SCAPEGOAT ~人の生命力を使って絶大な力を得る怪物、業魔~

アフロマリモ

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第3話 不安定な正義

3-4 強者

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    俺は、人間潰しに夢中になっている“鎧鼠”へ突撃する。

 盛大に足音を鳴らしながら接近したせいで、“鎧鼠”と目が合うが、関係ない。

 踏み込んでぶん殴ろうとするが、冷静に装甲で俺の拳を受け止める。


「随分元気な挨拶じゃん、“黒ヤギ“ィ!」


 反撃で俺のみぞおちに、回し蹴りを食い込ませてくる“鎧鼠”。

 その攻撃に、森の木々をなぎ倒しながら吹っ飛ぶ。

 すぐに体勢を立て直し、鎧の怪物に向き合う。

 生き残っている審問官達は、突然現れたもう1体の業魔との争いに困惑しているようだった。

あきれたように“鎧鼠”は問いかけてくる。


「急にどうした? 正義に目覚めたの?」


「これが正義なのかは分からない。けどみんなが、お前を殺すことを望んでいることは分かる。」


 俺はそう言いながら、再度踏み込み殴りかかる。


「あっそ」


 大振りな拳の連撃を、最小限の動きで “鎧鼠”は躱し、さっきと同じようにカウンターを入れてくる。再び吹き飛ばされ地面を転がる。


「クッソ!」


苛立ちと焦りが心の中に湧き出る。全く攻撃が届かない。業魔化したところで、俺と“鎧鼠”では実戦経験がまるで違った。


(何とかしてこいつ殺す! 考えろ! 考えろ!)


 身を起こしながら考える。


「お前、大馬鹿だろ。この状況わかってんのか? お前のサイズからして、おそらく1人しか、生贄にしてねぇ。2人使った俺より一回り小さい。だろ?」


 “鎧鼠”は指摘する。確かに、俺より頭一個分くらい大きい。“鎧鼠”は言葉を続ける。


「そのうえ格闘は、ずぶの素人。かといって異能も権能も使ってる様子も無ぇ」


 ため息をつく“鎧鼠”。

異能も権能も、初めて聞く単語だ。業魔化なんてまともにしたのは、つい数日前で、自分の能力なんて知る由もない。


「俺様のこと舐めてんのかあぁぁぁあ!!! てめぇぇぇ!」


困惑する俺に怒鳴り狂う“鎧鼠”。咆哮が周りの木々を揺らすほどだった。

吠え終わると、すっと拳を顔の前に構える。その拳に、六角形の装甲達が集まり、鋼鉄のグローブを作り出す。鎧の隙間から怪物は声をかけてくる。


「お前がふざけてんのか、本気なのか知らねぇが、今から俺が先生になって教えてやるよ」


 鋼鉄がこちらに突っ込みながら叫ぶ。


「業魔の倒し方ってやつをよぉ!!」


 素早い踏み込みから “鎧鼠”の左拳が顔面に迫る。急いでガードの体勢をとるが、衝撃は来ず、気の緩んだ瞬間、わき腹に左拳がめり込む。


「がはっ!!」


 あばらを砕き、内臓を潰す。その激痛に声が漏れ、思わず顔のガードが下がる。

 隙が生まれた顔面に、待ってましたと言わんばかりに右拳がめり込む。

 顔の大半が潰れ、まともに機能する器官は、右耳だけになった。


「心得その一、まず顔面を潰す」


 淡々と説明する“鎧鼠”。右耳にその声がこだまする。


「心得その二、四肢を再生限界まで引き千切り続ける。1人しか材料にしていないお前は9回だ。しっかり味わえよぉ。まずは……一回目!」


 俺の肩と右腕をつかまれる感覚がしたと思った瞬間、力いっぱいに引っ張られる。

そしてブチブチと肉が引き裂かれる音と共に、肩と腕は別れを告げる。


(痛い痛い痛い痛い痛い! あ“ぁあぁぁぁっぁぁ!!))


心で叫びまわる。残った左腕を無茶苦茶に振り回すが、あっけなく受け止められたようだ。けれど業魔の再生力によって、少しずつ顔が復元され、視界が戻って来る。


「心得その三、再生する頭は定期的に潰しましょう」


 “鎧鼠”の拳によって、戻りかけていた視界を叩き潰される。


「――!」


 声にならない咆哮を腹の底から上げる俺。“鎧鼠”は容赦なく、躊躇わず、俺の四肢をもぎ取り、再生する頭を潰し、また四肢を引き千切り、再生する頭を叩きつぶす。


「2回! 3回! 4回!」


 再生する頭と四肢をいじめられ続ける。俺は苦しみ悶え、意識が遠のいてくのを感じた。

“鎧鼠”のカウントが、6を超えた時、意識は完全に消えた。


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