転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

文字の大きさ
345 / 711
外伝

再会のために (6)

しおりを挟む
 後日、三橋友親が出来上がった“花形”の金属製の型を手に、竜騎兵団へ“転移”してやって来た。
 もちろん、クッキー用の金属製の型も一緒に用意されている。

 三橋友親は、膨大な魔力はあるが属性を全く持っていない。
 その上、“転移”魔法などの上級魔法は、カルフィー魔術師かルティ魔術師に頼んで使ってもらうしかなかった。この時、友親が頼んだのはルティ魔術師であった。そして護衛としてケイオスも同行している。
 カルフィー魔術師は、魔道具店への膨大な発注を処理することにてんてこ舞いであり、ルティ魔術師を睨みつけながら「貴方にも仕事があるんですから、トモチカを連れて、あのちびっこ竜に届け物をしたらまたすぐに戻って来て下さいね」と言っていた。

 ちびっこ竜=ルーシェのことである。

 ルーシェが聞いたら、逆上しそうな台詞である。
 そもそも、ルーシェも、三橋友親の伴侶であるカルフィー魔術師のことが好きではなかった。内心「早く友親と離婚しろ」と思っている節があるのだ。

 だから、ルーシェの元に送ってくれるのならルティ魔術師の方が良いだろうと思っていた友親だが、考えてみれば、ルーシェとルティ魔術師もあまり相性がいいとは言えない。以前、ルティ魔術師も紫竜ルーシェをアレドリア王国魔術師ギルドに連れ去ろうとしたことがあったのだから……。

(まぁ、今はこいつもアレドリアの魔術師ギルドとは縁が切れているような感じだから、いいのかな)

 そう自分を納得させながら、友親はケイオスとルティ魔術師の二人と“転移”する。
 “転移”場所は、寮のアルバート王子の居室だった。
 

 現れた瞬間に、小さな幼児姿のルーシェが、友親の膝を目掛けて突進してきた。
 三橋友親の到着を待ち受けていた紫竜ルーシェは、友親と話がしやすい人型を取っていたのだ。それも今回は幼児姿だった。

「友親!!」

 そう言って、友親の膝に抱き着いているルーシェは、可愛い顔を友親の方に向けて、大きな黒い瞳で見上げる。
 友親は、いつ見ても、びっくりするくらい整った顔立ちをしている幼児姿のルーシェに「お前は本当に馬鹿みたいに可愛いな」と言って、髪を撫で回していた。

「髪がぐしゃぐしゃになっちゃうだろう」

 唇を尖らせるルーシェの手に、ぽんと友親は紙製の箱を手渡した。

「頼まれていたものだ」

 それで、ルーシェは目を輝かせ、頬を赤らめて言った。

「ありがとう!! トモチカ!! お前やっぱり仕事早いな!!」

 その二人のやりとりを、ケイオスは腕を組んだまま黙って見守り、ルティ魔術師はぽつりと「あの小さな子供はトモチカの何なのですか」と呟くように言っていた。それにケイオスが「あの子供はトモチカの親友だな」と答えたので、ルティ魔術師は驚いていた。

「あんな小さな子供が、トモチカの親友なのですか」

 三歳児くらいの、言葉も少し覚束ないような幼児である。三十を越えている友親の子供だと言ってもいいような年齢差である。
 ケイオスは、ルティ魔術師に、ルーシェと友親の過去の因縁など話したこともないし、話すつもりもなかった。別にルティ魔術師から変に思われても構わない。

 いつもはアルバート王子の膝の上に座るルーシェは、今回は椅子に座る三橋友親のすぐ横に座って、紙製の箱を開いた。その中に、薄紙に包まれた金属製の型がある。取り出してみると、それはカーブの緩やかな花型の型である。

「そうそう、コレ、この形だよ!!」

 ルーシェは大喜びで、友親に言った。

「ありがとな、友親。まさにこれが欲しかったんだ。お前にも“花丸”ハンバーグを作ってやるからな」

「楽しみにしてるよ」

「うん。うわ、他にも型が入ってる。動物の型だな。ウサギとか、ネコとかかわいいな」

「それはクッキーの型だ。小さめだろう」

「そうだね。うわぁ、本当いっぱい作ってくれたんだ。ありがとう、友親。なんかお礼しないといけないな。なんか俺にして欲しいことある?」

「またたくさんクッキーを作ってくれよ。お前の作るクッキー美味いから、俺、好きなんだよ」

「そんなことでいいの? そうだ、俺の背中に特別に乗せてやるよ!!」


 俺の背中に乗せてやるよ!!

 そんなことを可愛い幼児が目を輝かせて言っている。それに、ルティ魔術師はギョッとしていた。
 小柄な友親といえども、幼児よりは遥かに大きい体をしている。
 背中に乗せたら幼児が圧死するだろう。

「…………なんかお前、悪戯しそうだから嫌だ」

 そう言う友親に、今まで口を挟むことなく黙っていたアルバート王子も口を開いた。

「ルーは調子に乗ると、急降下とかしますから、確かにあまりトモチカ殿にはお勧めし辛いですね」

 幼児が背中に乗せて急降下?
 
 ルティ魔術師の目は丸くなっている。
 そしてその誤解を認めたケイオスは、口を押えて笑いを堪えようとしていた。

「ちゃんと、友親にはするよ!! 急降下なんてしない。それだって王子が喜ぶからしてやっているんだろう!!」

 頬を赤くして怒ったように言うルーシェに、アルバート王子は「そうなのか? 私を驚かせて楽しんでいるじゃないか」と言っている。
 なんとなくそうした和やかな会話が交わされる中、こんな小さな幼児の背にアルバート王子も乗って急降下して喜んでいると聞いたルティ魔術師は、なんとも言えぬ表情で、アルバート王子を見つめていたのだった。
しおりを挟む
感想 276

あなたにおすすめの小説

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

悪役令息に転生したらしいけど、何の悪役令息かわからないから好きにヤリチン生活ガンガンしよう!

ミクリ21 (新)
BL
ヤリチンの江住黒江は刺されて死んで、神を怒らせて悪役令息のクロエ・ユリアスに転生されてしまった………らしい。 らしいというのは、何の悪役令息かわからないからだ。 なので、クロエはヤリチン生活をガンガンいこうと決めたのだった。

王様お許しください

nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。 気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。 性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。 挿絵をchat gptに作成してもらいました(*'▽'*)

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。 目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。 同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります! 俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ! 重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ) 注意: 残酷な描写あり 表紙は力不足な自作イラスト 誤字脱字が多いです! お気に入り・感想ありがとうございます。 皆さんありがとうございました! BLランキング1位(2021/8/1 20:02) HOTランキング15位(2021/8/1 20:02) 他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00) ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。 いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

処理中です...