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外伝 はじまりの物語 第二章 彼の願いは
第二話 帰路
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“黒の魔人”が棲んでいた北の山から、時間をかけて勇者の鈴木達一行は戻って来た。
先行きのまったく分からなかった行きと比べると、帰りの一行の表情は皆、明るかった。
鈴木陸も、三橋友親も、沢谷雪也も、そして委員長石野凛も、機嫌よく、すでに元の世界へ帰ってからのことばかり考えていた。
帰路の道では、温泉の素を入れた熱々のお風呂に入りたいとか、続けて見ていたアニメ番組を見たいとか、好きだったコンビニアイスをたらふく買いに行きたいとか、本当にたわいもないことばかり話していた。
たわいもないことだけど、この異世界では決して出来ないことばかりだ。
家族にも会いたい。
異世界に来て、四か月近い時間が経っている。
女神の力で元の世界に戻った時、時間は巻き戻され、生徒達を跳ね飛ばした“召喚”トラックは存在しなかったことになる。つまり、あの小道を歩いていた状態にそのまま戻されるのだろう。
しかし、この異世界での過ごした記憶は残される。
「戻ったら、君に会いに行くよ」
鈴木は言う。
横を歩く沢谷雪也も頷いた。
帰路も馬車で旅を続けていたが、川を渡るための船着き場まで、今、一行は歩くことになったのだ。
歩きながら雪也は言う。
「うん。俺も鈴木に会いに行く。携帯持ってる?」
「持っている。君の携帯電話番号を暗記するから教えてくれ」
「そうか!! メモしていくわけにはいかないもんな。記憶頼りってわけか」
二人は互いの携帯の電話番号を教え合い、雪也は聞いた番号をぶつぶつと口にしている。
「……覚えられるかな」
いささか不安そうだが、鈴木は一度聞いただけで雪也の携帯電話番号をすんなりと覚えられたようだ。
「さすが、青陵学園の生徒だな~」
その記憶力の良さを、感心したように雪也は言う。
「君が覚えていなくても、僕が覚えているから大丈夫だよ」
「そうだな」
雪也は笑った。
「じゃあ、俺、鈴木からの連絡を待ってるよ」
「分かった」
元の世界に戻ったら、真っ先に雪也に電話しようと鈴木は思っていた。
「俺に電話してくれたら、俺から友親や委員長の電話番号、教えてやるな。だから、鈴木は俺の電話番号だけを覚えれば済むからな」
「そうだね」
鈴木と雪也の後ろを黙って歩いていた委員長こと石野凛は、内心(鈴木君が連絡取りたいのは、あんただけでしょうが)と思っていたが、それを口に出すことはない。
そして委員長の少し後ろを歩いている三橋友親は、魔術師のカルフィーから話しかけられていた。
「トモチカ、お前は元の世界に戻らず、この異世界で暮らすことは考えていないのか」
「なんで俺がこんな異世界で暮らさないといけないんだ」
友親はにべもなくそう答える。
「俺が、テレビもゲームもマンガもないこの世界で暮らし続けるなんて、有り得ない」
「……テレビとかゲームとか、マンガというものがどういうものなのか分からないが、私が作れるものなら作ってやるから」
そう言うカルフィーの顔を、友親はマジマジと見つめ、頭を振った。
「カルフィーには作れない」
「私は腕の良い魔道具師だ!!」
「テレビとかゲームとか、マンガとか、魔道具師は作れないと思う。だいたいマンガはコンテンツだから。テレビだって、たとえテレビの機械をカルフィーが作れたとしても、番組が見られないことには意味がないし」
「意味がないとか言うが、お前の話している話の意味の方が分からないぞ!!」
それで、友親は仕方ないような顔をして、友親達の世界のマンガの話をした。そして友親達の世界では、毎年何万点という絵のついた物語が生み出されていることを知って、カルフィーは呆然としていた。
「……トモチカの世界は凄いのだな」
「そうだろう」
友親は我が事のように、誇らしげに笑顔を向ける。
「俺達の暮らしていた世界は凄いんだ。美味しい食べ物も溢れるくらいあるし、マンガだけじゃなく小説も、ゲームもたくさんある。俺が行きたい場所もまだまだたくさんあるんだ」
友親の頭の中は、元いた世界に帰ってからすること、したいことで一杯で、もはや今いる世界のことは頭にはない。それだけ友親にとって、元いた世界は魅力的で、今いるこの世界には魅力を感じないのだ。
そのことを知って、そしてどうしても友親をこの世界に引き留めることが難しいと感じたカルフィーは、後に、剣士のケイオスにぽつりと言ったのだ。
「やはり、トモチカを強引に引き留めるしかないのかも知れない」
“転移”魔法で、無理やり友親をこの世界に引き留める。
そうなれば、異世界に取り残された友親は、間違いなくカルフィーのことを怨むだろう。
出来るなら、カルフィーは自分の説得で、友親には自主的に残って欲しかった。
でも、やはりそれは難しいようだった。
先行きのまったく分からなかった行きと比べると、帰りの一行の表情は皆、明るかった。
鈴木陸も、三橋友親も、沢谷雪也も、そして委員長石野凛も、機嫌よく、すでに元の世界へ帰ってからのことばかり考えていた。
帰路の道では、温泉の素を入れた熱々のお風呂に入りたいとか、続けて見ていたアニメ番組を見たいとか、好きだったコンビニアイスをたらふく買いに行きたいとか、本当にたわいもないことばかり話していた。
たわいもないことだけど、この異世界では決して出来ないことばかりだ。
家族にも会いたい。
異世界に来て、四か月近い時間が経っている。
女神の力で元の世界に戻った時、時間は巻き戻され、生徒達を跳ね飛ばした“召喚”トラックは存在しなかったことになる。つまり、あの小道を歩いていた状態にそのまま戻されるのだろう。
しかし、この異世界での過ごした記憶は残される。
「戻ったら、君に会いに行くよ」
鈴木は言う。
横を歩く沢谷雪也も頷いた。
帰路も馬車で旅を続けていたが、川を渡るための船着き場まで、今、一行は歩くことになったのだ。
歩きながら雪也は言う。
「うん。俺も鈴木に会いに行く。携帯持ってる?」
「持っている。君の携帯電話番号を暗記するから教えてくれ」
「そうか!! メモしていくわけにはいかないもんな。記憶頼りってわけか」
二人は互いの携帯の電話番号を教え合い、雪也は聞いた番号をぶつぶつと口にしている。
「……覚えられるかな」
いささか不安そうだが、鈴木は一度聞いただけで雪也の携帯電話番号をすんなりと覚えられたようだ。
「さすが、青陵学園の生徒だな~」
その記憶力の良さを、感心したように雪也は言う。
「君が覚えていなくても、僕が覚えているから大丈夫だよ」
「そうだな」
雪也は笑った。
「じゃあ、俺、鈴木からの連絡を待ってるよ」
「分かった」
元の世界に戻ったら、真っ先に雪也に電話しようと鈴木は思っていた。
「俺に電話してくれたら、俺から友親や委員長の電話番号、教えてやるな。だから、鈴木は俺の電話番号だけを覚えれば済むからな」
「そうだね」
鈴木と雪也の後ろを黙って歩いていた委員長こと石野凛は、内心(鈴木君が連絡取りたいのは、あんただけでしょうが)と思っていたが、それを口に出すことはない。
そして委員長の少し後ろを歩いている三橋友親は、魔術師のカルフィーから話しかけられていた。
「トモチカ、お前は元の世界に戻らず、この異世界で暮らすことは考えていないのか」
「なんで俺がこんな異世界で暮らさないといけないんだ」
友親はにべもなくそう答える。
「俺が、テレビもゲームもマンガもないこの世界で暮らし続けるなんて、有り得ない」
「……テレビとかゲームとか、マンガというものがどういうものなのか分からないが、私が作れるものなら作ってやるから」
そう言うカルフィーの顔を、友親はマジマジと見つめ、頭を振った。
「カルフィーには作れない」
「私は腕の良い魔道具師だ!!」
「テレビとかゲームとか、マンガとか、魔道具師は作れないと思う。だいたいマンガはコンテンツだから。テレビだって、たとえテレビの機械をカルフィーが作れたとしても、番組が見られないことには意味がないし」
「意味がないとか言うが、お前の話している話の意味の方が分からないぞ!!」
それで、友親は仕方ないような顔をして、友親達の世界のマンガの話をした。そして友親達の世界では、毎年何万点という絵のついた物語が生み出されていることを知って、カルフィーは呆然としていた。
「……トモチカの世界は凄いのだな」
「そうだろう」
友親は我が事のように、誇らしげに笑顔を向ける。
「俺達の暮らしていた世界は凄いんだ。美味しい食べ物も溢れるくらいあるし、マンガだけじゃなく小説も、ゲームもたくさんある。俺が行きたい場所もまだまだたくさんあるんだ」
友親の頭の中は、元いた世界に帰ってからすること、したいことで一杯で、もはや今いる世界のことは頭にはない。それだけ友親にとって、元いた世界は魅力的で、今いるこの世界には魅力を感じないのだ。
そのことを知って、そしてどうしても友親をこの世界に引き留めることが難しいと感じたカルフィーは、後に、剣士のケイオスにぽつりと言ったのだ。
「やはり、トモチカを強引に引き留めるしかないのかも知れない」
“転移”魔法で、無理やり友親をこの世界に引き留める。
そうなれば、異世界に取り残された友親は、間違いなくカルフィーのことを怨むだろう。
出来るなら、カルフィーは自分の説得で、友親には自主的に残って欲しかった。
でも、やはりそれは難しいようだった。
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