転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です  第六章 その王子と竜に愛されたら大変です(下)

第四話 晴れの日(下)

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 新王ダンカンの即位の式典が終われば、今度は王子シルヴェスターとユーリス=バンクールの婚礼の式典が行われる。ダンカンと共に、長らくクラン“竜の牙”で、サトー王国軍と戦っていたシルヴェスター王子。シルヴェスターは見目も非常に良い若く凛々しい王子なのである。国民からの人気も当然、高かった。その後続いて行われる婚礼の式典にも、人々は期待を胸に興奮していた。
 シルヴェスター王子が婚姻する相手は、これまた麗しい美貌の持ち主のユーリス=バンクールという、北方の大国ラウデシア王国の、富豪バンクール商会の嫡子の若者である。シルヴェスター王子と好き合っていた彼は、ラウデシア王国での豊かな生活を惜しげもなく捨て去り、戦地までシルヴェスター王子を追いかけてきた情熱を持つ若者である。そんな二人のロマンスを聞いて、王国の人々はユーリス青年に好意的だった。

 初めてその噂を耳にしたユーリスは、頬を赤らめ、どこかわなわなと震えながらシルヴェスターを見つめていた。

「…………………………確かに、私はヴィーを追いかけてきましたが」

「嘘ではない。まことだろう」

 シルヴェスターは、新聞のような書きつけの紙を手にして、どこか嬉しそうに笑いながら、ユーリスを見つめる。これらの話は、ユーリスが国民に受け入れられやすいようにと、事前にダンカンやフィアが手を回して、国民の間に流布させたものだった。

「私を探して、追いかけてきてくれたじゃないか」

「………………そうですが」

 言葉にして改めて言われると、自分のあの時の勢いしかない行動に、恥ずかしい思いがしてしまう。耳が熱くなっていることがユーリスには分かっていた。
 シルヴェスターに会いたい。ただその一念だけで、黄金竜の雛ウェイズリーと護衛のゲランを連れて旅立った。五年も会っていなかった元恋人に会うために。拒絶されたらと、不安でいっぱいの気持ちだったが、彼の気持ちを確かめないではいられなかった。

「ユーリス」

 恥ずかしがっているユーリスが、可愛くて仕方ないようにシルヴェスターは、ユーリスの腰を掴んで抱き寄せる。甘い視線で彼を見つめ、その額に口づける。

(本当にユーリスは可愛い)

 式典の前のそうしたやりとりを、シルヴェスターは思い出して、自然と笑みがこぼれてしまう。
 今、ユーリスはバンクール商会が総力を挙げて用意した婚姻の衣装を身に付けている。他にも、商会長ジャクセンは、ユーリスに持参金や宝石、婚礼の家具を大量にもたせていた。なにせユーリスの実家は北方の大国、ラウデシア王国の富豪の一族である。それらの品々も目を瞠るほど立派なものばかりであった。部屋の一室がそうした品々でいっぱいになってしまった(それをユーリスは、黄金竜ウェイズリーに頼んで空中城に運んでもらっている。あちらは家具もまだ少なかったので丁度良かった)。

 花嫁も花婿も、純白の衣装を身に付けることがならいだった。
 ユーリスは、白地に銀の刺繍、すべてに金剛石の散らされた衣装を身に付けていた。あまり派手な衣装を好まないユーリスの性格をよく知るジャクセンは、それほど派手な図案を用いず、古典的な柄を活かした衣装で、金剛石も大人しめに散らしていた。ただ、ユーリスのすらりとした細身を際立たせるような品の良いデザインだった。

 自分の前に立つユーリスの姿を惚れ惚れと見つめ、シルヴェスターはユーリスの手を取って、その甲に口づけた。

「愛しているよ、ユーリス」

 その言葉を耳にした、その場にいた衣装を着付ける係の若い女官達全員の顔が真っ赤になっている。当のユーリスも白い頬を紅潮させ、伴侶となる若者に言った。

「…………まだ誓いの言葉は早いです」

「いつ何時でも言おう」

 そう言って、ユーリスの腰を抱き寄せ、その唇に口づけしようとすると、ユーリスは両手でシルヴェスターの胸を押した。

「セットしてもらった髪が乱れます」

「キスくらいで乱れない」

「式典の時間が押しているのです。式の主役が協力しないでどうするのです」

 女官達が王子を援護するように「今更少し遅れたところで……」と全員が揃って口にしているところを、ジロリとユーリスは睨みつける。といっても、綺麗なユーリスに睨まれたところで怖くもないようで、女官達はせっせと支度に動き回り、シルヴェスターはユーリスの額に口づけた。

 伴侶となるユーリス=バンクールを、王子が溺愛しているという噂があったが、噂以上だとその場にいる女官達全員が心の中で思っていた。王子は片時もユーリスをそばから離そうとせず、いつもその碧い目で甘く見つめている。

 すべての支度を終え、準備が整ったところで、シルヴェスターがユーリスに手を差し出した。

「さあ行こう、ユーリス」

「ええ」

 二人は王宮内でもうけられている神殿で式を挙げた後、王宮の庭に面した王宮のベランダから、門扉を開放された庭に詰めかけてきた群衆に向かって手を振ることになっている。午前中に新王ダンカンも、国民に向かってそこから手を振ったが、午後にはそれを今度は王子達がやるのである。そう何度も国民は王宮に詰めかけることはないだろうと思っていたのに、国民達はすでに王宮の門扉の外で、ぎっしり列を為して待っているという話だった。
 ダンカンと共に、新王都内を馬車でパレードしようという話もあったが、ユーリスは引きつった顔で、「もう、充分ではないでしょうか……」と逃げ腰だった。ダンカンもシルヴェスターも、そしてシルヴェスターの中の黄金竜ウェイズリーも「いやいや、パレードもやるべきだ!!」と断言していた。
 義父になるダンカンもシルヴェスターも黄金竜ウェイズリーも、王子の伴侶となるユーリスを大勢の人々の前でひけらかしたい気持ちでいっぱいだったのだ。

(新しい国の王子となるべき人と結婚するということは、大変な事なのだな)

 そう、ユーリスは笑顔を表面に張り付かせながら、内心思っていた。

 式典には、ユーリスの両親であるバンクール夫妻はもちろん、彼の叔父であるリヨンネもわざわざ遠いラウデシア王国からやって来ていた。ラウデシア王国は、大陸の北東にあり、距離的には非常に遠い国であるが、黄金竜ウェイズリーが、一行を“転移”魔法で連れてきているので、一瞬である。
 残念なことに、黄金竜ウェイズリーの竜仲間である紫竜ルーシェやその主であるアルバート王子は、どうもラウデシア王国内でドタバタがあるために、今回の婚礼の式典には出席してもらえなかった。また別の機会に彼らとは会う予定だった。

 叔父のリヨンネは、感激したようにユーリスの晴れ姿を見つめていた。
 父ジャクセンも、ルイーズも二人して笑顔でユーリスを見つめている。

 神殿での誓いの言葉も終えたシルヴェスターとユーリスは、女官や騎士達に先導されて歩いて行く。その中には、アレドリア王国でユーリスの護衛を務めてくれた元冒険者のゲランの姿もあった。今は騎士姿の彼も、嬉しそうに顔を綻ばせて二人を見つめている。見れば、騎士達の中にはユーリスと経理業務で一生懸命に二人で頭を悩ませ、働いていたイルムや同僚のラオとパオの姿もある。皆、嬉しくてたまらないような顔をしている。そんな彼らを見た後、ユーリスは傍らのシルヴェスターに視線をやった。

 神殿でのシルヴェスター王子との婚姻の誓いの言葉も、確かに感激したのだけど、あまり実感が湧いていなかった。でも、こうして皆に祝福されていると、次第に、実感が湧いてくる。

(私は、ヴィーと本当に結婚したのだな)

 王宮の庭に面したベランダのガラス扉が押し開かれた。
 眼下には数えきれないほどの人々の姿が、王宮内の庭園から道のずっと向こうまで続いている。
 それが、ガラス扉が開かれ、シルヴェスター王子とユーリスの二人の姿が現れた途端に、地面が揺れるような大歓声が響き渡った。

「おめでとうございます」
「シルヴェスター王子殿下、ユーリス殿下、おめでとうございます」
「ご成婚おめでとうございます」

 割れんばかりの拍手と歓声が続いている。
 ユーリスは圧倒され、思わず傍らのシルヴェスターの手を握り締める。
 シルヴェスターはユーリスの身を抱き寄せ、いつか彼に言った言葉をまたその耳元で囁くように言った。

「愛しているよ、私のユーリス、私の番」

 その瞬間、この王国全土に“金色の芽”が、ぐんと地表から空目掛けて高く高く伸びた。そこかしこで、何千、何万という“金色の芽”の出現が認められた。それは街の中、森の中、家の中と場所を問わず一瞬で出現した。
 人々がその異変に驚愕した次の瞬間、“金色の芽”は真っ白い花びらとその身を化して、人々の頭上から雪のようにハラハラと降り注ぎ、王子とその伴侶の成婚の祝いへの“奇跡”を見せたのだった。

 “黄金竜を戴く”ゴルティニア新王国の成立と、新たな王子とその伴侶の婚礼とその“奇跡”の祝福は、それから長い間、人々の間で伝説のように、お伽噺のように話をされることになったのだった。
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