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第2章 ロボ子と優子
#14.
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忙しい日々が続き、息抜きをしたい自分がいることに気づいた私はいつものあの公園へと向かった。またあの黒猫がいたら嬉しいなと考えていた矢先、私の思いが通じたのかその黒猫が公園にいた。暖かい陽の光が差すベンチの上で気持ちよさそうに眠っている。私は無意識のままその黒猫に吸い寄せられるようにそのベンチに座った。隣に座っても黒猫は一向に起きる気配が無かったので、私はひょいと黒猫を持ち上げて私の膝の上に乗せた。思いの外、黒猫は軽かった。そして暖かかった。黒猫が息をする度に、その小さなお腹が膨らんだりへこんだりしている。それがとても愛らしい。サラサラの黒い毛並みを撫でると、黒猫も気持ちよさそうな表情になった。次の瞬間、不意に目を覚ました黒猫が私を確認すると奇声を上げて飛び上がった。その反応がやっぱり人間っぽく見えたのは気のせいではない。怯えるような目で私を見る黒猫に心の中で謝ってから、私はトートバッグに入っていた本を開いた。それからしばらく百合かもめさんの物語の世界に入り込んでいた私は、黒猫の視線に気づいて現実の世界に引き戻されたような感覚になった。本心は分からないけれど、黒猫は私の膝の上に戻りたそうな顔をしているように見えた。
「ん? おいで」
私が手招きをすると、黒猫は催眠術にかかったように私の元へ来て再び膝の上に乗った。ある意味、とてもあざとい黒猫だ。この黒猫は間違いなく自分が可愛いということを自覚しているように思えた。
「フフ、キミ。あったかいね」
私は黒猫の毛並みを再び撫でた。やっぱりこの毛並みを触っているだけで、私の体に溜まったストレスが消えていくように思えた。この黒猫の存在は、私が自分で思っているよりも私の中で大きなものになっていることにこの瞬間気づいた。黒猫の方も、とても気持ちよさそうな表情で鳴き声を漏らしていたので何だか私まで嬉しくなった。
「キミ、鳴き声も可愛いな」
癒しの毛並みを撫でながら、私は再び百合かもめさんの物語の世界へと入り込む。だが、
「私、本を読むのが好きなんだ。自分では経験したことのない「恋愛」の話が特に好きでさ。ま、猫のキミには「恋愛」が何かも分からないだろうけどね」
この黒猫に聞いてもらいたかったのか、何故か私はそんなことを無意識で黒猫に言った。どうしてそんなことを言ったのか自分でも分からない。ただ、私が発した言葉を聞いた黒猫は、視線を私の顔に移して何とも言えない表情で私を見ていた。何かを伝いたいような顔をしているようにも見えなくなかった。それからは何も話さずに黒猫の毛並みを撫で続けた。
「それじゃあね。また来るよ」
再びうたた寝を始めた黒猫に小さく呟いてから公園を出た。やっぱり私の心や体は、公園に入る前と比べて格段に軽くなった。この心身の憩い場である公園が無くなってしまったら私はどうなってしまうのだろうとさえも思うようになった。もう1つ、本当に不思議だけれど、あの黒猫の黄色い目を見ていると何故かニケさんの顔が頭に浮かんだ。どうしたって理由は分からない。分からないけれど、そういえば最近彼を目で追う自分がいる。何故なのだろう。分からない。分からないことだらけで、軽くなった心がまたモヤモヤと曇り出した。けれど、その雲間から暖かい陽の光が差し込むように心の中は暖かくなった。いつもは冬の夜のように冷たい心の中が、まるで季節を越えて春を迎えたように暖かかった。分からないことだらけでも1つだけ確かなことがあるとしたら、今から師匠のバーに行くのが楽しみになっている自分がいるということだ。
忙しい日々が続き、息抜きをしたい自分がいることに気づいた私はいつものあの公園へと向かった。またあの黒猫がいたら嬉しいなと考えていた矢先、私の思いが通じたのかその黒猫が公園にいた。暖かい陽の光が差すベンチの上で気持ちよさそうに眠っている。私は無意識のままその黒猫に吸い寄せられるようにそのベンチに座った。隣に座っても黒猫は一向に起きる気配が無かったので、私はひょいと黒猫を持ち上げて私の膝の上に乗せた。思いの外、黒猫は軽かった。そして暖かかった。黒猫が息をする度に、その小さなお腹が膨らんだりへこんだりしている。それがとても愛らしい。サラサラの黒い毛並みを撫でると、黒猫も気持ちよさそうな表情になった。次の瞬間、不意に目を覚ました黒猫が私を確認すると奇声を上げて飛び上がった。その反応がやっぱり人間っぽく見えたのは気のせいではない。怯えるような目で私を見る黒猫に心の中で謝ってから、私はトートバッグに入っていた本を開いた。それからしばらく百合かもめさんの物語の世界に入り込んでいた私は、黒猫の視線に気づいて現実の世界に引き戻されたような感覚になった。本心は分からないけれど、黒猫は私の膝の上に戻りたそうな顔をしているように見えた。
「ん? おいで」
私が手招きをすると、黒猫は催眠術にかかったように私の元へ来て再び膝の上に乗った。ある意味、とてもあざとい黒猫だ。この黒猫は間違いなく自分が可愛いということを自覚しているように思えた。
「フフ、キミ。あったかいね」
私は黒猫の毛並みを再び撫でた。やっぱりこの毛並みを触っているだけで、私の体に溜まったストレスが消えていくように思えた。この黒猫の存在は、私が自分で思っているよりも私の中で大きなものになっていることにこの瞬間気づいた。黒猫の方も、とても気持ちよさそうな表情で鳴き声を漏らしていたので何だか私まで嬉しくなった。
「キミ、鳴き声も可愛いな」
癒しの毛並みを撫でながら、私は再び百合かもめさんの物語の世界へと入り込む。だが、
「私、本を読むのが好きなんだ。自分では経験したことのない「恋愛」の話が特に好きでさ。ま、猫のキミには「恋愛」が何かも分からないだろうけどね」
この黒猫に聞いてもらいたかったのか、何故か私はそんなことを無意識で黒猫に言った。どうしてそんなことを言ったのか自分でも分からない。ただ、私が発した言葉を聞いた黒猫は、視線を私の顔に移して何とも言えない表情で私を見ていた。何かを伝いたいような顔をしているようにも見えなくなかった。それからは何も話さずに黒猫の毛並みを撫で続けた。
「それじゃあね。また来るよ」
再びうたた寝を始めた黒猫に小さく呟いてから公園を出た。やっぱり私の心や体は、公園に入る前と比べて格段に軽くなった。この心身の憩い場である公園が無くなってしまったら私はどうなってしまうのだろうとさえも思うようになった。もう1つ、本当に不思議だけれど、あの黒猫の黄色い目を見ていると何故かニケさんの顔が頭に浮かんだ。どうしたって理由は分からない。分からないけれど、そういえば最近彼を目で追う自分がいる。何故なのだろう。分からない。分からないことだらけで、軽くなった心がまたモヤモヤと曇り出した。けれど、その雲間から暖かい陽の光が差し込むように心の中は暖かくなった。いつもは冬の夜のように冷たい心の中が、まるで季節を越えて春を迎えたように暖かかった。分からないことだらけでも1つだけ確かなことがあるとしたら、今から師匠のバーに行くのが楽しみになっている自分がいるということだ。
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