得できることばかりである。
まったくもって自分達は足りなさすぎる。
竜騎兵団で、竜騎兵と竜が戦うのは、あくまで集団戦を想定している。竜騎兵は空を飛ぶ竜に跨り戦い続けるのだ。
こうした対人戦がまったく想定されていないわけではないが、あくまで竜騎兵団では、竜騎兵の個人の技量を上げることに注力され、そこに竜達の魔法を具体的に加えて戦うことなど考えられていないのだ。
バンナムもレネも、アルバート王子が“勇者の剣”を抜き、勇者になったことを知っている。そしてその神から啓示のあった試練の中身も知らされている。アルバート王子は、サトー王国のサトーを倒すのだ。だから竜騎兵団の中における集団戦の戦い方だけを知っている状況ではマズイのだ。
「サトー王国のサトーは、全属性持ちだと聞いています」
ぽつりとレネは言う。
「ピルゥ(うん)」
レネの膝の上で、ルーシェはコクリと頷いた。
前任勇者を殺して、魔法の剣でその能力を奪い取ったという。だからサトーは全属性が使える。
「魔法使いを倒すことは、大変です。魔法使いは必ず他の味方に手厚く守られていて、魔法使いの近くに近寄ることが出来ないようにされています。そのため、まず、魔法使いを守る防衛を崩さないといけない」
「ピルゥ(うん)」
ルーシェはコクリコクリと頷く。
サトー王国のサトーは、国王で、当然数多くの部下達に守られているだろう。
「そして、サトーは強力な大規模魔法も使える。近寄る前にそれで敵は殺されてしまう。おまけに公の位を持つ高位魔族達も味方についている」
「ピ……ピルピルルゥゥ」
アルバート王子は、ガッチリ手厚く防衛されているであろうそんなサトーを倒せるのだろうか。
少しばかりルーシェの頭には不安が横切っていた。
「でも大丈夫です。バンナムもついていますし、私もついています。いろいろと策を考えましょう。殿下は勇者で、貴方は紫竜。出来ないことは何もないほど、強いはずですから」
そうレネは、ルーシェの頭を撫でながら励ますように言ったのだった。
リン王太子妃の子供達と、王宮の庭の中を駆けずり回り、追いかけっこしていた日々も、残念ながら終了である。バンナムはアルバート王子につきっきりで、戦法を教えていく。そしてルーシェは、元王宮魔術師のレネがそばについて教えてくれた。レネも王宮にいた頃には、王宮魔術師団から戦時の時の魔法使いの戦い方を教えられていたからだ。
「個人対個人の戦いの中で、魔法使いが出来ることは、実はそうありません」
「ピルルル?(そうなの?)」
レネは中庭の椅子に小さな竜のルーシェを膝に置いて説明をしていた。
「そうです。ルーシェもやってみて分かったでしょう? 攻撃魔法なんて放ったら、相手どころか味方も攻撃してしまう」
いわゆるフレンドリーファイアーの状態になる。
「もし優れた魔法使いが騎士と共に戦いに参加するなら、基本、その魔法使いの魔法が相手に確実に届くような状況を、騎士は作るようにします。敵が弱い相手なら簡単にその状況へ持ち込めるでしょう。でも、バンナムのような騎士は、そうさせないようにあのような乱戦状態を作ります」
ぐぬ
ぐぬぬぬぬぬぬぬ
あのように位置の入れ替わりの激しい戦いの状況は、ルーシェが攻撃しづらいよう、あえてバンナムが作り出していたということなのだ。
そしてバンナムが戦いの当初、戦いにルーシェを参加させても良いと言ったり、挑発するように、手でクイと招く仕草をしたのだって、後になって考えてみれば、血の気の多いルーシェの積極的な参戦を促す行為だったのだ。
「私だってあの状況の中、バンナムを魔法で加勢することはできないでしょう。だから、反対にバンナムが自分で対処しやすいように事前に護符を用意するわけです」
バンナム自慢の、レネ魔術師特製の護符である。
実際、ルーシェの魔法もその護符の力で消失させられていた。
「魔法使いは対人戦だと出来ることは限られますが、まったく何も出来ないわけではないです。例えば、罠系の魔法を先に仕掛けておいて、そこに騎士が相手を追いやることも出来ます。ルーシェ、あなたは土魔法が使える。先に騎士と打ち合わせをしておけばそこに敵を追い込んで、その罠の中に魔法を撃ち込むやり方もあるでしょう」
(すごい卑怯なやり方だけど、すげぇ効果的だ!!!!)
「土魔法に限らず、ある場所までやって来たらすぐに騎士には離脱してもらって、そこで魔法を集中的に当てることだって出来る。それはその戦いの最中の状況を読んで、地形を読み取っておく必要もあります。またルーシェ、貴方は竜だから空を飛んで戦いの全容を俯瞰することができるし、ペアを組む騎士から合図を受け取り、その合図に従って動くこともできる」
言われてみれば納得できることばかりである。
まったくもって自分達は足りなさすぎる。
竜騎兵団で、竜騎兵と竜が戦うのは、あくまで集団戦を想定している。竜騎兵は空を飛ぶ竜に跨り戦い続けるのだ。
こうした対人戦がまったく想定されていないわけではないが、あくまで竜騎兵団では、竜騎兵の個人の技量を上げることに注力され、そこに竜達の魔法を具体的に加えて戦うことなど考えられていないのだ。
バンナムもレネも、アルバート王子が“勇者の剣”を抜き、勇者になったことを知っている。そしてその神から啓示のあった試練の中身も知らされている。アルバート王子は、サトー王国のサトーを倒すのだ。だから竜騎兵団の中における集団戦の戦い方だけを知っている状況ではマズイのだ。
「サトー王国のサトーは、全属性持ちだと聞いています」
ぽつりとレネは言う。
「ピルゥ(うん)」
レネの膝の上で、ルーシェはコクリと頷いた。
前任勇者を殺して、魔法の剣でその能力を奪い取ったという。だからサトーは全属性が使える。
「魔法使いを倒すことは、大変です。魔法使いは必ず他の味方に手厚く守られていて、魔法使いの近くに近寄ることが出来ないようにされています。そのため、まず、魔法使いを守る防衛を崩さないといけない」
「ピルゥ(うん)」
ルーシェはコクリコクリと頷く。
サトー王国のサトーは、国王で、当然数多くの部下達に守られているだろう。
「そして、サトーは強力な大規模魔法も使える。近寄る前にそれで敵は殺されてしまう。おまけに公の位を持つ高位魔族達も味方についている」
「ピ……ピルピルルゥゥ」
アルバート王子は、ガッチリ手厚く防衛されているであろうそんなサトーを倒せるのだろうか。
少しばかりルーシェの頭には不安が横切っていた。
「でも大丈夫です。バンナムもついていますし、私もついています。いろいろと策を考えましょう。殿下は勇者で、貴方は紫竜。出来ないことは何もないほど、強いはずですから」
そうレネは、ルーシェの頭を撫でながら励ますように言ったのだった。
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