転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です  第七章 新たなる黄金竜の誕生

第十三話 顔見せ(下)

 ジャクセンは、顎に手をやり、テーブルの上で懸命に踊っている小さな黄金竜の雛を見下ろして、それからユーリスとシルヴェスター王子に視線をやって尋ねた。

「それで、コレはなんなのだ?」

 小さな黄金竜の雛ルドガーが、体を揺らしてどこか一生懸命に踊っている。じっとその黄金色の両眼は熱っぽい眼差しでジャクセンの顔を見つめている。

 突然、テーブルの上で踊り始めた小さな黄金竜の雛を見て、唖然としていたユーリスとシルヴェスター王子は、ジャクセンの問いかけに我を取り戻した。

「こ、これは私達の息子です」

「そうです。私とシルヴェスターと黄金竜ウェイズリーの息子です」

 ユーリスとシルヴェスター王子は、しきりに緊張していたことも忘れ、あっさりと事実を告げた。
 それに、ジャクセンの隣に座っていた、ジャクセンの妻ルイーズは、「まぁ」と驚きの表情で、未だテーブルの上で踊り続けている小さな黄金竜の雛の姿を見つめていた。

「…………………………………………コレがユーリスの息子というのなら、シルヴェスター王子殿下と、黄金竜ウェイズリーは、私の息子を孕ませたというのか」

 ジャクセンは静かな口調でそう言ったが、どこかそこに怒りの感情を感じた。それでユーリスが続けて言った。

「父上、私はシルヴェスターと黄金竜ウェイズリーの伴侶です。子を為してもおかしくはないでしょう」

「お前は人間で、男なのだぞ。子を為すなど普通はあり得ぬことだ。身体を変えてそれを為したということに他ならない。それは、お前が望んでしたことなのか」

 普通ではあり得ないことが起きている。
 当然、それは黄金竜が為したことだろうと、すぐさまジャクセンは推測したのだ。

 そう言われて、一瞬、ユーリスは言葉を失ったが、すぐにキッパリとした口調で言った。

「はい。私が望んでこの子を産んだのです」




 ユーリスとジャクセンの二人のやりとりを聞いた時、黄金竜ウェイズリーは、シルヴェスター王子の心の中で小さく小さくなり、ユーリスに向かって頭を下げていた。

 本当は、ユーリスは、自分で望んで卵を産んだのではなかった。
 勝手に黄金竜ウェイズリーが望んで、勝手に彼の身体を変えたのだ。
 でもユーリスは、ウェイズリーを庇い、子であるルドガーを思って、そう言ってくれた。
 その気持ちが痛いほど伝わってくる。

「はい。私が望んでこの子を産んだのです」
 
 息子ユーリスのその一言に、ジャクセンは深いため息をついた。
 それから未だにテーブルの上で踊っている小さな黄金竜の雛ルドガーを見て、言った。

「この珍妙な踊りを踊っている小さな竜が、私の孫ということか」

 ジャクセンから、“珍妙な踊り”を踊っていると言われたルドガーは、「キュッ!!」と鳴いて尻尾をピンと立たせた後、懸命に「キュルキュルルキュルキュルルゥ」と言い訳のように鳴き始めている。その言葉を聞いたユーリスとシルヴェスター王子は顔色を変えた。

 竜の言葉を解するユーリスとシルヴェスターは、ルドガーの鳴き声から言いたいことを理解したのだ。
 ルドガーが今踊った踊りは、番を喜ばせるための“求愛の踊り”だと言うのだ。
 シルヴェスター王子の中の黄金竜ウェイズリーは、深々とため息を漏らす。

 ユーリスの父ジャクセンと会うということで、気になった胸騒ぎはコレだったのだ。

 綺麗で優しくて賢いユーリスが大好きな、息子ルドガー。
 そのユーリスとまったく同じ顔をしているユーリスの父ジャクセン。
 ジャクセンはルドガーの祖父にあたる。
 だが、祖父といえども未だ美貌を誇るジャクセンに、ルドガーが惹かれないはずがなかった。

「ルドガー。ジャクセンは私の父で、君の祖父にあたる」

 ユーリスが懸命に諭すように、ルドガーに話す。
 そしてその傍らで、シルヴェスターも頷きながら続けた。

「ジャクセン殿には奥方がすでにいるのだ。お前の祖母にあたる。ユーリスは彼の息子だ」

 二人の親にそう説かれても、ルドガーは不思議そうな顔をして、こう尋ねていた。

「キュルキュルルルルゥ?(それだといけないの?)」

「だめだ」

「だめです」

 二人の親から同時にそう言われたルドガーは、見るからに悲しそうな顔になる。黄金色の目を潤ませ、尻尾もだらんと下げ、頭も深く下げてしまう。
 それを見て、ジャクセンの隣に座っていたジャクセンの妻、ルイーズが「元気が無くなってしまったわ」と言ってそっと小さな竜の頭を撫でてやる。それからジャクセンは、ルイーズから「ジャクセン、貴方がこの子の踊りを“珍妙”だとか言うから、気落ちしてしまったじゃないの」と言われ、促され、ジャクセンはため息をついた後、手を伸ばしてそっと小さな竜の頭を撫でたのだ。
 やがておずおずと頭を上げた黄金竜ルドガーは、真近にジャクセンの顔を見て、嬉しそうに「キュルキュルルゥゥ」と甘く鳴いたのだった。
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