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#24 王子様の強要
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(なんだって、どうしてこうなった)と冷や汗もだらだらと長谷部は、海潮から渡された黄色いワンピース姿で、ちょこんとソファーの上に座っていた。まるで、竜司と出会った日のように。
それはバイトの前での出来事。
突然、携帯が鳴った訳だ。嫌な予感に、携帯の液晶画面を見れば案の定だった。
母親と離婚した父親の海潮からで、竜司の店への行かなければならないと切ろうとしたところ、間違って長谷部は通話に出てしまう。
それは明らかな失敗だった。
出てしまったことによって海潮からの助っ人要員での要請を受けてしまった訳だ。断ることは出来たのだが、携帯の向こうのいい歳した男の泣き声と甘えた声に長谷部も弱かった。
(バイトも、断ちまったし。…よりによって吉川だったし)
「ああ。ほらぁ~~やっぱし、君は来ちゃうって私が言った通りになったでしょう? 長谷部君wwwww」
項垂れて大股開きの長谷部に、声をかけたのはあろうことか、竜司と一緒に接客をさせられた扇だった。思い出して怪訝な表情を無意識に向けた長谷部に扇も苦笑をするしかなく。
「横、座っちゃってもいいかな? いいよねぇ?」
指を差すと、長谷部の返事を待たずに腰をかけた。
答えなんか聞くもないくせに、と長谷部も舌打ちをする。
「あっれー~~? 縁司君は一緒じゃないのかなぁ?」
きょろきょろと、見渡す様子の扇に、
「縁司? いる訳ぁねぇじゃんか、あんな奴っ」
素っ気なくも、縁司と言う名前に反応をしてしまった。
「あっれぇ? なんか喧嘩かなんかしちゃった感じなのかなぁ? ダメじゃないかー」
「喧嘩? あんな奴とな――…ん、か? あ゛!」と思わず両手で口を覆い隠してしまう。無防備にいってしまった言葉に、また、冷や汗しか出ない。
彼はいうとことの【縁司】は【竜司】だということに、ようやくここで思い出したのだった。扇も、様子がおかしい長谷部の態度に首を傾げてしまう。
「ね? なんだって喧嘩しちゃったのかなぁ? おじさんは相談に乗るよ? こないだ愚痴を聞いてもらちゃったからさw」
喜々という扇に長谷部も顔を左右に勢いよく振った。
「ぃ、いいです! 喧嘩なんかしてねぇしぃい!」
「いやいや。しちゃってるでしょう? おじさん、そういうのに鼻は利く方なんだからねぇw」
「いや。マジで喧嘩なんかしてねぇっての」
「えー~~本当なのかなぁwwwww」
笑って聞き返す扇の手は長谷部の太ももを触りなぞっていた。厭らしくも、舐めるような動きに長谷部も鳥肌を立ててしまう。
その手を長谷部も、思い切り叩き落としてしまった。
「長谷部君~~私はお客様なんだよぉ~~う?」
目を細めた扇に長谷部も引きつってしまう。
「っし、知ってっけど?!」
少しづつ身体を扇から離すも扇がにじり寄り、横に、腰を据える。
立ち去りたい長谷部だが、海潮の顔に泥を塗る真似も出来ずに、歯を噛み締め諦めた。
「長谷部君が叩いた手が痛いよ? ほら、赤くなっちゃってるでしょーw」
「…だから?」と素っ気なく長谷部も言い捨てた。
そんな彼の顔に手を向け、唇の前にやる。
「舐めてくれたら痛みも治まると思うんだよねぇ」
扇は赤い舌を出した。唾液で濡れて光る舌に目がいき、次いで、目の前にある扇の手を見据えた。叩いた場所を見れば、若干だが、確かに赤いように思えた。
「っわ、分かった…ったっく」
長谷部は手を掴むと、赤くなった箇所を舐め誉めた。
「っふ、…いい眺めだなぁw」
◆
「だから! あの野郎ってば休んだって!」
鼻息を荒くさせて恵は休むと長谷部からの連絡を竜司に伝えた。あまりの剣幕に竜司も驚きと怖さにタジタジになってしまたものの。
「どうしてだとか、言っていたかい? 長谷部君は」
意味もなく休むとは思えずに怒り心頭の恵に聞き返した。
「あー~~なんでも、親父さんの店での助っ人があるんだとか! こっちを優先にしろっつぅの!」
吠える恵の横で、彼を落ち着かせようとともみが肩を叩いている。
「助っ人、だって!? …海潮さんの????」
思わず上擦った声が竜司から漏れてしまい、
「あ? 何? 店長ってば知ってんの? あの馬鹿の家庭内事情ってのを」
恵も聞き返した。
「あーうん。知ってるよう」
海潮の店に助っ人として、またしても呼ばれてしまった長谷部に、どうにも竜司は羨ましくなった。また店で――
(如月さん、…来ているのかなぁ)
あの飄々とした彼に会っているのかなと想いを馳せた。
それはバイトの前での出来事。
突然、携帯が鳴った訳だ。嫌な予感に、携帯の液晶画面を見れば案の定だった。
母親と離婚した父親の海潮からで、竜司の店への行かなければならないと切ろうとしたところ、間違って長谷部は通話に出てしまう。
それは明らかな失敗だった。
出てしまったことによって海潮からの助っ人要員での要請を受けてしまった訳だ。断ることは出来たのだが、携帯の向こうのいい歳した男の泣き声と甘えた声に長谷部も弱かった。
(バイトも、断ちまったし。…よりによって吉川だったし)
「ああ。ほらぁ~~やっぱし、君は来ちゃうって私が言った通りになったでしょう? 長谷部君wwwww」
項垂れて大股開きの長谷部に、声をかけたのはあろうことか、竜司と一緒に接客をさせられた扇だった。思い出して怪訝な表情を無意識に向けた長谷部に扇も苦笑をするしかなく。
「横、座っちゃってもいいかな? いいよねぇ?」
指を差すと、長谷部の返事を待たずに腰をかけた。
答えなんか聞くもないくせに、と長谷部も舌打ちをする。
「あっれー~~? 縁司君は一緒じゃないのかなぁ?」
きょろきょろと、見渡す様子の扇に、
「縁司? いる訳ぁねぇじゃんか、あんな奴っ」
素っ気なくも、縁司と言う名前に反応をしてしまった。
「あっれぇ? なんか喧嘩かなんかしちゃった感じなのかなぁ? ダメじゃないかー」
「喧嘩? あんな奴とな――…ん、か? あ゛!」と思わず両手で口を覆い隠してしまう。無防備にいってしまった言葉に、また、冷や汗しか出ない。
彼はいうとことの【縁司】は【竜司】だということに、ようやくここで思い出したのだった。扇も、様子がおかしい長谷部の態度に首を傾げてしまう。
「ね? なんだって喧嘩しちゃったのかなぁ? おじさんは相談に乗るよ? こないだ愚痴を聞いてもらちゃったからさw」
喜々という扇に長谷部も顔を左右に勢いよく振った。
「ぃ、いいです! 喧嘩なんかしてねぇしぃい!」
「いやいや。しちゃってるでしょう? おじさん、そういうのに鼻は利く方なんだからねぇw」
「いや。マジで喧嘩なんかしてねぇっての」
「えー~~本当なのかなぁwwwww」
笑って聞き返す扇の手は長谷部の太ももを触りなぞっていた。厭らしくも、舐めるような動きに長谷部も鳥肌を立ててしまう。
その手を長谷部も、思い切り叩き落としてしまった。
「長谷部君~~私はお客様なんだよぉ~~う?」
目を細めた扇に長谷部も引きつってしまう。
「っし、知ってっけど?!」
少しづつ身体を扇から離すも扇がにじり寄り、横に、腰を据える。
立ち去りたい長谷部だが、海潮の顔に泥を塗る真似も出来ずに、歯を噛み締め諦めた。
「長谷部君が叩いた手が痛いよ? ほら、赤くなっちゃってるでしょーw」
「…だから?」と素っ気なく長谷部も言い捨てた。
そんな彼の顔に手を向け、唇の前にやる。
「舐めてくれたら痛みも治まると思うんだよねぇ」
扇は赤い舌を出した。唾液で濡れて光る舌に目がいき、次いで、目の前にある扇の手を見据えた。叩いた場所を見れば、若干だが、確かに赤いように思えた。
「っわ、分かった…ったっく」
長谷部は手を掴むと、赤くなった箇所を舐め誉めた。
「っふ、…いい眺めだなぁw」
◆
「だから! あの野郎ってば休んだって!」
鼻息を荒くさせて恵は休むと長谷部からの連絡を竜司に伝えた。あまりの剣幕に竜司も驚きと怖さにタジタジになってしまたものの。
「どうしてだとか、言っていたかい? 長谷部君は」
意味もなく休むとは思えずに怒り心頭の恵に聞き返した。
「あー~~なんでも、親父さんの店での助っ人があるんだとか! こっちを優先にしろっつぅの!」
吠える恵の横で、彼を落ち着かせようとともみが肩を叩いている。
「助っ人、だって!? …海潮さんの????」
思わず上擦った声が竜司から漏れてしまい、
「あ? 何? 店長ってば知ってんの? あの馬鹿の家庭内事情ってのを」
恵も聞き返した。
「あーうん。知ってるよう」
海潮の店に助っ人として、またしても呼ばれてしまった長谷部に、どうにも竜司は羨ましくなった。また店で――
(如月さん、…来ているのかなぁ)
あの飄々とした彼に会っているのかなと想いを馳せた。
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