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其の43 慣れ*メンテナンス

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 毎日、怪人に襲われ、られても、季節は廻っていく。

 ◆

「あれ? 大樹はー?? 宝ー」

 家に帰ってっ来たとらのとらの手にはトートバックが握られている。
 中には食材や日常品が入っている。

 居間のソファーで寝ていた恵比寿に聞いた。
「ふぇ?? ん゛ー~~??」
「二階かなーあ、今日も怪人とはどうだったのー??」
「楽勝だったよー」
「そっか」

「今日は三好君の負担もなかったし!」

 パンパン! と手を鳴らす。
 その様子に。

「そっかぁー」

 とらのトーンも下がる。

「で。どうかしたの? とら」
「! ああ、宝にも大事なことだよー」
「? 何? なんかヤバイ話しとかならお断りだかんね?!」

 ふふふ、ととらがはにかむ。

「いやいや。メンテナンスに行かなきゃ行けないだけだよー」

 その聞き習えない言葉に。

「め、メンテな……す?? 何、それ??」

 ザゴ。
 ガサガサ――……。

 とらはキッチンへと向かいながら続けた。
「博士の話しってしたよねー~~??」
「んんん?? ああ、なんか軽く聞き流したような気がしなくもないけど」
「聞き流さないでよー」

 そして食材を冷蔵庫や、冷凍庫に振り分けていく。

「博士がねーそろそろー魔法少女のデータを解析したいんだってさー」

 恵比寿は、博士の顔を想像した。
 アニメや、映画に出て来るような老人を。

「ふぅー~~ん? いいけどさー、怪人出たらどうするのさ」

 パタパタタ――……。

「そこは。キミの恋人に甘えて強請ってよー頼んだよー~~」

「はぁ?! 出来るかなぁ????」

 とらはソファーに居る恵比寿を超え、
「さてさて。大樹ー」
 階段へと向かった。

 るん、るん♡

「大樹―入るよーw」
「あ゛! っちょ! おおお、おじさ、ん??」

 部屋に入った瞬間。
 とらの目に映し出されたのは。

 ベッドの上で下半身裸で、お尻の丸出しの三好だった。
 さらには。

 アナルに指を突っ込んでいた。

「何、やってるのー? 大樹ー……」
「いや! え、ななな、何もしてねぇしッッ」
 慌てて、厚手のタオルケットを被る。
 少し、震えていた。

(なんで急に入って来るんだよ! この人は‼)
 ギシ――……!
(!? え、おじさ、ベッドに……)
 
 バサ!

「!? ぅ、わぁ‼」
「怪人では満足出来なかったんだねー」

 カカカカカカカカカカカカカ‼

「僕に言ってくれたらー」
 ギッシ!
「?!」
 ギ!
「いくらでもー……ぅ゛!」

 勢いよく、とらが起き上がり、慌てて鼻先を抑えた。
 表情が大きく歪んだ。
 その様子に三好も首を傾げた。

「な、何??」
「大樹ー薬はー?? 飲んだのー??」
「あ~~いや。薬がなくなっちゃってて……」

 とらの顔が紅潮する。

「もう! 早く言ってよー~~‼」

 どたどたたたた!

「……っへ?? ぇ、っと??」

 残された三好は自身の身体の匂いを嗅ぐ。

「汗臭かったかな?」

 ◆

「ぅー~~ん」

 昨日も散々と怪人の相手をしていた三好が、寝息を立てていた。
 そこへ。

「三好君! 三好君‼」
 朝から元気に恵比寿がやって来た。
 しかし。
 三好も起きない。

(身体がキツイ、あー薬、飲んでねぇ~~)

 しかし、中身は徐々に覚醒していっている。
 三好は、薬のことを思い出した。
 自身の『フェロモン』を抑えるための薬だ。
 ある一定の時間に飲まなければ。
 その匂いが三好の身体から爆発してしまう。

 本人には分からない【体臭フェロモン】が。

「ね~~起きてよ~~三好君! 三好君ってば!」
「んー~~何だよぉう、恵比寿クン~~」
 観念したかのように三好が聞く。
「! あのね、あのね!」

 ふぁ~~! と大きく欠伸をして身体を起き上がらせる。

「落ち着いて、恵比寿クンってば」

 目を擦りながら、三好が言う。
「今日は学校休みじゃない?! っね? っね??」
「……――そうだね」
 テンションが高い恵比寿に苦笑するほかない。
「それが、どうかしたのかい??」

「とらがね!」

 その一言に。
 三好の目が細くなる。

「おじさん、が??」

 嫌な予感しかない。
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