転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です  第十章 蝶の夢(下)

第三十四話 姉の行方

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 ルドガーは、コンラートの容態が落ち着いたところで、コンラートの姉エリザヴェータと付き添いを交代して、ゴルティニア王国の王城に戻った。

 そして戻ったところで、シルヴェスター国王が居室から出てこない。ユーリスと部屋の中に籠っているという報告を受けた。

(また、シルヴェスターはユーリスを無理やり閉じ込めているのか)

 そんな疑いをルドガーが心の中に抱いたのも、シルヴェスターには前科があったからだ。
 そしてユーリスは、今のシルヴェスターとは「そんな気分にはなれない」と言っていたから、想いを我慢できなくなったシルヴェスターがユーリスを閉じ込めて、また延々と交尾をしている事態も十分考えられた。

 ルドガーは窓の外をチラリと見て思う。

(春か……)

 王城の外の木々も、柔らかな新緑の葉を揺らし、淡い色合いの花をつけている。
 暖かな風が優しく吹き抜ける。甘く芳しい花の匂いが立ち込める季節。
 そう。季節は春を迎えていた。

(二人して発情期が来ていることも考えられるのか)

 相愛のシルヴェスターとユーリスの二人は、毎年春の発情期が来れば、居室にこもって愛を交わし合っていた。
 番である彼らは、自分達の欲を優しく睦み合って解消出来た。
 そんな仲睦まじい二人を、ルドガーは心底羨ましく思っていた。

 ルドガーの番のジャクセンは、この世にいない。
 彼らのように、優しく愛し合うなんてことは出来ない。
 ルドガーが、発情期を迎える時には、いつもコンラートが付き合ってくれた。
 彼を愛しているわけではない。でも、互いの欲を解消することは出来た。

 ルドガーは、コンラートに自分がひどいことをしているのだろうかと思うこともあったけれど。
 でも。
 コンラートだって、ひどいことを自分にしている。
 彼はずっと、ルドガーの望みを叶えてくれない。叶えると言いながらも口先だけなのだ。

 だから、お互い様だ。
 
 
 ルドガーはシルヴェスターが居室から出てこないことで、動揺している王城の者達に落ち着くように伝え、いつものように業務に就くよう命じた。
 どうせ、長くても一週間もすれば、シルヴェスター達は居室から出てくるだろう。

 そして、夕刻になったらまた、コンラートの様子を見に、コンラートの巣に行こうと考えていた。

 ルドガーは珍しく王城内で仕事をした。今、王城には、国王シルヴェスターも白銀竜エリザヴェータも、コンラートもいないため、どこか落ち着きがなかった。そのため、あまり意味はないかも知れぬが、王城に自分がいる必要性をルドガーは少しだけ感じていた。
 仕事を終えたルドガーは、ラウデシア王国の雪深い山奥にある、白銀竜コンラートの巣に転移した。
 
 コンラートの部屋の扉を開けると、寝台の上にはコンラートが横になっていた。看護をしているはずの姉エリザヴェータの姿が見えない。
 もしかして、行き違いでエリザヴェータは王城に戻ったのだろうか。
 そんなことを思っているところで、寝台の上のコンラートが目を開けた。

「……ルドガー」

 掠れた小さな声で、ルドガーの名が呼ばれる。

「まだ寝ていた方がいい」

 コンラートが身を起こそうとするので、慌ててルドガーはそれを止めた。
 治癒魔法で火傷の表面は治していたが、深い部分ではまだ傷ついているはずだった。
 コンラートは苦し気に眉を寄せながら言った。

「君を、何度も呼ぼうとしたんだ。……遅い、遅いよ、ルドガー」

「仕方ないだろう。僕にも仕事があるんだ」

「姉さんを探してくれ。いや、連れ戻してくれ」

「エリザヴェータはどこに行ったんだ?」

「…………空中城だ」

「!?」

 ルドガーはギョッとして、コンラートの顔を見つめた。コンラートは青ざめた顔で続けた。

「僕に火傷を負わせたのは、ウェイズリーだ」

「そうなのか!?」

 コンラートは頷いた。

「どうしてウェイズリーがコンラートに、そんな傷を負わせたんだ」

「僕が空中城に行って、ユーリスの卵のそばまで近寄ったからだ。怒ったウェイズリーに攻撃された」

「……………………」

 大事な卵に、敵と認識している竜が近づけば、当然攻撃するだろう。ウェイズリーがコンラートを攻撃してもおかしいことではなく、十分あり得る事態だった。

「姉さんが、僕が火傷を負ったのはどうしてだと聞いて」

「まさか、ウェイズリーが攻撃したって言ったのか!?」

 そうなれば、弟想いのエリザヴェータは、復讐の為に空中城へ攻め込むだろう。
 コンラートは首を振る。

「まさか、そんなことは言わないよ。でも、姉さんだって馬鹿じゃない。気付いてしまったんだよ、ウェイズリーが僕を攻撃したって。だって、僕を攻撃することが出来る竜は、あの小さな竜くらいで、攻撃するための理由があるのも、ウェイズリーくらいしかいないのだから」

 ルドガーはその言葉に、彼もまた青くなっていた。

「じゃあ、エリザヴェータは空中城に行っているのか!!」

「半刻前にこの部屋から出ていった」

「半刻も前にか!!」

 時間が経ちすぎている。もうすでに、エリザヴェータが空中城に行って何かしているかも知れない。
 ルドガーは、空中城にいる小人達や、ユーリスの部下達の身を案じた。
 すぐさま立ち上がり、“転移”しようとする彼に、コンラートは頼み込んだ。

「僕も連れていってくれ。姉さんを止められるのは僕しかいない」
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