転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です  第五章 その王子と竜に愛されたら大変です(上)

第八話 撤退期限の到来

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 旧カリン王国の領土から、サトー王国軍に撤退を勧告した期限の日がやって来た。
 獅子面の騎士ローエングリンの話だと、魔族の半数以上のものが、撤退に同意しているという。それというのも、以前、小さな黄金竜の雛が魔界へ単身で攻め入って、多くの魔族を惨殺した事件があったからだ。その時の黄金竜の恐ろしさを見聞きした魔族達は、黄金竜には「触らぬ神に祟りなし」といった様子で怯えながら撤退に同意したのだ。
 だが、それでも一部の魔族達は残っているし、サトー王国軍も全てが撤退したわけではない。

 クラン長ダンカンは、シルヴェスターに重々しい口調で言った。

「出来るな、シルヴェスター」

 クランの者達をはじめ、イスフェラ皇国軍の者達は、シルヴェスターが何らかの魔法の力でサトー王国軍を撃退できるという話を事前に聞いていた。三日前のサトー王国軍と魔族達を惨殺した事件もその力によるものと知らされている。
 だが、まさか、そんな力がこの若い冒険者の男にあるはずがないというような、半信半疑の面持ちで見つめる者も多かった。

「分かりました」

 シルヴェスターは、ただその一言を口にしただけだった。
 そして次いで、「終わりました。偵察の兵士を出して下さい」と述べる。
 それにダンカンは「分かった」と告げ、ただちに偵察兵を差し向ける。

 あまりにも平然としたその短いやりとりに、天幕の中はざわついていた。

 半刻ほど後に、顔を強張らせている偵察兵達が、震える声で報告した。

「敵兵、全て全滅しております」

 彼らは元より、多くの兵士、騎士達、そしてクランの仲間達がシルヴェスターの姿を目を見開いて、畏れを感じたように凝視していた。

 ダンカンは言った。

「この力は、“黄金竜”の守りによるものだ。我々には“黄金竜”の守りがついている。いかな強力な敵といえども、粉砕することのできるこの力を恐れるな。感謝を捧げよ。味方の血を一滴も流すことのないことに。黄金竜は我々を守ってくれているのだ!!」

 ダンカンの発破に、天幕の兵士達もうなずき、やがて同意するような声を上げ、歓声も上がる。
 シルヴェスターは波のうねりのように、次第に大きくなっていくそれらの声を耳にしながらも、無性にユーリスに会いたい気持ちになっていた。

 彼の微笑みを見たい。
 彼の声を聞きたい。
 彼の体を抱きしめたい。

 シルヴェスターの瞼の裏には、先ほど、しいした無残な死体が累々と地面に転がる光景が焼き付けられている。ダンカンの言葉で、黄金竜の雛ウェイズリーは待ち構えていたかのように一瞬で、敵を、サトー王国軍の兵士達を、魔族達をほふった。数えきれないほどたくさんの人間と魔族が、今も敵地で累々と転がっている。

 それを思うと、シルヴェスターは息が詰まる思いだった。

 それと共に、衝動のような思いが湧き上がる。
 今すぐにでも、無性にユーリスに会いたい。


 次の瞬間、天幕の中からシルヴェスターの姿は消えた。ダンカンは少しばかり驚いた表情で彼のいなくなった空間を見つめた後、黙り込み、後処理のため動き出したのだった。



 レイヴン城でいつものように仕事に励んでいたユーリスは、いつの間にか自分の後ろにシルヴェスターが現れ、自分の体を抱きしめると同時に、また“転移”したことに驚いた。
 シルヴェスターはユーリスを抱きしめたまま、自室の寝台のそばに立つ。

「……シルヴェスター?」

 自分を抱きしめている男が、シルヴェスターであることがユーリスにはすぐに分かった。
 そして、いつもと彼の雰囲気が違うことにも気が付いた。

「どうしたのですか」

 シルヴェスターに向かい合い、彼の頬に手を触れさせると、まるでウェイズリーのようにその手に頬ずりをされる。

「ヴィー」

 シルヴェスターの開かれた目が、碧から、金色に変わっている。
 それは息を飲むほど綺麗な双眸だった。
 時々、シルヴェスターの目の色はこうして変わってしまうのだ。興奮してしまうと気づかずに変わってしまうと言っていた。だから今、彼は興奮しているのだろう。

 シルヴェスターに身体を強く抱きしめられる。

「どうしたのですか。ヴィー」

 なんとなしにおかしい。ユーリスはシルヴェスターの黄金の髪も撫でる。
 そうしていると、シルヴェスターはユーリスの唇に自分の唇を重ね、いつものように舌を絡めてくる。

「……ん」

 常日頃睦み合っていた二人であったから、ユーリスはすぐにそれに反応してしまう。
 身体が熱を持ち始める。身体の奥が疼き始める。

 彼が自分を欲しているのが分かる。
 愛しい男に触れられると、自分も彼が欲しくなってくる。
 
 でも、日中は戦場にいて、夜に帰城してくるシルヴェスターが、このように唐突に仕事場からユーリスを“転移”で連れ出して、求めようとするのはおかしかった。

「ヴィー」

 シルヴェスターは優しくユーリスの身体を寝台の上に倒し、その唇を再度貪った後、ユーリスの青い瞳を見つめて言った。

「戦いが終わる。ユーリス。どうか私と結婚してくれ。私と一緒にいてくれ」

 シルヴェスターの様子をおかしいと思いながらも、彼はそれを言いたいがために、わざわざ戦場から真っ直ぐに自分の元へやって来てくれたのだろうかとも思う。

「ええ、喜んで」

 以前にも「この戦いが終わったら結婚して欲しい」と望まれていた。その時もユーリスは頷いていた。
 だから今回も、当然のように頷いた。

 そして自分を抱きしめるシルヴェスターの身体を抱きしめ返し、微笑む。

「ずっと一緒にいます。ヴィー」

 そう言うユーリスの身体をシルヴェスターは抱き続けた。
 まるで、この世で自分を救ってくれるのはユーリスだけであるかのように強くしがみついていたのだった。









 そうしなければ、瞼の裏に、どこまでも累々と続く、多くの屍の転がる光景が浮かび上がるからだった。
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