転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です  第三章 再びの出会い

第十話 小さな竜の密かな決意

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 イスフェラ皇国に多くの兵士達が集った結果、その兵士達が通う酒場や武器店、宿、娼館といったものが非常に賑わっていた。褒賞を手にした兵士達は、戦いの喜びと恐怖が紙一重で、どこか大仰で乱暴に騒ぐ者達も多かった。だが、彼らの持ち込む大量の金はイスフェラ皇国を都を、人々を潤した。
 皇国のために戦う兵士達と彼らの持ち込む気前の良い金を、イスフェラ皇国の商人達が揉み手でもてなしていた一方、頻繁に喧嘩や騒動が起きていた。様々な場所から集まって来た兵士達である。規律を守る兵士もいたが、中にはどうしようもない低俗な、屑のような兵士達も含まれていた。

 ゲランは、イスフェラ皇国の都に入ってすぐに、都の中の兵士達の多さと、妙な活気があることに気が付いた。浮ついたような空気感を感じ取ると、ゲランはすぐさまユーリスの手を取り、この都で最も高い宿に宿泊を求めた。

「ユーリス様、ここでは絶対に俺のそばから離れないで下さいね」

「分かった」

 素直にゲランの言葉に従う。
 実際、都に入ってから、ユーリスの美貌に目をやって物欲しげに見る男達が何人もいた。気を付けていなければすぐにかどわかされそうである。

(はぁ、ユーリス様は本当に美人だからな……)

 彼の父親のバンクール商会長ジャクセンは、水も滴るような美男子である。その息子ユーリスは、雛型のようにジャクセンそっくりに成長していた。そこに黙って立っているだけでも、人々の視線を自然と集めてしまう。そして、五年前シルヴェスター王子と恋人同士であったというユーリスは、おそらく王子と肉体的な関係もあったのだろうと思われた。それ故にどこか色っぽいのだ。ため息をついたり、目を伏せたりする時のちょっとした醸し出される色香に惑わされる者達も多く、実際、アレドリア王国の大学にいた時には頻繁に交際を求められ、ゲランが盾になる日々だった。
 商会長である父親ジャクセンが自身の後継者にと望んでいたから、ユーリスの言動にも優柔不断さはなく、芯の通ったところがあった。学者として成功しているところからも、頭脳も明晰である。能力も高く目を惹く美貌の持ち主であるからこそ、誰かれとモテてしまうのだ。

 都に入ってから、ゲランが少し後悔したのが、ユーリスの護衛を自分以外も連れてくるべきであったということだった。

(俺一人でユーリス様を守り切れるだろうか……)

 不安だった。



 高級宿の宿泊料金は高額であった。
 ユーリスも提示された金額に少し驚いたが、大人しく代金を支払う。
 都の物価が、全て上がっているという話であり、宿に至ってはどこも満員に近い状態らしい。泊まる場所を見つけられただけでも幸運だった。
 だが、これでは長い期間、イスフェラ皇国に留まることは出来ない。資金が足りなくなってしまう。
 早くシルヴェスターを見つけて、彼と会わなくてはならないだろう。

 ユーリスは王都でも指折りだという高級宿の部屋の中に入り、フカフカの寝具が置かれている大きな寝台の上に横になった。
 胸元の布袋に入っていたウェイズリーはすでに部屋の中へ出して自由にしている。

(シルヴェスター殿下のいるクランの場所はもう分かっているんだ。明日にでも早速会いに行こう)

 そう考えている中、小さな黄金色の竜は、宿の部屋の中を一通り飛んで見て回り、嬉しそうに声を上げていた。

「キュイキュイキュルキュルキュルルルルキュー(ここはなかなかいい場所ではないか。部屋も綺麗で家具も揃っている)」

「そうだね。広くて過ごしやすいだろう」

「キュルキュルキュルルルキュルキュル(お前も、このようにもっと立派なところへ住むべきだ。広い部屋、立派な家具)」

 チロリと天蓋のついた大きな寝台をウェイズリーは見つめる。その寝台は、人が五、六人は横になれそうだ。

「キュルルルルキュルキュル(ふさわしい大きな寝台)」

 その言葉になんとなしに不穏なものを感じたユーリスは、寝台の上の小さなクッションの一つを掴んで、飛んでいる黄金竜に向けて投げつけた。ウェイズリーの腹にぽすんと当たってクッションが下に落ちる。

「キュ?」

 首を傾げ、とぼけたような振りをするウェイズリー。
 その仕草がなんとなしにおかしくて、ユーリスは更に小さなクッションをウェイズリーに投げつけた。ウェイズリーもユーリスが遊んでくれていると思ったようで、「キュッキュッ」と嬉しそうな声を上げて、クッションを受け止めては軽く投げ返してくれる。
 二人がクッションを投げ合っているその部屋に入って来た護衛のゲランは、少しだけ目を開いて「何やってるんですか、ユーリス様」と言った。それにユーリスは赤面するのだった。



「宿の者にクランの場所を聞いてきました」

「有難う、ゲラン」

「明日の午前中に行きましょう」

「キュルルルキュルキュルルルル(シルヴェスターという奴に会うのか)」

 椅子に座るユーリスの膝の上にいるウェイズリーが、ユーリスを見上げて尋ねてくる。

「そうだ。明日の朝に会う。ウェイズリー、いい子にしてくれよ。くれぐれも、シルヴェスター殿下に乱暴はしないでおくれ」

「キュー(勿論だよ)」

 ユーリスの注意に、素直に黄金竜の雛ウェイズリーは従っていた。
 しかし、内心は違っていた。

(シルヴェスターとやらは、ユーリスに近づけてはならない。私の大切な番を……惑わせてしまう)

 いっそのこと、会った瞬間に、金色の芽でシルヴェスターの身体を掴み、千切ってしまおうかと思った。首と胴体を離せば、人間は死ぬだろう。
 ユーリスは、大切な友人だというシルヴェスターの死を悲しむだろうが、自分が慰めればいい。
 きっと、悲しみから立ち直ってくれる。

(そうだ。そうしよう)

 小さな黄金竜の雛は、ユーリスの膝の上で、シルヴェスター王子の殺害を心密かに決意していたのだった。
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