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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です 第八章 永遠の王の統べる王国
第十八話 彼からの話
ハルヴェラ王国からゴルティニア王国に帰国したユーリスが、帰国して最初にしたことは、ハルヴェラ王国で取り入れられている制度の、ゴルティニア王国への導入の是非を、官僚達と議論することだった。
現在のゴルティニア王国は、かつて在ったカリン王国の領土に加え、周辺国を複数併合して出来た、ある意味つぎはぎだらけの国家である。ただ、ゴルティニア王国は、旧カリン王国の領土を基盤に出来た国であったために、新都もその旧王都に置かれている。そのため、王城にはカリン王国の元官僚達も多い。それに加えて他の国家の元官僚達もいる(ゴルティニア王国は人材不足から、他国家の官僚達を積極的に受け入れていた)。当然のように多くの官僚達は、自国の制度との比較でもって、新制度の導入については皆一家言を持っており、結果的に喧々諤々の議論が日夜繰り広げられることになった。
周囲からの反対の声も多かったが、ユーリスは最終的には国王ダンカンに直訴して、国王ダンカンの命令により、新制度の導入を行った。ダンカンはユーリスの判断を非常に買っていた。
それは、ハルヴェラ王国から帰国したユーリスが、国王ダンカンと彼の右腕たるフィアに、密かに話した事柄のせいでもあった。
ユーリスは、黄金竜と同化したシルヴェスター王子が、永遠に近いほど長く時を生きるであろうことを二人に告白した。それを聞いたダンカンもフィアもしばらくの間、黙り込んでいた。
フィアが呟くように言った。
「考えてみれば、当たり前ですね。竜は長寿です。それと一体化しているなら、シルヴェスター王子は長命になる。それも黄金竜と同化したともなれば、彼の寿命は永遠と続くかも知れない」
「はい、そうなります。陛下とフィア殿には、次代王が非常に長命になることで、その在位も永遠に等しくなることについてお考え頂きたいと思っています」
ダンカンはユーリスの言葉に、乾いた笑い声を上げる。デスクの上を指でトントンと音を立てて叩く。
「シルヴェスターが永遠に王として君臨するというのか」
「そうです」
「……………………そんなこと、考えたこともなかった。それで、具体的に何か困ることはあるのか。シルヴェスターなら、俺は良い王になると思っている。永遠にその在位が続いても、構わないんじゃないか」
「陛下、王は激務です」
フィアが言うと、ダンカンは頷く。
「ああ、それは分かっている」
新国王となったダンカンは、冒険者クランを気儘にやっていた時とは違った新しい生活に、やりがいを感じつつも、それが激務であることを知っていた。国を動かすための、時の厳しい判断も必要とされるそれを、王である自分一人で下さなければならない。常に孤独との戦いでもある。
「私もシルヴェスターは、優れた王になることを確信しています。ですが、百年、千年と死ぬことのない王が、王座にい続けて、その激務を一人担い続けることが可能なのか分かりません」
フィアは冗談交じりに「だいたい、千年も同じ仕事をしているなんて、飽きそうだ」と言って、ダンカンから小突かれていた。冒険者クラン時代からの付き合いであるダンカンとフィアは、率直に胸襟を開いて意見を交わし合える間柄である。
「俺もさすがに死ぬことのない身体で、ずっと王の座に就き続けることなんて考えられないな。途中で交代すればいいだろう。お前の息子のルドガーに……」
そう言いかけて、ダンカンも気が付いた。ルドガーも黄金竜なのである。
代替わりしたとしても、ルドガーも永遠を生きるに等しい寿命を持っている。
それでダンカンは唸り声を上げ、眉を寄せた。
「つまりユーリス。お前はシルヴェスターに王座から適当な頃合いで退いてもらい、ルドガーにもそうさせて、四代目は普通の人間を王にしろというのか? 随分と先の話だが、そんなことを今から考えているのか?」
「違います。シルヴェスターは、ダンカン、貴方の後を継ぎたいとずっと願っている。そうなろうと常に努力を続けている人です。貴方のことを昔からとても尊敬しています」
ラウデシア王国にいた時から、ダンカンはラウデシア王家でみそっかすの身であったシルヴェスター王子に特別目を掛け、実の息子のように思い、力を貸していた。そしてシルヴェスター王子もダンカンを慕った。王家の中で、シルヴェスター王子を愛していたものは一人としていなかったが、ダンカンはシルヴェスターを愛した。ラウデシア王国を離れた後も、二人は冒険者として一緒に働き続けた。それからの付き合いなのである。シルヴェスターはダンカンに強い恩義を感じている。それは周囲の誰もが認める事実だった。
「だから、貴方の作ったこの王国をずっと大切に守り続けたいと考えているに違いありません。自分が永遠を生きるなら、何かしらの形で、ずっとこの王国に関わり、守り続けたいと考えるでしょう」
「それは俺としては嬉しいが」
「はい。ですから、私は考えたいのです。この王国をシルヴェスターと共に行く末を見守れるように」
ユーリスのその発言に、ダンカンもフィアもハッとしたように顔を上げ、ユーリスの顔を凝視した。
ユーリスは微笑みを浮かべて答えた。
「私もシルヴェスターの番なので、彼と共に在り続けます。よほどのことがない限り、これから先、命を落とすことはないでしょう」
「どうやって」
「シルヴェスターは黄金竜です。黄金竜は、竜の中でも特別に力ある竜です。人の身を変えることも出来るのです」
しばらくの間、ダンカンもフィアも、ユーリスの整った顔立ちを凝視していた。
ユーリスが、竜の卵を孕んだ話を聞いたのは、つい先日のことだった。
目の前の一際美しい青年は、黄金竜の番になることによって、大きく人の理から外されていた。
「私もシルヴェスターも、この国をよくしていきたい。それは陛下やフィア殿とも変わらぬ思いです。そのことはどうか、これから先も私とシルヴェスターを信じて頂きたい」
現在のゴルティニア王国は、かつて在ったカリン王国の領土に加え、周辺国を複数併合して出来た、ある意味つぎはぎだらけの国家である。ただ、ゴルティニア王国は、旧カリン王国の領土を基盤に出来た国であったために、新都もその旧王都に置かれている。そのため、王城にはカリン王国の元官僚達も多い。それに加えて他の国家の元官僚達もいる(ゴルティニア王国は人材不足から、他国家の官僚達を積極的に受け入れていた)。当然のように多くの官僚達は、自国の制度との比較でもって、新制度の導入については皆一家言を持っており、結果的に喧々諤々の議論が日夜繰り広げられることになった。
周囲からの反対の声も多かったが、ユーリスは最終的には国王ダンカンに直訴して、国王ダンカンの命令により、新制度の導入を行った。ダンカンはユーリスの判断を非常に買っていた。
それは、ハルヴェラ王国から帰国したユーリスが、国王ダンカンと彼の右腕たるフィアに、密かに話した事柄のせいでもあった。
ユーリスは、黄金竜と同化したシルヴェスター王子が、永遠に近いほど長く時を生きるであろうことを二人に告白した。それを聞いたダンカンもフィアもしばらくの間、黙り込んでいた。
フィアが呟くように言った。
「考えてみれば、当たり前ですね。竜は長寿です。それと一体化しているなら、シルヴェスター王子は長命になる。それも黄金竜と同化したともなれば、彼の寿命は永遠と続くかも知れない」
「はい、そうなります。陛下とフィア殿には、次代王が非常に長命になることで、その在位も永遠に等しくなることについてお考え頂きたいと思っています」
ダンカンはユーリスの言葉に、乾いた笑い声を上げる。デスクの上を指でトントンと音を立てて叩く。
「シルヴェスターが永遠に王として君臨するというのか」
「そうです」
「……………………そんなこと、考えたこともなかった。それで、具体的に何か困ることはあるのか。シルヴェスターなら、俺は良い王になると思っている。永遠にその在位が続いても、構わないんじゃないか」
「陛下、王は激務です」
フィアが言うと、ダンカンは頷く。
「ああ、それは分かっている」
新国王となったダンカンは、冒険者クランを気儘にやっていた時とは違った新しい生活に、やりがいを感じつつも、それが激務であることを知っていた。国を動かすための、時の厳しい判断も必要とされるそれを、王である自分一人で下さなければならない。常に孤独との戦いでもある。
「私もシルヴェスターは、優れた王になることを確信しています。ですが、百年、千年と死ぬことのない王が、王座にい続けて、その激務を一人担い続けることが可能なのか分かりません」
フィアは冗談交じりに「だいたい、千年も同じ仕事をしているなんて、飽きそうだ」と言って、ダンカンから小突かれていた。冒険者クラン時代からの付き合いであるダンカンとフィアは、率直に胸襟を開いて意見を交わし合える間柄である。
「俺もさすがに死ぬことのない身体で、ずっと王の座に就き続けることなんて考えられないな。途中で交代すればいいだろう。お前の息子のルドガーに……」
そう言いかけて、ダンカンも気が付いた。ルドガーも黄金竜なのである。
代替わりしたとしても、ルドガーも永遠を生きるに等しい寿命を持っている。
それでダンカンは唸り声を上げ、眉を寄せた。
「つまりユーリス。お前はシルヴェスターに王座から適当な頃合いで退いてもらい、ルドガーにもそうさせて、四代目は普通の人間を王にしろというのか? 随分と先の話だが、そんなことを今から考えているのか?」
「違います。シルヴェスターは、ダンカン、貴方の後を継ぎたいとずっと願っている。そうなろうと常に努力を続けている人です。貴方のことを昔からとても尊敬しています」
ラウデシア王国にいた時から、ダンカンはラウデシア王家でみそっかすの身であったシルヴェスター王子に特別目を掛け、実の息子のように思い、力を貸していた。そしてシルヴェスター王子もダンカンを慕った。王家の中で、シルヴェスター王子を愛していたものは一人としていなかったが、ダンカンはシルヴェスターを愛した。ラウデシア王国を離れた後も、二人は冒険者として一緒に働き続けた。それからの付き合いなのである。シルヴェスターはダンカンに強い恩義を感じている。それは周囲の誰もが認める事実だった。
「だから、貴方の作ったこの王国をずっと大切に守り続けたいと考えているに違いありません。自分が永遠を生きるなら、何かしらの形で、ずっとこの王国に関わり、守り続けたいと考えるでしょう」
「それは俺としては嬉しいが」
「はい。ですから、私は考えたいのです。この王国をシルヴェスターと共に行く末を見守れるように」
ユーリスのその発言に、ダンカンもフィアもハッとしたように顔を上げ、ユーリスの顔を凝視した。
ユーリスは微笑みを浮かべて答えた。
「私もシルヴェスターの番なので、彼と共に在り続けます。よほどのことがない限り、これから先、命を落とすことはないでしょう」
「どうやって」
「シルヴェスターは黄金竜です。黄金竜は、竜の中でも特別に力ある竜です。人の身を変えることも出来るのです」
しばらくの間、ダンカンもフィアも、ユーリスの整った顔立ちを凝視していた。
ユーリスが、竜の卵を孕んだ話を聞いたのは、つい先日のことだった。
目の前の一際美しい青年は、黄金竜の番になることによって、大きく人の理から外されていた。
「私もシルヴェスターも、この国をよくしていきたい。それは陛下やフィア殿とも変わらぬ思いです。そのことはどうか、これから先も私とシルヴェスターを信じて頂きたい」
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