転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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外伝 ある護衛騎士の災難  第一章

第十三話 餞別

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 翌日の夜、アンリ王子が私に抱きつくようにして眠ろうとした時、私はアンリ王子の頬に手で触れ、その碧い瞳をじっと見つめた。
 なんとなしに、彼は私の言いたいことを察したのか、アンリ王子の瞳が輝き始める。

 なお、その前に私は、天蓋つきの寝台の上部から垂らすことのできる薄布を全て下ろさせていた。
 天蓋の四方の布が全て下ろされると、布で囲われた内部で行われていることはうっすらとシルエットでしか分からない。
 本当なら、室内にいる警護の護衛騎士達全てを部屋から追い出したかったが、貴人であるアンリ王子の身分ではそれは許されない。王子たる身は、護衛に見守られながら、愛を交わすものだった。
 だから、私は寝台の天蓋の薄布を全て下ろすことしか出来なくて、そしてそれをすることでも、アンリ王子はこれから先、私が望んでいることを察したのだ。

「ハヴリエル……」

 アンリ王子の碧い瞳が熱をたたえて私を見つめる。
 私は初めて、彼に、私の方から口づけた。
 アンリ王子も喜んでそれに応え、互いに貪るように口付けていく。
 
 そして私達は寝台を軋ませ、初めて、愛し合ったのだ。
 私は、男同士のやり方は知っていたが、実際にそうした行為をしたことはなかった。
 むしろ、アンリ王子の方が男同士での行為の経験は豊富であった。

 寝台にのる前から、事前にその場所をほぐし、濡らして準備を済ませていた私に、アンリ王子は喜んでいた。

「ハヴリエル、酷いことはしない。優しくすると誓う」

 実際、彼は慎重に、そして誰よりも優しく私に触れた。
 彼が今まで抱いていた華奢で美しい少年達とは全く違う、しっかりとした筋肉のついた男の身体である。アンリ王子の好みとは正反対のはずだ。でも、未だ私に恋する呪いがかけられたままの彼は、私の鍛え抜かれた身体を眩しそうに見つめながら、下に組み伏せる。
 
 私は、自分を酷い奴だと思っている。
 呪いを受け、正気ではない王子に、最後の最後で、自分を抱かせている。

 ただもうこれっきりのことだから、きっとそれは許されるだろうと、自分に言い聞かせている。
 もう二度と、王子殿下にお目にかかることはないのだから。
 
 互いに汗に濡れ、熱い肌を触れ合わせる。のしかかってくる黄金の髪の碧い瞳の美しいアンリ王子。
 彼に抱かれたこの一夜の記憶を、私は忘れないように心に刻み込んだ。




 明け方近くまで私達は愛し合い、そしてなおも旺盛に私を求めようとしていた王子を、手刀で昏倒させた。気絶した彼に毛布をバサリとかけて、横たえる。
 それから部屋の隣に設置されている浴室で身を清め、用意していた外出着を手早く身に付けていく。
 マントにブーツ、シャツにズボンという、旅支度である。
 腰には剣も佩いた。

 すでに近衛騎士団長に、辞職届を提出しており、問題なくそれは受理されている。
 この後、私が王宮を退出することも護衛騎士達は知っている。
 私がテキパキと身支度を整えているのを見て、彼らの一人が声を掛けた。

「本当に行ってしまうのか、ハヴリエル卿」

「行くしかあるまい。残れば、呪いが解けた王子殿下に」

 なじられ、責められる。
 アンリ王子は私を許さないだろう。
 今まで甘く愛を囁いていたその唇から、怒りの言葉が発せられることを思うと、私は耐えられないと思った。
 そう、耐えられない。

 護衛騎士の一人が言った。

「卿が、殿下のしとねに侍るとは思わなかった」

「餞別だ」

 私は短く答える。
 
 それは誰にとっての餞別だろうかと、護衛騎士達は考えた。しかし、それを問う言葉を口にしなかった。
 
 私は、今の呪いのかけられているアンリ王子が好きだったのだと思う。
 だからこそ、呪いが解かれて変わってしまう彼と対峙することを恐れた。
 呪いがかけられ、その偽りの恋ゆえに甘く見つめてくるアンリ王子。これまでの日々は、ふわふわとした夢のような出来事だった。
 そしてその夢は、ようやく目醒める時間を迎えた。
 終幕が下ろされた舞台からは立ち去るしかない。

 
 その後、私は王宮から退出した。
 同時に、王都の私の実家の子爵家に手紙を出した。
 弟のエゼキエルは、すでに北方地方へ出立しているだろうか。
 だが、もしエゼキエルが出立していなければ、「預けた手紙はアルバート王子殿下に届けなくて良い、処分しておくれ」と頼む内容であった。そしてもし出立していたのならば、「アルバート王子からの返信としてお預かりする手紙もまた、処分して欲しい」と頼んでいた。

 もはや二度と王宮へ戻るつもりのない私にとって、アンリ王子の呪いについて北方地方のアルバート王子に問い合わせる必要もなく、その結果を聞く必要もなかったからだ。
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