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外伝
再会のために (6)
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後日、三橋友親が出来上がった“花形”の金属製の型を手に、竜騎兵団へ“転移”してやって来た。
もちろん、クッキー用の金属製の型も一緒に用意されている。
三橋友親は、膨大な魔力はあるが属性を全く持っていない。
その上、“転移”魔法などの上級魔法は、カルフィー魔術師かルティ魔術師に頼んで使ってもらうしかなかった。この時、友親が頼んだのはルティ魔術師であった。そして護衛としてケイオスも同行している。
カルフィー魔術師は、魔道具店への膨大な発注を処理することにてんてこ舞いであり、ルティ魔術師を睨みつけながら「貴方にも仕事があるんですから、トモチカを連れて、あのちびっこ竜に届け物をしたらまたすぐに戻って来て下さいね」と言っていた。
ちびっこ竜=ルーシェのことである。
ルーシェが聞いたら、逆上しそうな台詞である。
そもそも、ルーシェも、三橋友親の伴侶であるカルフィー魔術師のことが好きではなかった。内心「早く友親と離婚しろ」と思っている節があるのだ。
だから、ルーシェの元に送ってくれるのならルティ魔術師の方が良いだろうと思っていた友親だが、考えてみれば、ルーシェとルティ魔術師もあまり相性がいいとは言えない。以前、ルティ魔術師も紫竜ルーシェをアレドリア王国魔術師ギルドに連れ去ろうとしたことがあったのだから……。
(まぁ、今はこいつもアレドリアの魔術師ギルドとは縁が切れているような感じだから、いいのかな)
そう自分を納得させながら、友親はケイオスとルティ魔術師の二人と“転移”する。
“転移”場所は、寮のアルバート王子の居室だった。
現れた瞬間に、小さな幼児姿のルーシェが、友親の膝を目掛けて突進してきた。
三橋友親の到着を待ち受けていた紫竜ルーシェは、友親と話がしやすい人型を取っていたのだ。それも今回は幼児姿だった。
「友親!!」
そう言って、友親の膝に抱き着いているルーシェは、可愛い顔を友親の方に向けて、大きな黒い瞳で見上げる。
友親は、いつ見ても、びっくりするくらい整った顔立ちをしている幼児姿のルーシェに「お前は本当に馬鹿みたいに可愛いな」と言って、髪を撫で回していた。
「髪がぐしゃぐしゃになっちゃうだろう」
唇を尖らせるルーシェの手に、ぽんと友親は紙製の箱を手渡した。
「頼まれていたものだ」
それで、ルーシェは目を輝かせ、頬を赤らめて言った。
「ありがとう!! トモチカ!! お前やっぱり仕事早いな!!」
その二人のやりとりを、ケイオスは腕を組んだまま黙って見守り、ルティ魔術師はぽつりと「あの小さな子供はトモチカの何なのですか」と呟くように言っていた。それにケイオスが「あの子供はトモチカの親友だな」と答えたので、ルティ魔術師は驚いていた。
「あんな小さな子供が、トモチカの親友なのですか」
三歳児くらいの、言葉も少し覚束ないような幼児である。三十を越えている友親の子供だと言ってもいいような年齢差である。
ケイオスは、ルティ魔術師に、ルーシェと友親の過去の因縁など話したこともないし、話すつもりもなかった。別にルティ魔術師から変に思われても構わない。
いつもはアルバート王子の膝の上に座るルーシェは、今回は椅子に座る三橋友親のすぐ横に座って、紙製の箱を開いた。その中に、薄紙に包まれた金属製の型がある。取り出してみると、それはカーブの緩やかな花型の型である。
「そうそう、コレ、この形だよ!!」
ルーシェは大喜びで、友親に言った。
「ありがとな、友親。まさにこれが欲しかったんだ。お前にも“花丸”ハンバーグを作ってやるからな」
「楽しみにしてるよ」
「うん。うわ、他にも型が入ってる。動物の型だな。ウサギとか、ネコとかかわいいな」
「それはクッキーの型だ。小さめだろう」
「そうだね。うわぁ、本当いっぱい作ってくれたんだ。ありがとう、友親。なんかお礼しないといけないな。なんか俺にして欲しいことある?」
「またたくさんクッキーを作ってくれよ。お前の作るクッキー美味いから、俺、好きなんだよ」
「そんなことでいいの? そうだ、俺の背中に特別に乗せてやるよ!!」
俺の背中に乗せてやるよ!!
そんなことを可愛い幼児が目を輝かせて言っている。それに、ルティ魔術師はギョッとしていた。
小柄な友親といえども、幼児よりは遥かに大きい体をしている。
背中に乗せたら幼児が圧死するだろう。
「…………なんかお前、悪戯しそうだから嫌だ」
そう言う友親に、今まで口を挟むことなく黙っていたアルバート王子も口を開いた。
「ルーは調子に乗ると、急降下とかしますから、確かにあまりトモチカ殿にはお勧めし辛いですね」
幼児が背中に乗せて急降下?
ルティ魔術師の目は丸くなっている。
そしてその誤解を認めたケイオスは、口を押えて笑いを堪えようとしていた。
「ちゃんと、友親にはするよ!! 急降下なんてしない。それだって王子が喜ぶからしてやっているんだろう!!」
頬を赤くして怒ったように言うルーシェに、アルバート王子は「そうなのか? 私を驚かせて楽しんでいるじゃないか」と言っている。
なんとなくそうした和やかな会話が交わされる中、こんな小さな幼児の背にアルバート王子も乗って急降下して喜んでいると聞いたルティ魔術師は、なんとも言えぬ表情で、アルバート王子を見つめていたのだった。
もちろん、クッキー用の金属製の型も一緒に用意されている。
三橋友親は、膨大な魔力はあるが属性を全く持っていない。
その上、“転移”魔法などの上級魔法は、カルフィー魔術師かルティ魔術師に頼んで使ってもらうしかなかった。この時、友親が頼んだのはルティ魔術師であった。そして護衛としてケイオスも同行している。
カルフィー魔術師は、魔道具店への膨大な発注を処理することにてんてこ舞いであり、ルティ魔術師を睨みつけながら「貴方にも仕事があるんですから、トモチカを連れて、あのちびっこ竜に届け物をしたらまたすぐに戻って来て下さいね」と言っていた。
ちびっこ竜=ルーシェのことである。
ルーシェが聞いたら、逆上しそうな台詞である。
そもそも、ルーシェも、三橋友親の伴侶であるカルフィー魔術師のことが好きではなかった。内心「早く友親と離婚しろ」と思っている節があるのだ。
だから、ルーシェの元に送ってくれるのならルティ魔術師の方が良いだろうと思っていた友親だが、考えてみれば、ルーシェとルティ魔術師もあまり相性がいいとは言えない。以前、ルティ魔術師も紫竜ルーシェをアレドリア王国魔術師ギルドに連れ去ろうとしたことがあったのだから……。
(まぁ、今はこいつもアレドリアの魔術師ギルドとは縁が切れているような感じだから、いいのかな)
そう自分を納得させながら、友親はケイオスとルティ魔術師の二人と“転移”する。
“転移”場所は、寮のアルバート王子の居室だった。
現れた瞬間に、小さな幼児姿のルーシェが、友親の膝を目掛けて突進してきた。
三橋友親の到着を待ち受けていた紫竜ルーシェは、友親と話がしやすい人型を取っていたのだ。それも今回は幼児姿だった。
「友親!!」
そう言って、友親の膝に抱き着いているルーシェは、可愛い顔を友親の方に向けて、大きな黒い瞳で見上げる。
友親は、いつ見ても、びっくりするくらい整った顔立ちをしている幼児姿のルーシェに「お前は本当に馬鹿みたいに可愛いな」と言って、髪を撫で回していた。
「髪がぐしゃぐしゃになっちゃうだろう」
唇を尖らせるルーシェの手に、ぽんと友親は紙製の箱を手渡した。
「頼まれていたものだ」
それで、ルーシェは目を輝かせ、頬を赤らめて言った。
「ありがとう!! トモチカ!! お前やっぱり仕事早いな!!」
その二人のやりとりを、ケイオスは腕を組んだまま黙って見守り、ルティ魔術師はぽつりと「あの小さな子供はトモチカの何なのですか」と呟くように言っていた。それにケイオスが「あの子供はトモチカの親友だな」と答えたので、ルティ魔術師は驚いていた。
「あんな小さな子供が、トモチカの親友なのですか」
三歳児くらいの、言葉も少し覚束ないような幼児である。三十を越えている友親の子供だと言ってもいいような年齢差である。
ケイオスは、ルティ魔術師に、ルーシェと友親の過去の因縁など話したこともないし、話すつもりもなかった。別にルティ魔術師から変に思われても構わない。
いつもはアルバート王子の膝の上に座るルーシェは、今回は椅子に座る三橋友親のすぐ横に座って、紙製の箱を開いた。その中に、薄紙に包まれた金属製の型がある。取り出してみると、それはカーブの緩やかな花型の型である。
「そうそう、コレ、この形だよ!!」
ルーシェは大喜びで、友親に言った。
「ありがとな、友親。まさにこれが欲しかったんだ。お前にも“花丸”ハンバーグを作ってやるからな」
「楽しみにしてるよ」
「うん。うわ、他にも型が入ってる。動物の型だな。ウサギとか、ネコとかかわいいな」
「それはクッキーの型だ。小さめだろう」
「そうだね。うわぁ、本当いっぱい作ってくれたんだ。ありがとう、友親。なんかお礼しないといけないな。なんか俺にして欲しいことある?」
「またたくさんクッキーを作ってくれよ。お前の作るクッキー美味いから、俺、好きなんだよ」
「そんなことでいいの? そうだ、俺の背中に特別に乗せてやるよ!!」
俺の背中に乗せてやるよ!!
そんなことを可愛い幼児が目を輝かせて言っている。それに、ルティ魔術師はギョッとしていた。
小柄な友親といえども、幼児よりは遥かに大きい体をしている。
背中に乗せたら幼児が圧死するだろう。
「…………なんかお前、悪戯しそうだから嫌だ」
そう言う友親に、今まで口を挟むことなく黙っていたアルバート王子も口を開いた。
「ルーは調子に乗ると、急降下とかしますから、確かにあまりトモチカ殿にはお勧めし辛いですね」
幼児が背中に乗せて急降下?
ルティ魔術師の目は丸くなっている。
そしてその誤解を認めたケイオスは、口を押えて笑いを堪えようとしていた。
「ちゃんと、友親にはするよ!! 急降下なんてしない。それだって王子が喜ぶからしてやっているんだろう!!」
頬を赤くして怒ったように言うルーシェに、アルバート王子は「そうなのか? 私を驚かせて楽しんでいるじゃないか」と言っている。
なんとなくそうした和やかな会話が交わされる中、こんな小さな幼児の背にアルバート王子も乗って急降下して喜んでいると聞いたルティ魔術師は、なんとも言えぬ表情で、アルバート王子を見つめていたのだった。
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