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其の76 2か月後*感情

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 そして、二か月前――……

 ビトーが、二人の間に立った。

「ビトー邪魔ー!」

「ぇえい! しもべ如きが、主の前に立ち塞がるのか!」

 とらも、ドロヌトクロトファーも声を荒げた。
 般若の形相で。

「お二人とも、落ち着いてください。不毛な争いをして、どうなると言うのです」

 それを平静に、諫めるビトー。
 彼も、寝取られそうになったことに怒っていないわけではない。
 しかし。
 この場は、抑えなければと。
 思い立った。

「家が壊れては、元もこうもありません!」

「「確かに」」
 声が同調する。
「「‼」」
 思わず見合ってしまう。

「「真似をするな!」」

 歯を剥き合う。

 ビトーがため息を漏らし、顔を横に振る。

「はぁ。全く」

 渋々、二人もソファーに腰を据えた。

「よくも、大樹を……」
「知るか。貴様の所有物モノでもあるまい」
「僕の《魔法少女》だ」
「ふん!」
 腕を組み、顔を背けた。
「ちょっかいを出すのは止めてよね! 僕の大樹に」

 目だけを、とらに向けた。

「面白くないな、ドレッド」

 ◇◆

「抱き着かないで下さい」

 素っ気なく三好が言い放った。
 腕に力を込め、彼から逃れようとする。
 だが、出来ない。
 ドロヌトクロトファーも人間ではない。
 見た目が人間であってもだ。
「離して下さいっ。帰って下さい!」
「強情な奴だな。貴様は」

 っぐ。

「っへ??」


「少しは、素直にしてやろう」
 ばっふん!
 三好はベッドに降ろされた。
「クロさん??」
「なんだ。ダイキ」
「上から降りて下さい!」

 強い口調で、鋭い眼光で、ドロヌトクロトファーを見据えた。
 それが。
 相手を、彼を煽るとも分からずに。

「貴様が、私の質問に答えればいいだけだ」

 三好が口を前に突き出す。
 その唇をドロヌトクロトファーが啄む。
「っな! ゃ、めて下さい!」
 三好も口元を抑えた。
「言わなければ、退けないぞ」
「っだ、から……その、だから、あの」
 もごもご、と口ごもる三好。
「なんだ、もっと、大きく言えないのか? ダイキ」
 不満な顔をするドロヌトクロトファー。
 諦めたように。
 三好が言う。

「怪人に中に出された精液を、おじ、とらさんが舐めて掻き出すんです!」

 ざわ。

 ざわざわ。

「ほ、ぉ……」

 自身の胸がざわめくのを感じた。
 その感情に。
 ドロヌトクロトファーが、堪らずに嗤った。

「私にも、こんな感情があったのか」
「クロ、さん?」
 彼を伺う、三好の声が、
「――……クロさん、退けてーーっむ゛‼」
 終わる間もなく、ドロヌトクロトファーが封じた。
 自身の唇で。

「ぁ、あ、んンん! っふ、ぁ゛♡」

 口腔に彼の舌が入れられ、縦横無尽に蠢かされる。
 堪らずに、三好もシーツを握り締めた。
 頬に、涎が伝い落ちる。
 身体も、痙攣をする。
 ビクビク、と。
 長いドロヌトクロトファーの髪が。
 三好をくすぐり。
 それすらも、刺激に変わる。
「ようやく、可愛い気のある声を出したか」
「!? ぃ、から、もう! いい加減――……」

 くに。

「っひ! ゃ゛♡」
 彼の指が、服の上から三好の胸の突起に触れた。
 その刺激に、三好の口からも甘い声が漏れる。
 くにくに、と煉られる。
「ひゃ゛♡ ふぅ゛♡」
「感度が、相変わらずいいな。貴様は」
 満足そうに、ドロヌトクロトファーが口元をつり上げた。

(それが堪らないのだが)
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